マンディンカ闘争 25~天才ギザ
『ここが最後の砦になる。』
ニジェは残されていたカザマンスの民に伝えた。
『フランス軍がここまで攻め入って来る可能性はゼロではない。』
『宮殿の周りはムクロジとカジュ、それからモリンガの木。取り囲むように木を植えるんだ。自然の城壁。マンディンカのバルの宮殿はバオバブやブビンガだったが、それではただの壁。実がなる食糧であれば一石二鳥。』
「バオバブは大きくて強い。実もなりますが?」
『大きくて強いが幹に生える枝は高い上の方だけ。下は素通り出来てしまう上に、実の成るのも遥か頭上。モリンガやカジュなら手っ取り早い。』
「なるほど!」
『ムクロジは宮殿の裏手。水路の近くに。洗い物にも身体を洗うのにも効率が良い。カジュは倉から近い場所。出来上がった重い酒の甕もすぐに運べる。適材適所に木を植えなければな。』
「モリンガはどう致しましょう?」
『それは、薬と一緒。どこで病いや怪我をするかわからんでな。ポツポツと宮殿を囲む様に。』
「しかし、ニジェ殿。ファル様達がいない間に勝手にこのような事をしてよろしいのですか? しかもここは王の宮殿。」
『ハハッ!勝手ではないよ!ファル様の案と俺の案、それからマンサ様のご意見を参考にしておるよ。後は任せると。』
残されたのは女衆と老人、子供ばかりであったが、その結束力だけは出て行った兵となんら変わらなかった。
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『ギザ、面白いか?』
「泥んこ遊びは好きさッ!楽しい!」
『それはこの村、カザマンス王国の砦になる。出来上がりはかなり先になるが、この村をそのブロックを積み上げた囲いで覆う。民の皆んなでた~くさん作ってな。』
「村ごと?じぇんぶぅ?」
『しかし、お前。早いな。もうこんなに作ったのかい?』
「そう、あの砕けた王様の椅子。まっすぐだろ?」
『はて?まっすぐ?背もたれのことかな?』
「わからないけど、その落ちていた木を、ほら四角に繋げて。」
『あッ木型を作ったのか!?』
「そッ、母さんちが手で捏ねて、なかなか形が整はない。不揃いになっちまう~!ってイライラしてたから。」
『考えた? ギザが?』
「そッ、おいらの名案。」
『お前、ファル様以来の天才だ! この木型を皆んなで使おう!すこし乾いたら型から外して、、』
「もう一度、天日干し。」
『そうだ。ギザ。よくわかっているな。』
「っていうか、木型っていうの? もう皆んなに作ってあげて、とっくにやってるよ。」
『お前!天才の上に、行動力までありやがる!ハハッ!』
「ニジェが遅いだけの話だよ!」
『ギザ。お前が開拓官になった方がよさそうだな!』
ギザは鼻の下についていた泥を人差し指で拭き取ると、フフと笑った。
「おいらが完成さしぇる。カジャマンシュの砦。」
ファル王の後は、、、俺ではない。
この子だ。ギザだ。
8歳にしては舌っ足らずの子だが。
ニジェはそう思った。
※ギザ
『カザマンス・FIRST』火蓋の上下~砕かれた王の椅子
で既に王の椅子に座っております(笑)