マンディンカ闘争 21~モリンガの道に通じる2つの墓
「ものの見事にやってくれたな。ハハッ!柱一本残ってはおらん。」
「あまり近づかない方が、、」
「ん?なぜ?」
「いえ、、フランス兵の遺体が。」
ハラとガーラ、それに75の兵は焼けて残骸と化したグリオの集会所の前で足を止めた。
集会所とは名ばかりの瓦礫の山は、瓦礫という名の黒く煤けた人骨の山であった。
砕け散った骨は時折吹くこの集落の乾いた風に乗って、ササと舞い上がった。
「ところで、この集会所。何を使ったんだ? 火薬を使った爆発としか考えられぬのだが、、」
ハラがガーラに聞いた。
「はい。実はレノーというフランス兵から、、」
「フランス兵?」
「大佐という地位でありましたが、奴隷狩りには反対をしていた兵でありまして、、えっとぅ、、『お前達が武器や食糧を使え』と私達にぃ、、補給隊長の方でありました。」
「なんだその勿体ぶった言い方は?」
「そのぅ、、私が弓矢で、、」
「殺ったのか、、? あ~何をやってんだか、、ナシャといいアクラ殿といい。全部お前の仕業か、、俺は大丈夫かなぁ。お前に殺されはしないだろうな、、」
「そのような、、」
ガーラは続けた。
「あっ、この先にあるディオマンシの元の宮殿。そこもニジェ殿とドカ~ンっと。それはムル殿の家のゴミを掻き集めまして、、爆発を。」
「はっ?ゴミ?どういう事?」
「ムル殿の家には沢山の乾燥した動物の死骸がありまして、それを袋に詰め、ガスが充満したところを火の点いた弓矢で。」
「ムルの破壊力ってわけか?ハハッ!」
「考えついたのはニジェ殿です。」
「ニジェ? やはり連れてくれば良かったなあ。戦略家として欲しかった。カザマンスに留め置いては、宝の持ち腐れだわ。」
「いえいえ、ニジェ殿はどこにおっても賢くやれるお方。それはそれで宝であります。」
「その黒く煤けた宮殿も見て行かれますか?」
「いや、いい。ディオマンシの宮殿は見たくない。」
「私は一か所立ち寄りたい所が。」
「ガーラ殿。ジョラの者でもないのに、どこに?」
「ムル殿のおられた家であります。」
「ゴミの屋敷に?」
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「この裏手に。」
「なんだこれは?十字の墓と石碑らしいもの、、」
「アクラ殿とレノー殿の墓であります。」
「2人ともお前の手によるものだな、、」
「はい。」
「このカジュの木の十字架に掛かっておる帽子は?」
「勲章が付いたレノー殿のベレー帽であります。」
「ジルベールに持っていくか?」
「いや、きっとレノー殿が嫌がるでしょう。」
「だろうな。殺したお前が持って行った上に、ジルベールに渡すなど以ての外だな。」
「シュン、、」
「皆!この2人の墓に頭を下げてゆけ!俺達の部族の為にお働きになってくれたお人達だ!」
75のカザマンス王国の兵は一人一人その墓の前で一礼をし、マンディンカに向け西に聳える 高く険しい山々の麓に向かった。
「では、この先です。くれぐれも見落とさない様に。」
「モリンガの木。モリンガの道だな。」
「参りましょう!!」
※宜しければ『カザマンス・FIRST』火蓋の上下43~レノーの十字架(付近)をご参照下さい。
※一昨日(1月11日)『マンサとアフィ』という抜き取り短編を投稿致しました。
宜しかったら是非それも。
いつもお読み頂き誠にありがとうございます!感謝!