マンディンカ闘争 20~ハラとガーラ・ベリーの道
カザマンス王国を出発したハラ率いる第二部隊75名は、村の西側、小高い山の中腹に差し掛かった。
「ハラ殿。何か足元がベタベタとして参りましたが。」
「なんだろう?草も枯葉もベタベタと足に貼り付いてくる。」
密林が少し開け、真上からの日の光が木々の隙間から木漏れんだ。
そこは見た事もない別天の地。太陽の神々しい日を受けた草の原は、薄く淡い赤紫色に染まっていた。
「、ん?なんでありましょう?この紫色の絨毯のような森は?」
ハラとガーラがそこかしこの高い木々を見上げた。その目の先には、もう最盛期の終わったベリーの実が細い枝葉に掴まる様に、ポツリポツリとぶら下がっていた。
「これはベリーが落ちたのだな。」
「それで、ベタベタと。」
「凄い量だ。」
太陽の光までを紫色に変えたベリー。その木々を、眺めながら歩いていると、ハラの足に何かが当たった。
ガサッ!
「なんだ?これ?」
ハラが足元の叢を掻き分けると、そこに2つの背負籠が現れた。
その籠には完熟し、腐りかけたベリーの実がたわわと入っていた。
染み出した果樹の液が背負籠を赤紫に染めていた。
「綺麗に染まっている。はて?この辺りだな。マンサ王妃とアフィがフランス軍を見つけたのは。」
「どういう事ですか?」
「マンサ王妃はこの山にベリーを獲りに来てな、奴らを見つけたんだ。」
「ほう。では、これがマンサ妃とアフィの籠?」
「それにしても、ここからフラミンガまでの川沿いを、夜通し走り切るとは、、まだ年下の女小僧と思っていたが、、、それが今や王妃だ。」
「なるべくしてですな。」
「この2つの背負籠、逆さまにして日の当たる所に置いておこう。乾かして、帰りに王妃のお土産として持って帰ろう。」
「きっと、喜ばれますよ。この鮮やかに赤く染まった背負籠。その為にもフランスに勝たねばなりませぬな。」
「勝って戻るのだ。たわわにベリーを積んでな!」
「ハハッ!もうベリーは採れんでしょう?全て枯葉に埋もれておりますよ!」
ハラとガーラは、まだ枝に残ったベリーの実を口に含んだ。
「美味いなッ」
「おいしい!」
山頂まで辿り着くと、その75の兵は山の斜面を旧のジョラの村に向け下り始めた。
「ガーラ殿。見えますか?」
「ん?」
「ほら、そこ。」
「おー!あれはジョラのグリオ集会所!」
「というか、、煤の瓦礫。」
「ニジェ殿とガーラ殿でフランス軍諸とも木っ端微塵にしなすった。ハハッ!」
「おっ。ハラ殿、なぜご存じで?」
「俺とファル王は見ていたんだ。ここでな。フラミンゴの様に燃え盛る炎を。」
「そうでありましたか、、、」
「ついでに、ディオマンシも連れて帰ったがな!ハハッ!」
「えっ!ディオマンシがなぜここに?」
「あいつ、カジュの酒を造れるとか抜かしておって、フランス軍に連行されておったんだ!」
「全く知らんかった。」
「命乞いして、嘘をつきよった。ハハッ!」