マンディンカ闘争 19~予期せぬ船
ダカールの港は大騒ぎであった。
「フランス軍の船がぁ!!2艘ともゴレ島の沖合で沈没したぁ!!」
「何が起きた?!2艘共とは!?」
「砲弾を受けたぁ!ステファン軍曹の船モルガン号とロドルフ号だぁあ!!」
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『国旗を畳め!急いで!!』
サバはブラルに指示をした。
『炭を焚け!逃げるぞ!!』
『アラン殿。これはどういうことだ?』
「わからない。とにかくフランス国旗を掲げた船がやられたという事には間違いないが、、」
アランがそう言うと、バブエが言った。
「しかし、3艘もの大型船を一度に燃え上がらせる様な攻撃を出来るものなぞ、このアフリカの部族にはいない。」
「来たのかもしれん、、」
『アラン殿、来たとは?』
「他に誰がいる?やつらしかいないであろう?」
『奴ら?』
「オランダだ。」
『えっ!!オランダ!?』
「なぜ?!」
サバとバブエは首を傾げた。
「サバ様。バブエ殿。よく考えてごらんなさい。今、南米ではフランスとオランダの戦いが始まりつつあります。我がフランス軍が、いち早く南米に兵を送り込むにはフランス本土から送り込むより、ここ西アフリカからの方が数段早い。ルイ・フィリップ国王もそれを命じた。オランダはそれをわかっていた。」
『と言うと?』
「簡単です。西アフリカから出国するフランス兵をここで先に叩いてしまえば、オランダにとって南米での敵はわずか。かなりの兵を減らす事が出来る。南米に乗り込まれてからでは遅い。オランダを出国した軍艦のうち数船は、南米に向かう前にフランス兵の多くいるこの地に立ち寄り、ダカールやカザマンスの兵を叩きのめし、戦力を削ぎ落してから大西洋を渡ると、、」
『なるほど。オランダは戦争を吹っ掛ける前に、すでに軍を南米とこの地に向かわせていたという事か。』
「そうです。この地に甘んじていたフランス軍より、一歩も二歩も上手であったという事です。」
『では、ダカールに戻した2艘の機帆船も、、もしや?』
「たぶん、、海の底かと。」
『オランダは、まだこの先も追って来るか?』
「いいぇ。たぶんでありますが、ここからは大型船でありましたら無理でありましょう。」
『では、上陸の策に転じてくるか?』
「いや、それもどうかと。奴らの目的はあくまで南米の植民地争い。この奥まで追っていては自軍の兵も少なくなり時間も使い過ぎる、、、ここでゆっくり戦闘などしておれぬはず。しかもバンジュールの大型船3艘を負かしてしまえば、充分戦力は落としたと、取って返しで南米に向かう可能性が高い。」
『ダカールに向かった2艘も攻め落としていたら尚更だな。』
「セレールとフラニの陸路部隊を迎えに行った蒸気船は大丈夫であろうか?」
バブエが言った。
「それは、わかりませんが、今この状況で、、何でしたっけ?布の名前?」
「パーニュ。」
「そのような部族の布を掲げた船に砲弾を使うなどありえないことでありましょう。もったいない。とにかく目的はフランス兵の削ぎ落しですから。小さな船にかまっておられんでしょう。」
『無事を祈るしかあるまい。』
「しかしここは危険です。とにかく国旗を下げて、カンビヤ川の北の沿岸に沿って航行いたしましょう。」
アランの考えにサバは頷いた。