マンディンカ闘争 15~モリンガの地図
マンディンカに降り注ぐ太陽の熱は、カンビヤ川から流れ込んでくる麗らかな風に遮断され、それを地面に届かせることは出来なかった。
しかしこの地にまだ残っていた50の奴隷と、フランス兵は躍起になって乾土のブロックを積み上げていた。それはカンビヤ川やカザマンス川から水路を引く為の土台になるものだった。眼鏡橋の土台だ。
「なあ、俺達はフランスに戻れると思うかい?」
「ジルベールはここに国を作ると言ってる。」
「俺達はジルベールを祀り上げる国、この地の市民になるという事かい?」
「たぶん。しかし俺はリヨンに親もいる。恋人だって残して来てるんだ。」
「俺の故郷はニース。こんな所と比べたら天国と地獄だ。」
「ジルベールは、国が出来たら呼び寄せると言ってたらしいが、なにしろ来るわけがない。それよりもなにより、フランスにとってはジルベールは非国民になるんだ。出国を許可するわけがない。」
「それにな、この前の事件。いくらパルマランの兵とはいえ、駐留地が違うだけの自軍の兵を射殺するとはな、、書を送り届けただけだぞ。俺達も何かしでかしたら、パーン!だ。」
「俺達は皆、レノー大佐に付いてここまで来たんだ。レノー殿は俺達の味方だった。ジルベールのやりたい放題を収めていてくれたのも大佐。」
「しかし、レノー殿はもういないよ、、」
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「ジルベール将軍殿! 大変な物を見つけました!!」
ジルベールとその幹部たちは、占領したこの地の部族、マンディンカ王バルの宮殿を駐留の本部としていた。
ジルベールがバル王を撃った宮殿だ。
そのジルベールの執務の部屋をノックしたのは、片腕二コラ少佐であった。
「この宮殿の一室に、遣使の部屋がありましょう?」
『ああ、アクラとかいう奴の部屋か。』
「その部屋の床下にこんな物が。」
『んん?なんだこれは?』
「地図であります!」
『地図? どれ見せてみろ。』
ジルベールはその薄汚れ黄ばんだ紙を手にすると、机の上に大きく広げた。
『フランス語じゃないか?』
「はい。たぶん百年という年数は経っていると思われます。」
『誰が書いたんだ?』
「その昔、ここにフランス人入植者がおったんではないかと。兵ではない、、学術者とか、、それにこの地の者は文字を持ちませんので、間違いなく我が国の者と思われます。」
『、、、ここマンディンカからジョラへの道が書いてある。』
「そのジョラまで辿った線の途中。道の名前が書いてあります。」
『【モリンガの道】、、』
「はい。」
『モリンガとは?』
「ニジェール王国に生えている薬の木であります。この辺りには生えていない外来の木であります。つまり、この木を辿れば、、」
『容易にジョラに着くと!』
「そうであります。我々が2年にも及ぶ行軍でようやく辿り着いた地に、いとも容易くであります!」
『でかした!二コラ!』
「有難きお言葉。」
『そろそろジョラの疫病も収まった頃であろう。行くか?!あの村へ。』
ジルベールは椅子から立ち上がると、ニコリと口元を緩めそう言った。