マンディンカ闘争 11~パーニュの布を掲げた船
フランス管理官達とフランス軍警備兵は責任を問われていた。
「なんとか捜し出さねばな。」
「奴らは奴隷とアコカンテラをどこに持ち出したんだ?」
「奴隷をマンディンカに戻した事と関係があるのか?」
「どこへ消えたのだ?」
「とにかく見つけ出すんだ。」
フランス兵が消えたバブエと奴隷狩り部隊を捜し出そうと、ダカール港で偵察船の準備を始めた。
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陸路をマンディンカに向かっていたのは、セレール200とフラニ100の計300の部隊だ。
彼らはサールの命で到にダカールを離れ、一路マンディンカに向かっていた部隊だ。
この部隊は知らなかった。サールが亡くなった事。
自分達はマンディンカのみならず、ジョラにまで攻め入り、カジュを探し当てる役目を担っていると思っていた。
パルマランの西の林伝いに面した浜。砂浜は満ち潮には十メートル足らずになる。
その兵はそこでしばしの休息を取っていた。
「この先にはパルマランの村。小さな港がある。フランス軍が駐留しているかもしれない。ここからもう一度山手に回り込む。見つからない様にな。」
そう号を掛けたのはこの部隊の長、バズであった。
バズはブラルとともに奴隷狩り部隊を引っ張ってきた兵の1人。フラニ族の出身だ。
カンビヤ川沿いをマンディンカに向かっていた彼らはパルマランを回り込む手筈をとった。しかし、空は夕間詰を迎え、バズ達一団はこの浜で一晩をやり過ごす事に決めた。
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潮が引き、砂浜は遥か沖にとその裾を広げていた。
紺碧色に輝いていた波は、橙の砂と入れ替わっていた。
朝を迎えたのだ。
「おい!起きろ!立て!向かうぞ!」
バズは兵に声を掛けた。
目を擦りながらフラフラと立ち上がった1人の兵の前、その沖合に2艘の船が浮かんでいるのが見えた。
「船だぁ!」
「えっ!マズい!!早く皆!!見つかるな!」
スタスタスタ、、、バッバッ
セレールとフラニの部隊は我先にと砂浜から林の中に逃げ込んだ。
「なんだあの船? 蒸気船のようだが、、この辺りを航行する船にしては小さくないか?」
「んん、、あれはダカール港内を行き来している船じゃないか? 帆柱もない。」
兵達は木々の間から目玉だけを出す様に沖の船を眺めた。
「船室の上辺り。見えるか? スルスルと旗が上がるぞ!2艘ともだ!」
「国旗か?」
「ん?フランス国旗ではないな。オランダのものでもない、、しかも国旗にしては巨大な布だ。」
船の柱上に掲げられたその布は、北西から流れ来る風に大きくたなびいた。
1人のセレール兵が声を上げた。
「あの柄、、パーニュ? 馬の柄ではないか?」
「えっ!パーニュ?」
「あっ!間違いない!パーニュの旗だ。」
「どういうことだ?サール殿の船か?しかし東から来たようだが、、舳先がダカールに向いている。」
その布を掲げ終わった2艘の蒸気船は、まるで停泊するように沖の波に揺られていた。
L ibra様制作『パーニュを掲げた蒸気船』
※この陸をマンディンカに向け行軍した部隊とは「奴隷の行方25」で取り上げた(船に乗らず陸を行軍した)部隊の事であります。