マンディンカ闘争 9~ニジェの役目
「しかし、ニジェをここに留めて置くのは勿体無いのではありませんか? 旧ジョラの村の宮殿、集会所。フランス軍を焼き討ちにし打ちのめしたのはニジェ。参謀としては打ってつけ。」
ハラが言った。
『もちろんオレもそう思う。もしかしたらこの中で一番の策士。』
「ではなぜ?」
『もし、オレ達がフランスにやられたとしても、この血は絶やしたくない。それを守れるのは?その先を考えられるのは? この国を統率できるのは?』
「、、俺では無理だ、、」
ハラが言った。
『ニジェしかおるまい。
王とは絶対的なものでなくても良い。つまりフランスとの闘いの間は、ディオマンシとオレ、ニジェという3人が王の役目を果たす。』
「役目?」
『形だけの名ばかりの王ディオマンシ。しかしこれはこれでこの先の戦いに必要な王だ。そしてオレは前線に向かう一兵卒の王。ニジェには未来を託す預かりの王。』
「ほう。」
『戦いの前には、全ての手を打っておくのだ。一つの国を一人の王でまとめていたら、オレが殺られたら壊滅同然。しかしこの国にはニジェがいる。それを民にわからせておけば、すぐさま指示が移行できる。路頭に迷わずな。その対応が即座に出来るのはニジェしかおらん。だからここに留まってもらう。』
「お褒め頂きありがとうございます。しかし、、想像してはなりませんが、もしファル様になにかありましたら、、」
ニジェが聞いた。
『先に指名しておく。ニジェ。お前が王だ。』
「えっ! わたしは罪人。しかもジョラにゆかりの者でもない!」
『見回してみろ。他に誰がいる?』
「おらんようです、、」
ニジェの言葉に、ムル、ハラ、ガーラが笑った。
『しかし、気負うな。オレは必ずや敵を追い払って戻って参る!』
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「おーい!ディオマンシ!良い報せがあるぞぉ!」
「なんだ。ムル。お前、霊媒師の分際でありながら法官になったそうだな? 法を霊に頼るとは、、血迷った王だなファルは。」
「なにを言っておる。この地の決め事は以前から木の精霊、川の神、天の王のお告げによって歩んで来たのだ。わしが法官でなにが悪い? それを無視して来たのは貴様だろうが!」
「フン!お前の予言なぞ当たらぬからな。で、なんだ、良い報せとは?」
「王に返り咲きだと。」
「ん?!どうしたっ?!何が起きたっ!!」
「何も起きてはおらんっ。ファル王が一旦退くと。」
「おー!そうか!そうか!では!この檻から出せ!早く!わしが王だ!」
「少々お待ちを。今、ここにブビンガの椅子を持って参りますので。」
「なんだ?持って来るって? 良いから早く宮殿にだ!開けろ!」
「いえいえ、今日からこのカザマンス王国の宮殿はこの檻になりますので。」
「出せ~!出せ!出せ!出せ~!」




