マンディンカ闘争 8~檻の中の王
パ~ン!パパ~ン!
ガクっ、、
リュカはジルベール軍兵の銃弾に倒れた。
書をマンディンカに届けた証拠は消された。
「身ぐるみ剥いで、軍服と一緒に燃やせ。誰ともわからぬ様に。」
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『ハラ。お前はガーラ達を率いて、モリンガの道を下れ。』
「はっ!」
『マンサとオレは、カザマンス川を下る。』
「マンディンカの南と北にという事でありますね。」
『フランス軍でも引き返した程の山越えは避ける。カザマンス川はマンディンカの遥か北を通り、下流に行くにしたがって回り込む様に南へ抜ける。』
「しかし、川を下った者は誰もおりませんよ。途中には葦が生い茂り方向も分からなくなります。それに加え、アコカンテラやアキーの滲み出た沼。その先は至る所ワニの生息地。地獄絵図のような場所ばかり。フランス軍がジョラを攻め入るのにキツい山を選んだのもそのせい。」
ガーラがファルに助言した。
「一緒に、モリンガの道を使って下れば良いではありませんか。」
ハラが言った。
『いや、川を下る。距離と速さを考えれば、山越えやモリンガの道とは雲泥の差。ポロロカに使ったブビンガの丸太船でだ。』
「しかし、死んでは元も子もない。」
『やってみたい事があってな。』
「何をです?」
『そのワニ。毒の実。好都合。』
「何かお試しに?」
『そのアコカンテラとアキー。どれほどの効き目があるか、ワニに試しながら下るのだ。』
「ワニに?」
『そうだ。成功すればマンディンカの水路に流す。』
「しかし、そんな事をすればマンディンカにいる奴隷達までもが、、」
ハラが言うと、ガーラが答えた。
「たぶん、大丈夫だ。奴隷達は細々とたまに降る雨。その貯水しか飲ませてもらえていぬ。水路の水は全てフランス兵のお腹に入る。」
「ほ~う。」
「ハラ殿。わしらがマンディンカに着いたら、カンビヤ川の流れ水以外口にしてはいけない。ファル王が毒を流すというカザマンス川の水を口にしたら、我が王に殺されてしまう事になりますからな。ハハッ!」
『そういう事だ。ハハッ!』
ファルは続けた。
『で、ニジェ。お前はこの地をムルの爺と守っていてくれ。何か事が起こったらここが最後の砦。残った民をお願いする。』
「分かりました。」
「で、どうする?ディオマンシの奴は?」
ムルがファルに聞いた。
『王に返り咲いてもらう。』
「えっ!?」
ムルはもちろん、ガーラもハラもニジェも驚いた。
「どういう事です?」
『フランス軍と戦う間。ジョラ、、いやカザマンス王国の王はあくまでディオマンシ。』
「なぜ?」
『この謀略の全て。このカザマンス王の策略。』
「全責任をディオマンシに被せる?」
『オレのダミー。影の王として。疫病でフランス軍を騙した時同様。』
「では、あの檻から出す?」
『それは無理な話だ。檻に王の椅子だけを持ってゆけ。』
「なるほど。とことんまでディオマンシを使うと。」
※この小説『カザマンス』の冒頭「静かなる内戦1」
前文を大きく継ぎ足しました。
200話を越え、最初の部分と最新~これからを繋げていきたかったのが理由です。
宜しかったら是非一読下さい。