マンディンカ闘争 6~ロドルフという男
アランは夜明けと共に目を開けた。
そこには、まだ話し込んでいるサバとバブエ、そしてブラルがいた。
「おい。お前ら。マンディンカは空になるかもしれんぞ。」
アランがテーブルに腰かけたその3人に呟いた。
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「連れて参りました。この兵です。」
『お前か。名は?どこの駐留兵だ?』
「はっ!名はリュカ。パルマラン兵であります!」
『ほう。パルマラン。これはどこで手に入れた?』
「手に入れた?、、いえ、ロドルフ少佐殿とアラン少尉殿からこれを持ってジルベール殿の所、つまりマンディンカに向かえと。」
『2人から? なぜ2人が同席しておるのだ?』
「いえ、それはわたくしにも分かりませんが、ロドルフ殿の船がダカールに奴隷を引き取る折り、パルマランに寄港したのであります。この国王からの書を持って参りましたのもロドルフ少佐でありましたし、、」
『ん?なぜ行きにパルマランに寄ったのだ?燃料も食糧も十二分にあったはずだが。』
「わかりません。」
『お前はそこに立ち会っておったのか?』
「もちろんであります! その書を託されましたので。」
『この書状。間違いなくフィリップ国王のものだ。この蔦の縁取り。紙も確かな物。サインも、、間違いない。しかし、こっちだ。なぜアランの署名なのだ?』
「もう一枚をご覧になられましたか?」
『ん?これか、、』
「国王からもう一通。」
【全ての奴隷の移動を禁ズ】
「それを見たロドルフ殿は震えておりました。」
『ううむ、、』
「そして、ポツリと呟きました。『俺は国王に背くべきか、ジルベールに背くべきかと。』」
『この書はすでにバンジュールで受け取り、それを見たロドルフは悩んだ末に、パルマランのアランの所に寄港したと、、』
『ん?これはなんだ?もう一通。封をしてある。』
ジルベールはその封を切った。
一通の紙。署名はロドルフ。走り書きであった。
【au revoir gilbert】
(グッバイ ジルベール)
『、、、どういうことだ、、、』
「なにもわかりません。ロドルフ少佐殿は悲痛な顔をして、これをジルベール殿にと。そう言ってダカールに向かって出航しましたゆえ。」
『その後、ロドルフは奴隷を積んでダカールから、こちらに向かっておるのではないか?』
「いえ、ですからダカールに向かう前の事でありますから、その後の事は存じ上げません。」
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「ん?なぜマンディンカが空になるのだ?アラン殿。」
「ダカールからの船。俺が何度も『ロドルフはおるか』と聞いていたのを知っておるだろう?」
「言っておった。軍を率いておる者を呼び出さねばな。」
「違う。生きておるかの確認だ。」
「嵐のことか?投げ出されたとか言っておったが。」
「たぶん、、違う。嵐に乗じて自ら飛び込んだんだ。風を読めぬほど馬鹿ではないわ。ロドルフ殿は。」
「お前の涙は、、その涙か、、あの敬礼も、、」
ブラルが言った。
「しかしアラン殿。なぜ?ロドルフが生きてはおらんかもと、、、?」
サバが聞いた。
「悩んだものの、奴隷をバンジュールまで連れてくれば、ジルベールに顔が立つ。そしてすぐさま兵をダカールに戻せば国王にも顔が立つ。しかしやっていることは大罪だ。ジルベールにも国王にも怒りを買う。その狭間。」
「意味がわからぬ。詳しく教えてくれ。」
バブエが言った。
「俺はロドルフがジルベールに言えずじまいの書を一通差し込んだんだよ。「お気をつけてお越し下さい」とさッ。」
「何を言っているか全くわからん、、」
※昨日投稿のマンディンカ闘争5よりお読み頂ければ、更にわかりやすいかと思われます。




