マンディンカ闘争 ~5国王からの書
「ジルベール殿。パルマランのアラン少尉殿より連絡が入りました。」
ロドルフと並ぶ片腕二コラが、ジルベールの執務室をノックした。
マンディンカに一人のフランス兵が現れた。彼は数枚に及ぶ書状を持ちこの地に出向いた。
【ジルベール将軍に告ぐ】
【カザマンスからの撤退を命ず。
南米での仏蘭戦争に加担せよ。
ルイ・フィリップ】
ルイ・フィリップ。
フランス国王だ。
この前年、本国フランスでは革命が起きていた。チフスなどの疫病の蔓延、飢饉による飢餓。
その対処に反発する市民が社会主義運動のうねりと共に立ち上がったのだ。
その社会主義と民主主義の争いは奴隷廃止をも促した。それは互いが民衆の票を勝ち取る為のものであったのだ。
この年に王位を継承した国王フィリップの最初の大仕事、それは新天地での食糧確保。絶対的なもの。それには新たな植民地、南米でのオランダとの争いに勝たねばならなかった。
バスチア率いるフランス軍が、ジョラの村が疫病と知り、即座に退いたのは、このチフスという疫病の恐ろしさを知っていたからに他ならない。
『カザマンス撤退?』
ジルベールには王から送られてきた書状の意味は、正当。当然の事だろうと認知した。
この西アフリカの大地での目的は、奴隷である。食糧ではない。何もない乾燥地帯と開拓されずじまいの地。それに比べ南米は食物の宝庫。
ヨーロッパに蔓延った疫病チフスも粗方この奴隷達からの物。
今はフランス軍がここに駐留する意味はない。
ジルベールはもう一枚の書に目を通した。
【ダカールへ向かう街道もとより船舶は、南米行きの船に乗る為のフランス兵達で大渋滞が起きております。 お気をつけてお越しくださいませ。 尚、ロドルフ少佐殿もこの命によりバンジュール港よりダカールに向かっております。 パルマラン駐在少尉アラン】
『は?!この命により向かっておるだと!なんだ勝手に!ロドルフの奴! しかもアラン!「お気をつけてお越しくださいませ。」だと! 当然ダカールに向かうという物言い!』
ジルベールは椅子を蹴り上げた。倒れた椅子が二コラの膝を打った。
「痛たたた。、、いくら、ロドルフ少佐といえ、国王の命とあらばいかし方ない事。」
『奴の上官は、わしだぞ!』
『しかしこの書、、、なぜパルマランからなのか? サインはアランのものだけ。ロドルフがバンジュール港にいたのなら、わざわざカンビヤの対岸のパルマランから送る必要もあるまい、、ロドルフが送ってくれば良いではないか? 』
「呼んできましょうか? これを持ってきた兵を。」
『連れて来い。』