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【第二幕】マンディンカ闘争 1~飼い猿

 フランス国旗を掲げた2艘の船はフランス兵10、セレールの部隊が100。フラニの部隊100と奴隷達200を乗せ、一路カザマンスに向かった。遠く南の水平線にはバンジュール港のぼんやりとした薄明かりが見えた。

 嵐の後の澄んだ空気がそれを映し出した。

 


 

バブエは彼らに解放されたむねを伝えた。

 『ほら。食べろ。目いっぱい。沢山ある。』

このフランス船に備蓄されていた木の実やモロコシは、パルマランを出航してからすぐに炊きだした物であった。

 『お前らが戻ってきたら、すぐに食べられる様にと思ってな。』


 味方の船だと知った彼らは歓喜した。

しかし、甲板に腰を下ろし食糧にむさぼり着く彼らの足首には、奴隷の証拠となる足枷の赤く血でにじんだあとが残っていた。


(消えぬであろうな、、)


一人の青年が甲板から身を乗り出し、嗚咽を繰り返しながら海にモロコシを吐いた。

 『大丈夫か?なにか変な物でも?』

「おえっ、おえっ、ゴホっ、、、いや、違うんだ。これまでほとんど食いもんを口にしていなかったから、、身体が受けつけないみたいなんだ。」


 『そうか、、そんなになるまで。慌てて食べんでも良い。いくらでもある。ゆっくりと。』


ーーーーー


 船室からブラルの怒鳴り声が聞こえた。


「アラン!泣いておるのか!!フランス兵との別れがそんなに辛かったかっ!しかしなっ!このアフリカの民をみろっ!我々の別れはこんなもんではないぞっ!」

ブラルはアラン少尉に槍を構え、甲板にいる奴隷達の方を「見てみろ!」と言わんばかりに指差した。


 

 『そう気を荒立てるな。』

船室に入ったバブエはその槍を退かせた。


 『ブラル。お前、以前猿を飼っておったろう?』

「ん?はい。」

 『親猿から奪い取って、檻の様な籠に入れ。』

「は?それがなにか?」

 『同じなんだよ。フランス人にとっては。』

「同じ?」

 『こいつらにしてみればな、異国の地でな、黒い動物を発見したんだ。それは今まで誰も見た事もない、自分達と同じ様に2足で歩き、同じ様に手を動かす。』

「ほう。俺らの事かい?」

 『そうだ。お前が気の向くままに猿を飼っていたのと同じ様に、こいつらには罪の意識など毛頭ないんだ。その認識が奴隷を生んだんだ。』

「なるほど。」

 『だからだ。だからこそこいつらには、俺達が肌の色が違うだけの同じ人間だという事をわからせねばならん。お前らと同じだという事を。』


 「だから、闘う。」


 『そう。このままこいつらの言いなりになっていたら、奴隷のままでいたら、、、お前の飼っていた猿と同然だ。だから立ち向かわねばならんのだ。』


ブラルの怒鳴り声に驚き、船室の窓から覗いていた奴隷と化していた大地の民は、その話に大歓声を上げた。


「バブエ殿。奪い返しましょう。この我が大地を。」

覗いて聞き入っていたカロが口元を緩め笑った。


「そうだ!我々はどこに行こうが、このままでは奴隷だ!まともには暮らせぬ。ダカールしかり、バンジュールしかり、マンディンカしかりだ! どこにいてもだ! 生き抜くためには闘うしか手立てがないのだ!」

 目を輝かせそう言ったのは、マンディンカ王バルの息子であるサバであった。


  

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここの会話が特に熱く胸に響きました。 人としての尊厳と、自分たちの住む土地を取り戻す為に戦う決意を固めた男達。その言葉の一つ一つに凄く重みを感じます。 軽快な読み心地の冒険の中にある、こう…
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