奴隷の行方 55~奴隷の移送・船から船へ
「あの~!アラン殿~!実はぁ!この嵐でロドルフ殿は、船室から突風に煽られ海にドボンッと、、」
『はっ!?落ちたぁ? 亡くなったという事かぁ~?』
「そうであります~!」
『ほ~、、それは、、、惜しい事をした、、』
アランが顔を出している窓の奥から、その船体を見回していたバブエは「しめた!」と思った。
『では今、誰が指揮を取っておるんだ~?!』
「誰もおらず、皆右往左往であります~!」
〔チャンスだ!アラン殿。言った通りの事を奴らに伝えてくれ。〕
バブエの指示を、サバがアランに伝えた。
『あのな~!その船だがここからのカンビヤはその船では支障をきたす!マンディンカに行くのであろう~?大き過ぎるのだ!川幅も狭くなり先はウネウネと三日月湖の連続だ!』
「アラン殿!どうするおつもりで~?」
『ジルベール将軍殿の命を私が受けたまっておる~! ロドルフ殿がいない限り私が全権を掌握する~!』
(よいぞ、アラン殿。その調子。)
『2艘の機帆船を横付けした! 奴隷達をこの船に移送しろ~!』
「えっ!ここでですか~?」
『そうだぁ!バンジュールの港は、この嵐で船がなぎ倒され入港出来ん! ここでだ! 縄梯子をかけろ!』
「掛けますが、、そちらの兵にも手伝っていただかないとぉ~!」
(なんて言えばいい?)(こうだ。こう言え。)
『今なぁ~!その奴隷達の受け入れの為、船底を片付けておる~! パルマランの奴隷を数人連れて来たから手伝わせる!』
「ん?パルマランに奴隷なぞいたか?」
「まあ良い。こいつらの悪臭から解放させられるなら、アランの船に乗せちまった方が俺達も楽だわ。」
「だな。奴らが嵐の中、帆を畳みおった時から、恥ずかしくて顔向けできん様になっておったからな。」
「乗せちまえ。ロドルフもおらんし、何よりもジルベールの命令だといっておるしな。」
「アラン殿!わかりましたぁ!今そちらの船に梯子を掛けま~す!」
『わかっておるな~!マンディンカの開拓には欠かせぬ奴隷達だぁ!海に落としたらジルベールの大目玉だぞ~! こちらにも人数分の鎖と鉄球を用意してある! はずせ!一人一人鎖を外して梯子を下りるよう! はめておったら海にドボンだ~!』
「大丈夫なのか?外して?アラン殿の船で、暴れ出したりせんか?」
「知ったこっちゃない。アラン殿がそう言うんだ。早いとこ下ろしちまおうぜ。」
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(はずす?)
奴隷集団の後方に膝を立て座っていたカロとダラは顔を見合わせた。
「あの船は?」
[フランス国旗を掲げているが、、たぶん、、]
[バブエ殿が乗っている。]
[フランス軍がいとも簡単に鎖を外させるわけがない。]
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「アランの船で手伝っておる奴隷、、鎖も鉄球も着けておらんが、、」
カザマンスの兵は首を傾げた。
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[やっぱり。]
ヤッサ売りのカロとダラがパルマランの甲板に見たのは、セレールとフラニの奴隷狩り部隊。
知った顔ばかりであった。
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『船上での作業だ!鎖をはめておったら仕事にならん! こいつらも一旦外したのだ!』
アランがバブエの指示通り、大型船のカザマンス兵達に大声で説明した。
「なるほど。」
(疑われてはならん。きっちりと。堂々と言え。アラン。)
『銃は我らが掌握しておる!逃げられんようになっておるから、早くこちらへ移すんだ!一人たりとも落とすでないぞ~!』




