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奴隷の行方 53~カザマンス王国の誕生

 ジョラの村には元々300余の民がいた。

そこにマンディンカからの残党、いわゆるフラミンガと名乗ったニジェ率いる民が加わった。

 ジョラとマンディンカ総勢400。


 

  カザマンス川の奥地。葦の湿地と密林に挟まれた大地。カジュやブビンガにトゥーカンがさえずる森。切り開いた肥沃な土にはモロコシとアブラヤシが真っすぐに生え揃う。それらを取り囲む水路には多くの小魚が戯れていた。


  

  ここに王国カザマンスが誕生した。


  

 しかしそれは内々的なもの、カザマンス王国という名の国がこの密林の奥にあることなど、フランス軍は無論、西アフリカの他部族さえ知るすべはなかった。ましてや、疫病で壊滅したと思われている部族。

 

 マリ帝国やカサ王国。数万人をようする国家ならいざ知らず、少数民族の国は血縁集団で形成されるリネージュというのがほとんどだ。先住の地に居候のように定住し、移住先で新たな氏族を形成するアバメニャ。

 それは幼いながらマンディンカからジョラに来たファル。ドゴン族からマンディンカに養子に捕らわれたニジェ。すでに体では経験済みの事であった。


 

 カザマンス王国の王の椅子に座ったのはもちろんの事ファルであった。

それは、ジョラ族、マンディンカ族全民の一致である。

 

 静かなる内戦ではあったが、ディオマンシを捕らえ、手下のカマラ、パプ、ドンゴを打ったのはファルだ。疫病と称しフランス軍を撤退させたのもファルの考え。フラミンガの内戦を鎮圧させ、ガーラを檻に閉じ込めたのも全てこのファルの力に寄った。それは全民の信頼の証しとなった。


 

 将官にはハラ。法官にはムル。ニジェは開拓官と民の管理を任された。


 150人の軍は75人を1部隊とし二手に区分された。

檻から出されたマンディンカ兵は徒党を組まぬ様、それぞれに二分された。

 

 その第1部隊をハラが仕切った。ガーラはハラの管理下に置かれ、その知識と力を存分に発揮する事を誓った。


 そしてもう一つの部隊を取り仕切る長には王妃マンサが配属された。

彼女は身体能力に丈け、弓も槍も男顔負け。民にも絶大な信頼を受けていた。

 「わたしはファルの王妃にならなければ、軍を率いてみたかった」と常々言っていた。

ファルはマンサの希望を叶え、王妃としての内助の功は一旦捨てさせた。


 『マンサ。やりたいようにやってみろ。カザマンス王国は民の国。 出来る者が、その能力にたける者がその職につく。それが王妃であろうが小作人であろうが皆一緒だ。茶は自分で沸かすゆえ。ハハッ!』


 ドルンはこのマンサの配下に敷かれ、その飛びぬけた身体能力をマンサと競わせた。


 好都合にもこれからのフランスとの対峙に大役を任せられる2人がいた。

通訳のワリとアゾだ。彼らもまたそれぞれの部隊に分かれ任務を全うする事となった。


 カザマンス王国の民それぞれの役割と軍部隊が明確に定まった。



『ニジェ。一番大事なのはお前の仕事。ここに残る民を任せる。農作物や食料を切らさぬよう。』

 「承知致しました。」

※リネージュ・文中通り血縁関係のみで村を築く事。


※アバメ二ャ(アバメ二ャシステム)・文中通り移住先で新たな氏族を築く事。

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