奴隷の行方 52~フランス国旗を掲げた船
『おい!アコカンテラはゆっくりと慎重にだ!海に落とすでないぞ!』
その木箱はロープでグルリと縛られ、セレールとフラニの部隊によって、乗っ獲った機帆船に引き上げられた。
『では、バンジュールに向かう。このせしめた2艘に100ずつ分かれて出港する。』
「我らの蒸気船は?」
『もう用は無い。浮かせておけ。』
「さすが、フランス軍の船。炭もたわわと積んであります!おっ!武器も食糧もこんなに!」
『充分過ぎるくらいだ。おい!ブラル!まだ炭はまだくべぬでよいぞ。雨は止んだがこの強い波だ。しばらく帆に任せよう。まだ風は西から東に吹いている。後から出航したロドルフ達の船より先にバンジュールに入港できるはず。』
「先?バンジュールで怪しまれはしませんか?敵に見つからず港に向かえるとは思いませんが、、」
『ブラル。この船を乗っ獲った理由がわかっておらんようだな。帆の上を見ろ。』
「あっ!そうか!」
『フランス国旗だ。』
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「ようやく、嵐が収まったな。」
「酷い荒れ様だったな。」
「ん?あれ?船が出ていくぞ?!2艘ともだ。」
「アラン殿。何をお考え?」
「嵐の後だぞ。点検もせずに。」
「まっ、俺達整備兵の仕事は一つ減ったが、、なぜ? どこへ向かうのだ?」
陸にいたフランス整備兵達は、機帆船に手を振ってみたが、甲板には誰一人出てくるものはいなかった。
「、、、ん?あの2艘の船は?。」
「帆船ではないなぁ、、蒸気船。小さい。」
「よく、ダカールで見かける船だ。ほれ、国旗がない。」
「ない。」
「なにか、、おかしい。」
「臭うな。行ってみるか?」
浜にいたフランス兵は桟橋を駆け足で渡り、その2艘の船に向かったが、折からの暴風雨の名残波が船を沖へ沖へと運んで行った。
「無理だ。行っちまう。」
「戻って手漕ぎのボートで追うかい?」
戻った兵だったが、ボートを岸から外し振り向くと、2艘の蒸気船は沖の波に乗ってしまったのか、スピードを上げ、水平線上に豆粒の様に消えていった。
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「バブエ殿。しかしなぜわざわざバンジュールに? このままカンビヤ川を遡り、マンディンカに向かえばいいのではありませんか?」
『フフッ。』
「危険を冒してまで。」
『サール殿のお気持ちをわかっておらんようだな。ブラル。』
「サール殿?」
『サール殿は、ここにいるンバイとマリマ、サバ王子。彼らだけをマンディンカに戻す事がお望みではない。全ての奴隷達をこの地に留め、奴隷から解放する事だ。』
「なるほど。」
『それには、あの200の奴隷。助け出したい。』
「えっ?どうやって?そんなことが出来ますか?」
『アラン少尉殿に助けて頂く。使わせて頂く。』




