奴隷の行方 45~持ち出した木箱
『この木箱に入って頂きます。このまま港へは不味いので。』
「これに?狭すぎないか?」
ーーーーーーーーー
『ブラル。水を持って来てくれ。この木箱の底をビシャリと濡らしてくれ。』
「こっちの木箱は?」
『そっちはそのまま。』
バブエとブラルそれにセレール族の奴隷狩り部隊は、室から2つの木箱を持ち出し荷車に積んだ。
『しばらくのご辛抱を。言葉は発せぬように。』
バブエは木箱に収まったンバイとマリマ、サバに囁いた。
ゴロゴロゴロ
港の船着き場まではすぐであったが、案の定であった。
行く手を阻んだのは2人のフランス警備兵であった。
「おい!お前ら!こんな夜更けに何をやっておる?何を持ち出しておるのじゃ?!しかもこんなに大人数で?」
『いえ、先を急ぎますので!』
「待てと言うとるんじゃ!!」
『あ、はい。』
「ん~?よく見ればバブエじゃないか?黒くて夜ではよくわからんかったが。ハハッ!」
「で、なんだ?このでかい木箱は?」
『聞いておられませんか?今夜ゴレ島に奴隷船が急遽入港する事となりまして、そのぅ、、オランダとの戦いにアコカンテラの毒が欲しいと。ゴレにある分では足りないという事ですぐさま持って参れと。』
「奴隷船?聞いとらんが、、、その箱開けてみろ。」
『ブラル。お開けして。』
パカリッ
「うっ、アコカンテラだ。」
『ねッ。』
「そっちの木箱は?開けぃ。」
『こちらもアコカンテラであります。しかしあまりに放置してあった為、熟してしまいぃ、、ほら! 木箱の下の方。毒の液が漏れ出しビショ濡れでありまして。臭いもほれ。』
「うぅ~!これは臭う!まるで奴隷小屋の臭い!」
『左様です!触ると死にますよ!、、、ですから急いでいるのでありまして。』
「しかし、なぜこんな人数が必要なのだ? これほどの物に?」
バブエは警備兵の耳元まで近寄るとコソコソと話した。
『いえね。こいつらを手伝わせて、そのまま奴隷船に乗せちまおうかと思いまして。なにせ奴隷狩り部隊の連中ですし身体は強い。なにかオランダとの闘いに役に立つ事もおありかと。まっその前に、このアコカンテラの猛毒を触って死んでしまっても、、奴隷ですから。』
「ほほう。お前。ハイエナのようだな。ハハッ!」
『今、こんな所で立ち往生して運び出しに遅れますと、警備兵殿。あなた達が処罰されますよ。』
「なんだ。バブエ。我らを脅す気か? わかった。いいから早く積み込んでゴレへ向かえ!」
『あっそれから、堤の先の方にもスンニ族の奴隷狩り部隊が待っておりまして、奴らも手伝わせて売り飛ばしちまおうかと。』
「ハイエナ以下。ハハッ!」
『売り飛ばすと言いましたが、なにしろオランダとの戦争。今までとは理由が違います。もちろん代金は頂きません。そのまま奴隷船に手土産という形で、こいつらを。』
「ハハッ!フランス部隊を手助けしてやれ!相手はオランダだ。」
「急げ!早く行け!ハイエナ!」
2人の警備兵はクルリと後ろを向いて立ち去った。
「腹減ったな。露店行くか?」
『ふ~助かったぁ。』
「バブエ殿。お見事。」
ブラルはニヤリと笑った。




