奴隷の行方 31~オレはマンディンカの子
「言うてしまったようじゃのう。」
『どういう事だ?』
「ファル様。実はぁ、あなた様はマンディンカのお人。お父上のンバイ様ももちろん、マリマ様も。」
『んんっ!何を申す!!酔っぱらって言うとるのではないか?!』
「いえ。誠。」
『マンディンカぁ?ではなぜオレはここにいる?ジョラに。』
「それは、あなた様の爺様夫婦がこの地のグリオ達に、遥々(はるばる)マンディンカから楽器の扱いや歌を教えに来なすった。よほどこの地が気に入ったのかそのまま居座ったそうでございます。して、その子がンバイ。」
『母上は?』
「マンディンカが連れて来た嫁。血を絶やしたくないと思おておったバル王が差し向けたらしいのでありまする。」
『で、その子がオレ?』
「いや、、、ここからどう話せば、、」
『ムル爺。ここまで言ったんだ。知っておる事は全て話せ。』
「ではぁ、、申し上げにくいがぁ、、あなた様はンバイとマリマの子ではありません。」
『は?では誰の子だというのか?』
「それはぁですね。ん、、」
『早く申せというに!』
「マンディンカ王バル。その第6夫人の子であります。」
『は?バル王の?』
「赤ん坊の頃でありますからぁ、、ンバイとマリマには子が出来ずぅ、、それもまた血を絶やさぬ様にバル王が。」
『オレを連れて来たと申すのか、、』
「はい、しかしまだ先がございまして、、そのぅ。ニジェでございますがぁ。』
『ん?ニジェが関係しておるのか?』
「赤子のファル様をここにお連れした後、第6夫人にお子が出来ず、他部族からご養子を、、」
『まさか、それがニジェ?』
「左様で。」
『まるで兄弟ではないか!』
「左様で、、」
『で、ニジェはどこから?』
「ドゴンの地から。」
『ドゴン?あの大人しくも気性の荒いドゴン族か?』
「静かな部族でありますが、何か事が起こりますと、瞬時に頭から血を吹き出す様に荒れ狂う部族でございます。ニジェがあのフランス軍を木っ端微塵に容赦なく焼き尽くしたのもその一旦。その血の現れではないかと。」
『、、、この話をディオマンシから聞いたのか?』
「はい。全て、あのおっさんから。」
『では、オレはジョラの王であってはならぬではないか、、』
「いえいえ、、そう申されると思おておりましたが、、今のこのジョラの平和、民の笑い声。あなた様のおかげであります。カザマンスを統率に諮ったカサの王でさえマリ帝国からの部族であります。その辺りはお気になさってはいけませぬ。ただ、民にはもうしばらく黙りを決めましょう。」
『マンサにはどう言ったらいいかあ、、』
「あの子は気丈な子。あっあの子ではございませぬな。マンサ王妃にはやんわりとお話くださいませ。きっとご理解いただけるでありましょう。」
『しかし、誠か?信じられぬ。』
「あの檻にぶち込んだガーラとかいう護衛官。彼がアクラという遣使とともに赤子のファル様をジョラの地にお連れして来たようでありますから、ディオマンシとガーラ。2人の話、一致しますゆえ。」




