奴隷の行方 28~原種バラと2人の奴隷
『?? こら!お前ら!嘘をつくでない!! ンバイとマリマであろう!!真面目に答えろ!!』
「いえ、確かにバーコとマヌだと。」
マルタンは2人の言葉を介した。
バンジャマンは確かめる様に、2人の目玉を交互にパパと見た。
丸刈り頭の2人。黒褐色の肌。白人のバンジャマンにとって、アフリカ人種の顔は容易には判別出来なかった。 ましてや年恰好や背格好まで同じとなれば尚更らだ。
更にであった。マンディンカから連れて来た2人の顔を見たのは、エストレーの2階。サールとの契約の数分。顔など全く覚えがなかった。
『ううむ、、しかし、お前らはマンディンカの者であろう?!カジュを知っておろう?カジュの酒だ!』
バンジャマンは苛立った。
「いえ、フラニ族だと申しておりますが、、しかも、カジュの酒など一度も聞いた事がないと。」
マルタンは介した。
『フ、フ、フラニだとぅ!
謀りおったな、、サール!』
『では、アラン!この木を見てくれ!この木さえあれば、、、お前がおればなんとかなるであろう!』
バンジャマンは、まだ荷車に乗せたままだった木箱を指差した。
その蓋の杭をマルタンにポン!と抜かせると、閉じ込められていたポルンの蔓がビックリ箱さながらに、わんさと飛び出した。
「おや?これは、原種のバラですな。フランスでは改良されて、ラフランスと呼ばれておるものです。ラフランス誕生以前のものを原種バラといっております。綺麗な淡いピンク色の花を咲かせ、棘は少ない蔓状の木。この付近にもたくさん生えておりますよ。これをどうしろと?」
『はっ?ピンクの花?実は付くのか?青い、、青い実だ!』
「実などありませんよ。しかも青だなんて。ハハッ!」
『これは、カジュではないのか?!』
「カジュ? さっきからカジュ、カジュと。なんですか?それは?」
『いや、これでだな、、あのぅ、、水色の酒を、、』
「バンジャマン殿。冗談を言ってる場合ではないよ。これはバラ。しかも実がつかない細い蔓。どうやって酒を造るんですか? こちらが教えて欲しいわ。ハハッ!」
バンジャマンは頭を抱えて膝まづき、燕尾の裾を泥に浸けた。




