奴隷の行方 25~サールとバブエの密談
「ヤッサ売りから得た情報だと、ジョラの宮殿で爆破された兵が50。集会所で焼き討ちにあった者が250。そしてルーガで我が奴隷狩りに射殺された兵が50。ざっと350だ。カザマンスに残っているジルベールの部隊はすでに600足らず。バスチアを亡くし、レノーもいない。そしてモルガン。カザマンスの精鋭はことごとくこの世から消え去っておる。奴らの部隊は統率も取れず弱体化しておるはず。警備も手薄だ。」
「しかし、サール殿。フランスからは更なる補充兵がやって参りましょう。」
「そこは、バブエお前の役目だ。もし補充がダカールに来たら、カジュの苗木を偽の許可証で国外に持ち出したフランス人がいると難癖をつけて、しばらくは留め置くんだ。一人一人尋問して時間を稼げ。」
「やれるだけは、やってみますが、その情報を私が得ているのはおかしいのではありませんか?」
「その為のヤッサ売り隔離だ。奴らから聞いた事にすれば良い。実際俺も、奴らから聞いた事だからな。若いフランス兵、あの2人の拳ひとつで事細かに吐きおったらしいからの。しかもモルガンはもう戻らん。お前の特権で自由に聞き出した事にすればな。それをフランスのあの2人の管理官に伝えれば良い。どうせ言葉も片言だ。明確に聞き出せるのはお前しかおらん。」
「なるほど。」
「ところで、お前の部族フラニにはどれくらいの奴隷狩り部隊がおる?」
「たぶんではありますが、、、ざっと200くらいでしょうか、、」
「200。我がセレールは今、奴隷狩りに出向いておる者も搔き集めれば300はおる。」
「合わせて、500。」
「カザマンス軍と大差ないな。」
「ほう。」
「カザマンスに向かうまでの道中、隠れた部族の残党を味方につけていけばジルベール部隊を上回るかもしれん。」
「襲うのですか?」
「殺らないに越した事はないが、、、武器は同じフランス製だ。」
「フランス軍を撃退して、、、ジョラの村に入ると?」
「マンディンカから西。ここまではフランス管轄下。東は二つの高山を越えねばならぬ疫病のジョラ。まさか襲ってくる者がおろうなど、ジルベールでも考えつかぬであろう?」
「本当にそのようなお考えで?」
「まっ、行ってみぬとわからん。」
「サール殿。これは聞いた話でしかありませんがぁ。マンディンカの裏手。北に面した小高い山々。そこに、ジョラに抜けるモリンガの道というものがあるそうです。あくまで伝説の道であります。ここを行き来していたこの辺りの遣使達が使っていた道らしいのですが。」
「バブエ。お前なぜそのような事を?」
「ハハッ私は植物学者ですよ!」
「では、ひとまず300。マンディンカに向かわせておこう。 陸路では時間を要するからな。手は先に打つ。」
※日本の江戸時代もそうでしたが、武士よりも商人が力を持っていた時代と似ていますね。




