静かなる内戦16〜出兵
木の葉を叩く雨の音だけが聞こえていた。
ムクドリは宮殿のカヤ葺の下で、飛び立つのをためらっていた。
『ディオマンシ様。お約束通り、集まりました。宮殿の前に出揃っております。』
『わかった。』
ディオマンシは椅子から立ち上がった。
宮殿の前には年寄り子供も含め150余りが、雨に打たれながらディオマンシを待っていた。
空はまだ暗かったが夜明けを待つばかりとなっていた。
カマラが宮殿から出て来た。
『これより東に向かう! 先頭は案内役に二ジェ。
若いものは前をあるけ!ガキは真ん中、年寄りは後ろじゃ!』
『はっ!』
皆は一斉に返事をした。
『そして、どん尻。ファル!お前がやれ。年寄り連中が逃げださぬよう見張っておけ‼︎』
『わかりました!』
『でだなぁ、ファル、ちょっとこっちに来い。』
ファルは首を傾げながら兵の列をくぐり抜け宮殿の階段の下、カマラのもとに向かった。
カマラはファルの耳元で囁いた。
『よいかファル。年寄りが倒れても放っておくんじゃ、見ぬフリをして前に進め。』
ファルはそれを聞くと元の場所にまた戻った。
『わしはわかるぞ、カマラが何を言ったか』
となりにいたこの部族最長老の爺ムルが、ファルにつぶやいた。
宮殿の板張りの扉が開いた。
『ディオマンシ様。それでは。』
カマラがディオマンシをうながした。
ディオマンシは一度両手を高々と挙げ、空を向いて目を瞑った。
『我らジョラはこれよりカザマンスを東にのぼる。
よいか!敵はこの先、密林を抜けた所におる。
敵は約50、我が兵は150。大軍勢に敵も驚くであろう‼︎ ぬかるな‼︎ 行軍の時じゃ‼︎
槍の用意はいいか!弓の用意はよいかぁ‼︎』
『さあ!ジョラの力を見せつけるのじゃ‼︎』




