奴隷の行方 18~ポルンはパーニュ?
サール達を乗せた蒸気船はルーガの沖に出た。
星空の黒い海は大西洋の荒波と共にケジャワイの浜に向かっていた。
サールは装甲の甲板に寝転ぶとその星空を眺めた。妙案が浮かんだ。
「バンジャマン殿。私から一つご提案が。」
「なんだ?」
「このカジュの木。確かに用途不明。ゴレ島に直接も、かなりの危険。ダカールに持ち込めばカザマンスの部隊がおらなくても、どこかで止められる可能性が高い。しからば、正式に輸出の手続きを取ればいかがかと。」
「そんな事が出来るのか?」
「怪しまれず、確実にフランスに送る法を考えつきました。」
「それは?」
「パーニュです。」
「パーニュ?パーニュをいかに?」
「このカジュ。いや、この先はポルンとしておきましょう。」
「当たり前だ。カジュなどと口にしてはならん。あくまでポルンだ。」
「良い所でパーニュを見つけ出したものです。今や、ロウケツ染めの生地は争奪戦。しかしオランダ軍がせしめております。フランスも手に入れ、その技術を欲しがっていると聞きます。」
「確かにな。俺は興味ないが。」
「しかしすでに、相場は決まっております。この先を考えれば、カジュの酒と比べ0が3つも4つも足りない。」
「そうだ。パーニュはどうでも良い。小遣い稼ぎ程度にしかならん。」
「では、こう致しましょう。オランダもフランスも興味があるのはこのロウケツ染め。染めの事ばかりで生地には無頓着。それぞれの部族に似たような生地はありますが、セレールの物は一級品。なぜか?それはこのポルンの蔓の繊維。これを織り、ろうけつを施せば更に価値が上がると。この木でなければこの風合いは出ない。専門家のバブエにそれを言わせてしまえば、輸出管理官達もうなづく。」
「よく考えたな。見事だ。」
「では、セレールのパーニュはポルンが原料。その繊維が糸になる事と致しましょう。」
「ほう。」
「さすれば、危険を犯さず確実にフランス本国に輸出される事でありましょう。フランスでこの風合いの生地が出来るとあらば。」
「なるほど。」
「カザマンス軍もおってダカールに戻りましょう。小奴ら奴隷狩り部隊がダカールの港でフランス軍とかち割っても、フランスの為に繊維を採りに帰っただけだと理由が付く。まっ、積み込んでしまえば雲隠れさせてしまいますが。ヤッサ売りが恨みをかっておりますし。ハハッ!」
「なんだ?ヤッサ売りとは?」
「あ、、、いや何でもありません。ちょっと、、あ、火の出る様な熱いヤッサをカザマンスの若い兵にお出しまして、その兵が舌を焦がしたらしく、、、怒られたそうで。」
(まずい、俺の舌が滑った。)
「そんな事か。」
「では、ケジャワイの浜には寄りません。木箱の梱包は堂々とダカールで。」
サールは危険を犯さず、確実にこのポルンをフランスに送り届けたかった。
それは己のこれからの為であった。
※本文中の写真
パーニュバッグ。
ユーザ様のジョルネ様がお作りになられました手作り作品です!
素晴らしい出来栄えですね!
ありがとうございました!




