奴隷の行方 11~カジュの手配
「バンジャマン殿。わかりましたよ。あの夫婦から聞き出しました。アキーの実でございます。」
『アキー!そうか!熟したアキーであろう? 青い内は猛毒だ。』
「左様であります。」
『アキーなら好都合。バブエの室で扱っているではないか!』
「軍事用の青い実は別室。食糧としてはバブエの室」
『うまく事が運ぶな。とんとん拍子だ。』
「はい。トントンと。」
『これで全て揃った。あとはカジュの積み出しだが、、』
「お任せください。なにしろそこは我らセレール族の元領地。セレールの荒くれ共を向かわせますゆえ。」
『なるほど!それも好都合! 頼んだぞ。』
「蔓の様な細くうねった木と聞きました。束ねればかなりの本数の苗木を手に入れる事が出来ましょう。」
『いかにして運ぶ?』
「大西洋の湾岸沿いを蒸気船で。数船。ケジャワイの浜まで積み出します。さすれば、ダカールの裏手。そこでアブラヤシ用の木箱に積み替えます。そのまま通関をせずに宵の内にゴレ島に直接。」
『それをフランス行きの奴隷船に乗せる。』
「バブエにはもしもの場合に備え、偽の通関の許可証を作らせております。」
『手回しが早いのう。確かにそのような得体のしれない雑木。ダカールへ持ち込む前に止められそうだわい。ハハッ!』
「バブエもそれは中々難しいと言っておりました。一応許可の証は作らせましたが、検問や検査は厳しい上、かなりの日数がかかると。もしその間に根拠の無い代物だと分かれば、当分はこの国から持ち出せない。許可証は何か事が起こった時の保険とお考え下さい。」
『よしよし、良くやった。ほれ!』
バンジャマンはズボンのポケットから札の束を取り出すと、サールの胸ポケットにギュウと捻じ込んだ。
「あとは、、バンジャマン殿。奴隷船にカジュを積み込むご用意をお願いしますよ。南米帰りの船は10日間後に到着予定です。」
『うむ。船長を丸め込むだけだ。奴らも金で動く。』
「なるほど。トントン拍子でありますな。」
『では、あの夫婦にはキッチリと餌を与えておけ。手厚くな。くれぐれも殺さぬように。ハハッ!』




