奴隷の行方 10~室の管理官バブエ
「こんなにか?」
「人を一人消す事を思えば安いもんです。」
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『サール。あの二人は元気にしておるか?』
「その部屋にいますが、ご覧になりますか?」
『いや、居れば良い。カジュが見つかればまた聞きたい事があるのだが、、ところでお前何か情報はあったか?』
「いえ、とんと。カジュを知る者はおりませんな。バンジャマン殿は何か、、? 仮置き場で色々と、、」
『ああ、大した情報はない。ただ何やらカジュの木だけでは済まぬらしい。』
「ほう。わたし思ったのですが、ダカールの室におるバブエ。奴は南米や本国に輸出する綿花やアブラヤシ、それに植物から採れる軍事用の毒を取り扱っております。奴に聞けば何か知っているかも知れません。」
『なるほど!あいつはヨーロッパ諸国が今何が必要かを研究して輸出の令をかけておる。特にこの地域の植物には詳しい。聞いてみる価値はあるな。』
「では、一度訪ねて参りましょう。」
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室。それはダカールの港、特に食糧や綿花の輸出入保管管理倉庫だ。
その二階の一室にバブエはいた。フラニ族の40半ばの男である。
『久しぶりだなバブエ。元気にしとったか。』
「おや、これは珍しい!辣腕商人お二人お揃いで。」
『ちょっとな。聞きたい事があってな。』
「ほう。何なりと。私にわかることでしたら。」
『単刀直入に聞くがな。お前カジュという木を知っておるか?』
「もちろんですとも。」
『おっ!知っておるのか!』
「カザマンスの奥地に生えておる蔓の様な木でございましょ?」
『蔓?』
「しかしあれは、この先の内陸、ルーガという乾燥地帯の村の至る所に生えて、実をつけておりますよ。生命力が強く湿地でも乾燥土でもニョキニョキと。」
『やはり詳しいな。』
「でなきゃ、この仕事は務まりませんよ。しかしあの木はどうにもならん雑木ですよ。」
(ん?こいつカジュの酒を知らんな。しめた!)
「ルーガではポルンと言っております。」
(なるほど。同じ木であったが名前が違っていたというわけか、、)
「えっ!?ああ!あのポルンか!?」
黙って聞いていたサールが口を挟んだ。
『お前知っておるのか?ポルンの木とやらを?』
「知っておりますとも!ルーガは我らセレール族の村。そんじょそこらで見かけとる木です。」
『そのルーガという村はどの辺りに?』
「あっ、地図があります。少々お待ちを。」
『サール。勘が的中したな。』
「はい。見事に。」
「はいはい、この辺りでございます。」
バブエは木製の穴だらけのテーブルの上に大きく地図を広げた。
「えっとですねぇ。北緯15°西経16° ここからですと距離にして40キロってとこですか?サール殿の方がお詳しいのでは? 確か織物工と家畜の村だった所。」
「わかった。ありがとう。バブエ。」
「お役に立てたなら幸いであります。」