[カザマンス・TheTHIRD]【第一幕】奴隷の行方 1~ゴレ島
『どこにおるんだ?その二人は。』
「それがぁ、、すでにゴレ島の収容所に。」
『ゴレ?すぐに連れ戻せ!』
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ゴレ島とは西アフリカの大西洋上沖合3kmにある南北900m、東西300mの小さい島だ。
しかしここは奴隷貿易の拠点。石造りの要塞の様な建物は奴隷の収容所。その二階が奴隷商人達の取引所となっていた。荒波の打ち寄せるこの島の岸壁に100トン~200トンもある船を横付けし、そこに奴隷達は飛び乗って船底の船室に向かうのだ。
奴隷商人はフランス人ではない。これを奴隷産業ととらえ強力に推進して来たのは利益を貪る現地のアフリカ人だ。彼らは一部の強靭な部族を雇い、近隣の諸国に攻め入っては他の部族を襲撃させ奴隷としてひっ捕らえ売却していた。
奴隷商人達はフランスから運ばれて来た武器などをこのゴレ島で奴隷を対価として交換する。調達した武器はまた新たな奴隷確保の為の襲撃にと使われるのである。
奴隷を乗せた多くの船は北南米大陸へと向かう。そこでまた奴隷を対価に綿花やタバコと交換しフランス本国に持ち帰る。いわゆる大西洋のシルクロード。三角貿易。奴隷貿易である。
奴隷という扱いを受けた事のない西アフリカの部族達は、自分たちは殺されて白人達の食用とされるのだと信じて疑わなかった。ゴレ島で競り落とされた多くの奴隷は男女問わず丸刈りにされ、その商人達それぞれの屋号を身体に焼き印された。
船底の船室は汚物と臭気が充満し、時には天然痘やマラリヤが発生した。病気にかかると死亡するまでもなく、生きたまま海へ投げ込まれた。
奴隷船の後ろにはその餌食を狙うサメの大群が常に追走していた。
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「それがぁ、奴隷商人の手にかかっておりまして、誰が誰だかさっぱりと。すでに南米大陸やフランス本国に出航している船もございまして。」
『どうにかならんのか! 奴ら商人はカジュの価値を知らんのかぁ?!』
「ただ、その二人の話を聞いた商人の焼刻印はわかります。」
『ロドルフ!なんとしてでも連れ戻せ!カジュはここより東方にしか生えておらぬのだ。ここでしか造れぬのだ!』
「船が出て行ってしまってたとすれば、、」
『行った先まで追え! 南米のモロコシ畑だろうが、我が国のワイン農園だろうが隈なく探し出すんだ!!』