フラミンガ紛争 17~檻の中の三人
「左様で。してアクラと二人でバル王に献上に参ったわけであります。」
「ガーラ殿はジョラに連れて来た赤子の事も御存じか? ンバイとマリマに届けた子じゃ。」
「知っておるよ。わしはまだ護衛部隊の下っ端だったが、話には聞いておる。今どうしておる?」
「それがファルじゃ!今のジョラの王、、あのガキじゃ!」
「は?あやつが?」
「そうじゃ。あの薄汚い小僧じゃ。」
「ということは、、、つまりはマンディンカの王がドゴン人、ジョラの王がマンディンカ人になるという事か?」
「なっ。アホらしいであろう?」
ニジェは二人の会話を黙って聞いていたが、ファルがマンディンカ人、そして自分がファルの代わりにバルの宮殿に連れて来られたという事を初めて知った。心臓は高鳴ったが、それでもジッとしていた。
「おい!ニジェ。お前は自分がドゴンの子と知っていたであろう?」
『、、、』
「知っていながらマンディンカの王になぞ。よくも抜けシャアシャアと。」
黙っていたニジェが口火を切った。
『抜けシャアシャア? 俺を王と決めたのはお前とアクラ殿であろう?! では聞くがアクラもお前もなぜ俺を王として認めたのだ? お前はあの時渋っておった。アクラは寸分の迷いもなく決めた。つまり、アクラは俺をマンディンカの王の子と認めておった。蟠りもなくマンディンカ人の子として。』
「そうじゃ、お前はいつまで経ってもドゴンの子だからな。わしは認めん。」
『それゆえの、フラミンガ族だ! 俺はドゴンもマンディンカも捨てようとしただけだ!アクラ殿はその意を汲んでくださった。お前は子供の発想だと言ったが、アクラ殿は俺の気持ちを分かってくれ承諾したのだ!』
「フラミンガじゃとぅ!!」
その話を聞いていたディオマンシは驚いた。ではパプやドンゴを射たのはお前らか?!
『なにを今更、、パプとドゴンはファルと俺。カマラも同じ!そしてそのカマラに留目を刺したのが、、このガーラだ!』
「わしはカマラなど知らぬ。たまたま射たら、ジョラの男だったのだ!」
「まっ、つまりは全てお前らマンディンカが殺ったという事だな。」
『ディオマンシ、、お前は全く脳天気なおっさんだな。カマラ、パプ、ドンゴを殺ったのはお前に不満を抱いていた己自身の部族だという事がまだわからんのか? お前はジョラに謀られた事が!』
ディオマンシは黙った。
『それよりも、有難いと思えよ。フランス軍を撤退させてくれたのは、何あろうジョラの王ファル様であるぞ!!』
ニジェはディオマンシを睨みつけ、ガーラに目をやるとそれきり押し黙った。
日が暮れて来た。
交代した監視兵が鯨油のランプを檻に翳すと、ディオマンシとガーラ、ニジェはそれぞれお互いに背を向け足を抱えて座っていた。
監視兵は檻の周りを一周した。
「大人しくしておるようだな。」