フラミンガ紛争 15~ニジェを縛れ!
ファルには王としての責務があった。
『ひとつ申さねばならん事がある。それはジョラの民を連れてカマラを撃ちに行った日の事だ。ニジェ殿は何をした? わたし達ジョラに矢を持って威嚇したな?』
「あれはフラミンガを守るため。他の部族を寄せ付けない為でありました。」
『しかし、軍同士ならいざ知らず、我がジョラには10になる子、年寄りもいた。ニジェ殿も同行しておったんだ。知っておろ?』
「、、、」
『どれだけ年寄子供を脅かした事か、どれだけの恐怖を味合わせた事か。我がジョラの民は今もってニジェ殿に恐怖感を持っておる者もいる。』
「想像に余りあります。」
『ニジェ殿と私は旧知の仲だが、今は王としてジョラを守らねばならん身。放ってはおけないのだ。これを許せば、これからのジョラに示しが使ん。よって、ジョラの決りにより刑を受けて頂く。よろしいか?』
「うっ、、」
ニジェは言葉より先に唾を飲み込んだ。
「承知致しました。身をもってお受け致します。」
『で、刑だが、、、ニジェ殿はセントヘレナ島をご存じかな? 』
「セントヘレナ!! 彼のフランス皇帝ナポレオンの流刑地!そこに?」
『いやいや、そんな所に出向いたら私達がフランスに殺される。しかも大陸から2800キロも離れている絶海の孤島。行けるはずがないわ!ハハハッ!』
「では?」
『そうだなぁ、、刑は受けてもらわねば困る。では、フラミンガの村に流刑を命じる!』
「それは刑ではない!」
『ガーラ達を乗せて来た船で流す。帆を張れば東へ向く。但し帆はボロボロであったゆえマンサ達女衆に補修してもらう。それまでは申し訳ないが、ディオマンシ、ガーラ達と同じ檻に入って頂かなければならないが、よろしいか?』
「あっ、、、はっ!甘んじてお請け致します。」
ニジェはファルの前で深々と頭を下げた。
するとファルはニジェの耳元まで歩み寄って囁いた。
『ニジェ、これはジョラの王としてなさなければならない役割。いや、勤めだ。ジョラを少しでも脅かした者はその天罰を受ける。当たり前の事だ。数日の檻の中、オレ達ジョラの兵がずっと見張りをしておる。ディオマンシやガーラと少し話でもしてみろ。敵同士が同じ穴の貉ってのも面白いだろ? それにガーラはマンディンカの護衛官として百戦錬磨だ。オレ達よりも数倍の経験がある。何か聞けるかも知れんしな。新たな発見でも。』
「面白い。」
『なっ。』
「その刑、謹んでお請け致します。」
『では。おい!ハラ!ドルン!小奴を引っちばれ!! 牢獄の檻にぶち込め!!』
ニジェは思った。
(素晴らしき王。ファル)




