フラミンガ紛争 13~ニジェを乗せた小屋
ファルは自らニジェの救出に向かった。
『ハラ!マンサ!ガーラ達を見張っていてくれ。ドルンは連れて行く!』
「俺たちも連れて行ってくれ!ニジェ様を見つけ出したい!」
フラミンガ兵も名乗り上げた。
『では、ジョラ20.フラミンガ10で向かおう!』
ファルの率いて来た兵のブビンガの丸太は、そのまま沼付近の岸辺に横たわっていた。
急場しのぎの合軍はそれに跨るとニジェが閉じ込められているであろう小屋を追って、下流へと向かった。
すでに月夜の宵。
ポロロカの引き波は陸地の温かい空気を吸い込み、水面一帯に広大な靄を生み出していた。
バシャバシャ!
ザッブウぅ~ン!
『よく見えんな。音を聞け。音で嗅ぎ分けろ!』
「音を嗅ぎ分ける?」
『音にも匂いがあるんだ!ドルン!よく嗅げぇ!』
「しッかし、この丸太。俺のじゃないから要領が掴めん。」
ドルンの丸太は小屋の床柱の体当たりでその場に乗り捨てた。乗っているのは他の兵のブビンガだ。
『おらん。』
「ファル様。真ん中の高い葦の向こう側に行ってしまったかもしれませんね。」
ドルンは丸太の上にうつ伏せになると両手でバシャバシャと漕ぎだした。
30の兵は皆それを真似、スピードを上げた。
すると、月の光に照らされた葦の靄の中にポッカリと、ジョラの祭り旗がハタハタと揺らめいていた。
「あれ?あの旗。俺のブビンガだ。丸太に掲げた旗、、、」
『あっその向こうだ!』
ファルが声を上げた。
そこには少し斜めに傾いた小屋らしき物が、ゆっくりと上下に揺れながら下流へと流れていた。
『あれだ!急ごう!』
「あの旗、小屋と並走してる!?」
『誰か乗っているのか?』
「アゾだ!!」
フラミンガの兵が大声で叫んだ。
『誰だ?それは?』
「ニジェ様と火薬庫を一緒に覗きに行った者です!それがアゾ!」
『では、そのアゾとやらが追走しておるのか?』
「一緒に行ったワリは裏切って先ほど縛っちまったから、アゾに間違いない!」
『敵か?味方か?』
「ファル様!なにをおっしゃいます! アゾは味方でございます!!」
一人のフラミンガ兵が丸太を漕ぎながら力強い声を張った。
『わかった!!よっしゃ! 追うぞ!小屋を追え~!』
ーーーーーーー
(よっコラショと。出た出た。満月じゃん。)
『あっ!ドルン!見ろ!小屋の上!屋根の上!』
(ん?なんだなんだ?この水軍は?)
「あ~~~~!ニジェだ!」
葦吹きの屋根を引き千切ってポコリと頭を出したのは、まさしくニジェ王であった。
『おーい!ニジェ~!大丈夫かぁぁぁ!?』
「おう!その声は!ファル!」
『生きておったか~!』
「たんこぶくらいで済んだわい~!」
神々しく星の瞬く満天の夜空。ネプチューヌ様のお帰りと時を同じくして、ニジェを乗せた小屋もゆっくりと下流へと引いて行った。




