フラミンガ紛争 10~浮かんだ小屋
※ここからはニジェの軍をフラミンガ軍。ガーラの軍をマンディンカ軍といたします。
掛け声を上げていたのはドルンであった。
葦から出て来たのは20数基。その一基一基が高床の太い柱目掛けて体当たりを始めた。
ゴ~ン!ゴン!ゴ~ン!!
「何者だ!!」
「上手から来てるぞう!」
「本物のフラミンガかぁ!?」
しかしワリにはその仮面に見覚えがあった。
(三日月の目と口。モロコシの髭。確かフランス軍とジョラの村を家探ししていた時に数軒の家の軒先に飾りつけられてあった奇妙な仮面だ。)
体当たりを受けた小屋は大きくグラグラと揺れ出した。
「ジョラだあ!!ジョラの仮面だぁ!」
ワリが叫んだ。
「なにぃ!ジョラだとぅ?なぜ上流から来るんだぁ?!」
シダの草むらに逃げ込んでその様子を窺っていたガーラ率いる20余兵は、一目散に逃げ出した。
(ジョラ?)
捕らわれていたアゾが立ち上がりジョラに向けて大声で叫んだ。
「中にニジェがいる~!!」
『えっ!ニジェがぁ!』
ドルンはブビンガに跨った兵にストップをかけた。
しかし、すでに裂け目の入っていた高床の柱は大きく左右に揺れ出すと、水の流れにも耐えきれず体当たりした水面の辺りでバキッと折れた。
グ~ラグぅ~ラ、、、ドッッスぅ~ン!!
ポロロカさながらの波しぶきを吹き上げると、足元を掬われた小屋は倒れるまでもなくその水面にバシャと浮かんだ。
高床で組んであった床のブビンガがこの小屋を見事に浮かしてしまったのである。
水流は見る間に量を増しどんどんと流れを速くしていった。
床下の柱だけを失くした土壁の小屋はユラユラとその流れに乗り、少しずつ下流に流されていった。
『追ッえ~!!ガーラを追え~!!』
またしても声を上げたのはドルンであった。
『一匹たりとも逃すなぁ~!!』
アゾにかまっていられなかったマンディンカの兵はその繋がれていた縄を途中で放り出して逃げた。
逃れたアゾは縄を引きずりながらユラユラと流されて行く弾薬の小屋を追った。
(ニジェ様~!無事でいてくれ~!)
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『ひゃひゃひゃひゃッほ~い!』
『もう爆薬はないぞ~!!弓の勝負だ!!構えろ!追えッ!追ッえ~!』
ブビンガの丸太から飛び降りたジョラの兵は、水に浸かったシダの草むらを掻き分け、逃げたマンディンカを疾風の如く追った。
バシャ!バシャ!バシャ!
『追っえ~!』




