フラミンガ紛争 9~弾薬庫をぶっ潰せ!
『ではマタ。永遠のおさらばじゃ。』
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緩やかになったカザマンス川の潮流はフラミンガの村の先でその流れを止めた。
そして流れは折り返しの波にと徐々に変わっていった。
引き返しの波は少しずつではあるが勢いを増し、辺り一帯を扇状に裾を広げながら、水かさを上げていった。
ヒタヒタヒタ
(来い!来い!ネプチューヌ様のお帰りだ!)
陸地にまで広がった川の流れは、三艘の船まで辿り着くとその巨体をフワと浮かせた。
(良し!計算通りだ!浮け!浮け!流れろ!)
ハラは落ちていた枯れ木の残骸から拾い出してあった、背丈ほどの太い棒切れを手に持つと一艘の船に飛び乗った。それは自然のオール。浅瀬には持って来いだ。
『舵を切るぞー!』
ハラは船頭に立つと右の水面をドンと突いた。
ギュギュギュィ~
船はゆっくりと左に旋回し、小屋の斜め正面を向いた。すると残りの二艘もクルリと左を向いた。
(千切れるなよー!葦の縄!)
三艘はハラ手作りの縄で繋がれていたのだ。
(あとは川の流れに逆らわずだ。ゆけ!ゆけ!行け~!)
キュィギュィユラユラ
ヒタヒタ
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『なんだ!川の水が足元まできているぞ!』
表にいたガーラの手下達がようやくそれに気づいた。
その時だった。
葦の間から、一艘の瓦礫を積んだ船が現れた。
『おい!船が浮いとるぞ! 誰か乗っておるぞ!こちらに向かって来るぅ!!』
グイグイと小屋に向かって来るその船は、小屋を支えていた4本の太い高床柱の1本に激突した。
ゴン!!グ~ラ~
ハラは縄で繋いであった二艘目の船に飛び移ると舵を左に切り換え2本目の柱に、三艘目の船に飛び乗ると、そのまま3本目の柱目掛けて体当たりした。
『おい!何事だ!』
ガーラが表に飛び出して来た。
『この音はなんだ!床下が水浸しではないか!』
「船が床柱に激突いたしまして!」
「誰か乗っておったようであります!」
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(亀裂だけか、、やはり、これごときでは崩れぬかぁ、、)
ハラは悔しがったが、手は打ってあった。
ドドンドドンドン♪ドドンドン♪
「ん?なんだこの太鼓の音は?!」
「なんだ!?なんだぁ?!」
20のフラミンガ兵は左右を見渡した。
「どこだ?」
橙から紫に変わる夕間詰。ネプチューヌの引き返しの流れは更にその力を増していった。
『ひゃほ~い!!』
『ほ~い!』
っドっドっドドドドン♪~ ドドドドン♪~
太鼓の音は葦の林をザワザワと揺らした。
その波間からブビンガの丸太に跨った一団が、川の流れに乗って次々と現れた。
モロコシの髭の仮面。煌びやかな衣装のそれだ!
ドッドドンドン♪
『ブビンガレースだあ! お祭りだぁ!!』
『ゆっけ~!! このまま柱に突っ込め~!!』
『馬ごと体当たりだあ!! 弾薬庫をぶっ潰せ~!!』




