フラミンガ紛争 5~ムルとディオマンシ[経緯(いきさつ)]
『おやおや、ディオマンシ殿。ご機嫌はいかがかな?』
『フン!』
『鶏の肉を持ってまいりましたぞ。今日は祭りじゃ。』
『おー! 祭りか!ムル~!くれ!くれ~!』
突然の御馳走に檻の中のディオマンシは柵を掴んで悲鳴を上げた。
『ファル達は今、ニジェを助けにフラミンガの村に行っておる。わしがお前の見張りを頼まれての、久しぶりに昔話でもしようかと。ほれ!』
ムルは柵からディオマンシに鶏肉を放った。
ガブ!ムシャムシャ!たまらん!うまい!
ディオマンシはムルに背を向けかぶりついた。
『でな、お前に聞きたい事があっての。』
『フン、なんだ?』ムシャムシャ!
『お前、ンバイとマリマをどうした?殺ったのか?』
『グリオか?ファルの。』
『そうじゃ。』
『、、、送り返したわ。マンディンカに。』
『ん?はて?送り返したとは?』
『マンディンカ人だからだ。それがどうした?』
『は?マンディンカ?おいおい、詳しく聞かせてくれ!』
『聞きたいなら、肉をくれ!そこにまだ残っておるであろう!』
『ほれ!』
『ああ、ンバイの両親つまりはファルの爺さんじゃ。わしらジョラ族にグリオの教えを伝えにマンディンカから来た、いわば宣教師だ。しかし居心地が良かったのかそのままジョラに定住したんじゃ。でなンバイの嫁、つまりはマリマじゃ。マリマはマンディンカから連れて来られた嫁じゃ。』
『初耳じゃ!』
『そうじゃ、お前は長年、家から一歩も出ず、祈祷ばかりしておったからな。ハハッ!』
『しかしな。二人には子が出来んかった。』
『ファルがおるではないか?』
『ああ、あいつはマンディンカから連れて来られた赤子じゃ。わしはそんなこと興味がなくてな。パプやドンゴが連れて来るまで、顔すら知らんかった。まさか、あんなに薄汚いガキとは、、』
『何を言うておる!お前がンバイとファルを引き離したから薄汚くなったんじゃろうが!全くぅ、、 で誰がその赤子を連れて来たんじゃ?』
『お前も知っておるじゃろ?遣使のアクラじゃ。二人に子が出来ぬ事を聞いて、、血を絶やしたくなかったそうじゃ。揺り篭に乗せて来おった。 おい、もっとくれ。その肉。』
『おう、やるやる。ほれ!』
『その赤子は誰の子じゃっ?』
『確かぁ、、バル王の、、第6夫人の子だとか、、ンバイの親は元々王族の末裔らしくてな。第6夫人の子で落ち着いたらしい。』
『しかしな。』
『しかし? ほれ!もっとやる!食べろ!』
『その後5年くらい、その夫人に子が出来なかったそうでな。寂しくてよそから養子をもらったそうじゃ。その頃はまさかこんな事になるとは思っていなかったから、みーんなアクラが話してくれおったわい。』
『で、どうしたんじゃ?』
『同じ部族の子を引き裂くのは嫌だったんであろうな、、お前知っておるか? ドゴン族。』
『おー、知っておる。知っておる!マンディンカの支配下ではあるが狩猟の民。言霊の木を操るというドゴンの事であろ?』
『で、その第6夫人の立っての願いで、ジョラに連れて行かれた我が子と同い年の子をな、、』
『養子に向かえたと。』
『まあ、そう言う事だ。ほれ、もっとくれ!まだあるだろ。肉だよ。肉!』
『おうおう、いくらでも食え。好きなだけ。}
ガブ!ムシャムシャ!
『ん~美味い!』
『その話、まだ聞かせてくれ。』
『わしはもうこんな身だ。いくらでも話してやるぞ。出直してもっと肉を持ってまいれ!』