フラミンガ紛争 4~三艘の船・土壁の小屋
ハラは全てを見ていた。
(やっぱりか)
縄を解かれたガーラはあの時の兵とシダの草むらに隠れる様して東へ向かった。
(追うぞ。)
ハラは暗闇の中、棘が刺さろうがヒルが吸いつこうが音を立てぬよう、二人の足音だけを頼りに後を追った。
(河原の方に向かうな。どこに行くんだ?)
しばらく追うと二人は一軒の小屋の前で、辺りを見回した。
(なぜ、ここなんだ?)
すると、草葉の陰から一人、また一人と黒い空気に揺らめいた蜃気楼の様に兵らしき者が現れた。
(奴らはガーラの手下か? ざっと20)
トゥーカンがギャと鳴いて夜明けを報せた。
東の空が雲間から少し赤く染まった。
(変な空だ。)
コツンッ!
(痛ッ!なんだこれは?)
シダの茂みに隠れていたのは三艘の船であった。
(あれ?なぜここに? ドルンは下りにしか使えないと言っていたが、、新しく作った船にしては無造作に横たわっている。)
ハラは腰を屈めながら三艘の船の周りを見渡した。
(ん?この船頭に掛かっている大きな布切れ、、なんだ?、、、ん?帆布じゃないか?帆だ!)
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赤に染まり出した空は、その小屋をハラの目に鮮明に映し出した。
それは高床式ではあるが黒光りした乾燥土のブロックで造られていた。この湿地の住居とは明らかに違う小屋であった。
(なぜあの土がある?なにがあるんだ?あの中に?)
ハラは船を背もたれにしばし考えた。
(もしや、あの黒光りは、、煤? フランスとの闘いで燃えた宮殿と集会所の残骸か? そしてこの船。これで瓦礫をブロックにして運び込んだのか? 帆があれば風で逆流でも前に進む。軽い船ならいざ知らず、このブロックを積んでくれば重みで安定して帆の向くままに進む、、これはドルンが乗った船だ! 間違いない。下るだけなら帆は使わない。ドルンは気づかなかったんだ。帆を積んでいることに。)
フラミンガの兵は弓矢を背中に、その小屋を守るように詰めている。
(船に積んで来たのはブロックだけではないな。たぶんあの時残してあっただろう弾薬だ。それがこの小屋の中にある。)
ハラはそう読んだ。
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(しかし、なんだこの空は? 何か起こるのか?)
ハラはまた少し考えた。
(あれ?今日はジョラの祭りじゃなかったか?、、ってことはぁ、、海嘯だ!ポロロカだ!)
( 来る!ジョラは来る!ファル王は気づいておられるはず!このチャンスを逃すはずがない!ファル王はきっと来る! )




