フラミンガ紛争 2~部族の血
『そうだ。わしはいつもお前の近くで見張っておった。』
兵が穴を掘っている間もガーラへの尋問は続いていた。
『狼煙を上げればすぐに駆けつけたであろう? 常にそこにおったのだ。あの言霊の木も知っておる。あの時わしが手を下す事もなく、パプとドンゴとかいう輩がお前を殺ると思ったんだが、影を相手に話をしておったなぞと抜かしおって、、上手くかわしたな。わしはずっと見ておったんじゃ。』
「ニジェ様!ちょっと来て頂いてよろしいでしょうか?」
『どうした?』
二人の兵が現れた。
「そのう、、穴が掘れませぬ。掘れば掘るほど水が溜まり、至る所に木の根が張っておりまして。」
『そうか、今行く。お前らどちらか、ガーラを張っておけ。』
「では、私が張りましょう。」
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月の光も通さぬその場所には、まだ浅く掬っただけの水溜まりがあった。
『なるほど。』
「これでは、たとえ穴を掘り下げたとしても雨季の時期。更なる水が溜まり穴の牢獄どころか、単なる水責めの刑ということに、、」
『うむ。』
「しかし、ニジェ様。あれほどの事をしでかしたガーラを生かす必要がおありなのですか?」
『ああ、ガーラはカザマンスで生き延びた同じマンディンカ人。同じフラミンガ族だ。いくら罪を犯したとはいえ数少ない血族だ。ジョラを含め残されたカザマンスの民はわずか。それを俺の手で血に染めるわけにはいかん。王になった時の俺の決め事だ。
目には目までに、歯には歯までだ。 ナシャは一歩間違えれば死するところであったが、生きておる。
ガーラには生きて罪を償ってもらう。ハラとドルンに聞いたがジョラの王ファルも同じ考え。あの殺戮者ディオマンシをジョラの村に連れて帰ったそうだ。生きて償わせる為にな。 まっ、捕らえてしまえばこちらの身に危険もなかろう?』
「、、、ニジェ様。あなた様は、ほんに王としてふさわしい。」
『では檻を造ろう。それまではガーラに見張りをつけて縛っておく。穴は取りやめだ。』
「では、明日、日の出とともに取り掛かりましょう。」
『俺の不徳だったな。まだまだこの地を知らん。』
ザッ!ザッザッ!ザッ
「二!、二!、ニジェ様あぁ!! ガーラが消えましたぁ!!」
『えっ!?』
「見張り役のザビも見当たりません!!」
『なんだってぇ!?』




