【第二幕】フラミンガ紛争 1
『ドルン。なぜ明日が祀りか知っておろ? 月を見たか?』
『ん、、、あッ!明日は海嘯!』
『南米に連れて行かれた奴隷達の間ではポロロカと言われているらしい。』
『ポロロッ?』
『そうだ。我が村とは無縁の、海の神ネプチューヌ様がわざわざこんな密林の奥深くまでお越しになる日だ。』
『カザマンス川の逆流!』
『そう!お前がフラミンガから戻って来たように、丸太に跨ってその波に乗ればあっという間にニジェのいるフラミンガの村だ。』
『なるほど!!』
『それから、もう一つ。この宮殿の西の床下。物見の下にある部屋。ギザが結縄を引っ張った部屋。』
『それが何か?』
『そこにもう一つ隠し部屋があった。ちょっと来てくれ。』
二人は物見の部屋まで行くとその床下の穴倉に飛び下りた。
トントン!
『ほら、壁の音が違う。』
『ほう。』
『根掘り葉掘り聞いたら、吐いた。ディオマンシ。』
『そういえばあのおっさんは?』
『檻の中で、ヒヒの様に毎日餌を欲しがっている。餌をやれば何でも吐く。』
ファルは壁を強く抑えた。
クルりん!グルグルぅぅ
『ほれ、よく考えたものだ。回転する。』
『ほ~う。』
『薄暗いが中に入ってみろ。目が覚めるぞ。』
『んん!なんです?これは?見たこともない色鮮やかな衣装!!』
『なっ。金銀、紫、赤に青。アフリカ中の獣の毛、鳥の羽や虫の甲羅を紡ぎ、それに色とりどりの水晶を埋め込んだ物だ。』
『こんなに!』
『数えたら50もあった。カサ王国やマリ帝国、はたまたマンディンカからの貢ぎ物らしい。』
『あのおっさん、俺たちに内緒でこんな事までしていたんか!』
『だな。で、明日は祭りだ。お出かけするにはこれが良いと思ってな。』
『は?これを着て丸太に跨る?』
『武器庫に入ってる我々の衣装は茶っぽくていかん。どうせゆくならな。』
『しかし、もし事が起きたらこんな衣装で身動き取れますか?もしかしたら奴らはフランスからせしめた銃を持っているかもしれませんよ?』
『祭り用のブビンガの仮面をかぶってゆく。盾にもなるぞブビンガなら。ついでにジャンベとサバールも持ち出せ!』
『楽器も?』
『祭りだからな。歌はグリオのオレにまかせろ!ハハッ!』
『歌?』
『ではドルン!兵の皆に伝えてくれ!ニジェに祭りを見せにゆくと!今日中に丸太を切り出せ!
そして、明日の夕。ポロロカの神の到来と共にその流れに乗る!!急げ!』
『はっ。承知!』
※ジャンベ・西アフリカ旧マリ帝国で一番ポピュラーな太鼓
※サバール・セネガルの民族楽器。手とスティック叩く太鼓
※ポロロッカ・アマゾン川を逆流する潮流。高さ5m以上の高波。潮の干満によって起き(満月と新月の時は干満の差が大きく)雨季の時期は更に大きな高波となり、時速65キロで800キロの内陸にまで遡る。日本名で海嘯




