フラミンガ事件 12~赤い馬に乗ったドルンと水路のムクロジ(挿絵有り)
童晶自筆画
ドルンはジョラの村へと続く浅瀬の川伝いを歩いていたが、雨季ということもあり幾分増水していた。
(やっかいだなあ。あのニジェ達の船があればなあ、、)
と、ドルンはブビンガの丸太の倒木に躓いた。フラミンガが高床の家を建てるために切り出した残り物だ。
(おっ、こりゃいい!)
ドルンはその丸太を岸まで引っ張り出すと、馬乗りになって跨り浅瀬を両足で蹴りながら川中に進んだ。
丸太はドルンを乗せて波に乗った。
『よっしゃー!! はいよ~!ドウ!ドウ!』
木々の葉が溶け込んだビリジャンの夜に、満月の黄色い月。そこにブビンガの赤い馬が薄っすらと河面を彩った。
川面の波に上下動するその様はまるでスピードの切り替えを間違えた夜のメリーゴーラウンドの様であった。
『ヒャッホ~イ~!』
その丸太の赤い馬は翌日の朝にはジョラの村に入った。
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『ファルさま~! ファル様~!』
『おー!ドルン!帰ったか! えらく早いなあ?』
『馬に乗って帰って参りましたので。ハハッ!』
『ウマ?なんだそりゃ?ところでハラは?』
『ハラは、、、あれ?ファル様。何をしておるんです?』
『おうおう、これな。ほら、明日は祭りだろ? ハラとドルンにはフラミンガに行かせて申しわけなかったが、皆楽しみにしておるから。でな、裏のディオマンシの倉庫に武器と一緒にな。祭りの仮面やら衣装やら沢山あってな。それを取り出そうとしたら、、、オレが畑に引き込んだ武器庫の裏の水路に、ほれ、こんなに。』
ドルンがその水路を覗き込むとムクロジの殻がたわわに詰まり、畑にまで水の泡が溢れていた。
『どこから流れてきたんだか。殻ばかり。中身はない。』
ドルンは笑った。
『これはきっと、ニジェ達の女衆が剥いたムクロジの殻ですよ。』
『あの、身体を洗うやつか?』
『そうです。そうです。しッかし早いなあ。もうここまで来てるなんて。』
『まあ良い上がれ。話を聞こう。カマラの事を聞きたい。』
二人は宮殿に入ると板の間に座った。
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『カマラは生きておりました。が、しかし、それよりも、、、』
ドルンは事の顛末を事細かにファルに話した。
『では、ハラはまだフラミンガの村にいるという事だな?』
『すぐにでも事が起きそうな気がいたします。』
ファルは腕を組んで頭を捻った。
小窓から朝日が差し込み、ファルの目の前をサッと照らした。
『では、、、祭りはフラミンガの村で行う事とするか?』
『それがよろしいかと。』




