フラミンガ事件 8~ムクロジの殻3
翌日は朝から雲一つない晴天に恵まれた。
絶好の捜索日和であったが、フラミンガの民は皆夜通しの犯人探しに疲れ切っていた。
『今日は半日ゆっくり休もう。皆に倒れられても困るし、少し英気を養ってから。』
ニジェが言うと、皆はもうひと眠りと決め込んだ。
女衆はムクロジを麻袋からドサと茣蓙に広げるとまた殻を剥き始めた。
『おいおい、この殻。川に捨てるでないぞ!』
「あらま、ガーラ殿!見られておりましたか?」
『見てはおらんが、川に流れていたからお前らの仕業だなと。』
「しかしニジェ様がそれでよいと、、」
『ニジェ様が?そうか、そう言ったのなら、、まあ良いわ。好きにせい。』
日が西に傾き少し涼やかな風が吹き始めた頃、ニジェが男衆に声を掛けた。
『そろそろ出かけるぞ!支度をせい!』
「えっ、これからでございますか?すぐに日が暮れてしまいますぞ。」
若い兵がニジェに尋ねた。
『良いから、良いから。早く支度をせい。』
兵は4、5人で一つの班を作り、密林の奥深く四方八方へと散って行った。
『ガーラ。俺たちはナシャが襲われた場所に行くぞ。』
「ニジェ様、お言葉を返す様でありますが、あそこはもう何度も見て参りました。それにあそこに犯人が舞い戻るとはとても思えませぬが、、」
『いいんだ。いいんだ。』
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ニジェとガーラは若い屈強な兵3人を引き連れ河原の岸まで来ると、ナシャが襲われた向こう岸を目指し、葦の切れ目をジャブジャブと潜って行った。
船着き場を腰の辺りまで浸かりながら向こう岸に着くと、ニジェは振り向いて、その岸辺に座り込んだ。
「どうされました?ニジェ様。早くしないと日が暮れますぞ。」
『良いから。良いから。お前らもここに座れ。休憩だ。』
ニジェは渡って来た川の高い葦の切れ目から、少しだけ見える向こう岸を眺めた。
すると昨夕同様、足元の葦の間からウゴウゴプカプカとオレンジの夕に照らされたムクロジの殻が湧き出て来た。
それは船着き場の水面をまたしても勢いよく横切って下流の葦の中へと消えて行った。
「また、あいつら!流しおって!」
『いいんだ。いいんだ。俺が許可した。』
「、、、、ならよろしいのですが、、」
『それよりも、ガーラ。』
「なんです?」
『見たんだな。これを。』




