静かなる内戦11~ニジェ
フラミンガはすでに別の場所に舞い降りたようだった。
葦の湿地に静寂がもどった。
ニジェは両手をついてゆっくり起き上がると、自分の背中を抱えるようにして倒れ込んでいたパプをサッと払いのけた。
ドサッ‼ パシャン‼
パプはうつ伏せに、顔から湿地の水に崩れ落ちた。
ニジェは背負籠を下すとパプの両肩を足で抑えつけ、仁王立ちに跨った。
そしてパプの背中深く突き刺さった矢を、力いっぱい引き抜いた。
ドゥボッ
鈍い音とともに返り血を浴びた。
パプに刺さった矢を引き抜くと、今度は仰向けのドンゴの上に跨った。
ズゥボッ
また鈍い音とともに矢は引き抜かれた。
辺りの水は滲むように真っ赤に染まっていった。
二人は息途絶えていた。
ニジェはその二本の矢を、左手に束ねるように持つと、刃先を水面に浸け、右手で念入りに洗い流した。
洗い終わると、背負籠の石を一つ残らず捨て、
バオバブの実だけになった籠に、その二本の矢を突き刺した。
ニジェはその籠をもう一度背負うと二人には眼もくれず、
ジャブジャブと水の音をさせながら、もと来た道を戻って行った。
さっきまでの靄はとうに晴れ、壮大な葦の草原が広がっていた。
ニジェは倒れている彼らの方を、一度も振り返ることは無く歩を進めた。
※本文中の挿絵はバックが童晶。フラミンゴの折り紙がLibra様です。
私の絵に、折りフラミンゴを添えて撮影して頂いたものです。