フラミンガ事件 2~ナシャの証言
ナシャの土籠が割れたのは、フラミンガの民達が三艘の船を造った船着き場近くの河原であった。
『ナシャ、背中痛いな。痛い所すまぬが教えてくれ。』
『いいよ。けど、あんまり覚えてない。』
ニジェ達フラミンガの家は家というには程遠い、その辺りに落ちている倒木や蔓で組んだだけの代物で、その組んだ上の屋根は草や葉を乗せただけの粗末な物。少しの雨ならかろうじて防げるくらいのものだ。
彼らは濡れる事に関しては、いささかの臆する事もない。太陽の日差しも雨の粒も同じ天から降る物。傘で除ける事自体が、神に背く行為だと思っているのだ。
もちろんその造りは湿地と獣の侵入を避ける為、ジョラと同様の高床だ。ナシャの家も同じだった。
『もう少しで水のとこ。大きな男が走って来た。こっちに。ザッザッザッて。』
『それは誰? 知ってる? 見たことある男?』
『ないよ。はじめて見る顔。』
『んん、それが、カマラか、、?』
ニジェはナシャの言葉に聞き入った。
『したら、パリンッと割れた。頭の上。土籠。』
『ほう。なぜ? それは矢? 石?』
『わからないよ。そしたら、その大きな男があたしを抱えて川に。走ってジャブジャブ渡った。』
「あの辺りには矢は落ちておりませんでしたが。」
ガーラは河原の周辺を洗いざらい探したが、土籠を砕いた武器となる様な物は見つからなかった旨をニジェに伝えた。
『土籠を撃った矢がそのまま川に飛び込み流されたか、、石だとしたらそれはもう河原の石と化してわかるまい。』
「しかし、カマラに矢を射たという事は他にも誰か、、いたはず。」
『確かに。そいつは、ナシャを狙ったのか、カマラを狙ったのか?、、』
「そいつはと言いますが、一人とは限りませぬぞ。」
『そうだな。』
「今夜は気をつけねばなりませんな。」
『それぞれの家に居ったんじゃ、見張れぬし危険かもしれん。』
「では、皆を集めて一所に。」
『そうしてくれ。そうすれば近寄れぬであろう。相手は多勢ではないはず。』
『あたしも行くの?』
『ああ、ナシャは怪我をしているから、俺がおんぶしてやるから。』
『なら、ゆく。』
「ニジェ様。ナシャを抱えて行くなら、私が。」
横に付き添って話を聞いていたナシャの母親が言った。
『いや、これは王としての俺の責任だ。ナシャは俺が背負う。』
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「しかし、これはいったい、、」
ニジェとガーラはナシャの家で座り込んで考えあぐねた。
『フランス軍なぞ、この場所は知らんしな。』
「知っておるのは、、」
『、、ジョラだけだ、、、』




