火蓋の上下 41~麓の二人
レノーはあの時言ったのだ。
「食糧も武器も全て使いなさい。君たちの自由だ」と。
麻の袋の中身はレンズ豆ではない。フランス軍自身の弾薬と実弾だ。
小さな小窓一つ開いただけの密閉された部屋、悶々と立ち昇る熱気。高温で炒ったレンズ豆は弾薬の上っ面だけだ。
その袋は松明の火と、弓矢の炎によって、硝酸ナトリウムと共に大爆発を起こしたのだった。
レノーの置き土産は、豪の雨の如き暗煙を夜空に登らせた。
フラミンガの兵は想像を遥かに越えた爆発に、耳を押さえ、ただただ弾薬が切れるのを待つだけだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『おい、麓で綺麗な火の手が上がっているな。』
『グリオの集会所の辺りでありましょうか?』
『こんな炎は未だ見た事がない、、』
『太陽の光の様でありますな。』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ドッゴ~ン!! ババッ~ン! DOOOOON‼
『ワリ、奴はどこに逃げた?』
『山の方へ逃げたが、、わからん。』
『逃がしても大丈夫なのか?』
『ほっとけ! どうせ一人じゃ生きられん奴だし。』
『フランスに見つかったら、、お前が罰を喰らうぞ。』
『ふふん、これじゃあフランス軍だって全滅だよ!』
虹色の爆発の光は、ワリとアゾの顔を交互に照らし出し、お互いの表情を読み取れるほどであった。
太ったジョラの王は、繋がれたロープを解くこともなく、塀兵の程で、来た山の麓に向かっていた。
『わしゃ、ジョラに戻るぞ、戻る!』
スタコラと東へ走ったが、途中誰も追っては来ぬかと後ろを振り返った。
『あっ!おいおい!!あっあっ!』
そのロープに、爆風で飛んできた火の粉が付いていたのにようやく気づいた。
『来るな!来るな!こっちに来るな!消えぬか!消えぬか!』
王は裸足の足でロープを追いかけ回した。
その様は、ネズミがグルグルと自分のしっぽを追いかける程であった。
『何をやっておる?』
その肥えたネズミは、ジョラの言の葉に驚いて首をチョコンと上げた。
そこには、見知った男2人が弓矢を背中に、虹色の爆光を受けながら笑いながら立っていた。
『何をやっておる? ディオマンシよ。』




