火蓋の上下 40~木っ端微塵
ニジェとガーラは矢を放つと、すぐさまグリオの倉に逃げ込んだ。
それは逃げ込むというより爆破の風圧に、なすがまま押されて飛び込んだと言った方がふさわしかった。
鼓膜が破れるほどの爆音にニジェとガーラは両手で耳を塞いだ。
逃げたフランス兵を射る準備をしていたフラミンガの兵達も、予想外の爆発に裏の林の奥深くまで逃げ込んだ。
集会所の葺いた屋根も、倉の屋根も粉塵と化し、まるで扇形に打ち上がる花火のように夜空に舞いあがった。
爆風は、集会所を取り囲んでいたフランス兵達も吹き飛ばし、軍服を着た焼魚の山を築いた。
それは、あの宮殿で仕掛けたムルの麻袋の比ではなかった。
ズゴゴゴゴ~ン!
ドスッ~ン!! Beababababa~ン!
集会所は木端微塵に崩れ落ち、乾いた土の粉塵を雪崩れにした。
中にいたフランス兵は一瞬にしてその瓦礫の下に埋まった。
走って離れたアゾだったが、風圧は遥か先にその体を運ばせた。
『痛ててて。』
転んだアゾの足元には4本の褐色の足が立っていた。
炎で真昼の様に明るくなった空気は、その色、その顔さえ明確にした。
『あれ!?ワリ!』
『あっ!アゾ!!』
『ワリ! 今だ! 逃げろ!! 』
ワリは捕虜を繋いだロープから手を離すとアゾを抱き上げ、近くの林に逃げ込んだ。
取り残された太った捕虜はキョロキョロと辺りを見回して、元来た山の方へスタコラと逃げて行った。
『大丈夫か?アゾ。なにが起きたんだ?』
『安心しろ。我らマンディンカの仕掛けだ。』
『マンディンカぁ? 誰が?!』
『マタ、、いや、ニジェ王だ。』
『誰だ、それは?』
『会えばわかる。それより、今の太ったのは?』
『、、、ジョラの王だ。』
ドッカカぁ~ン!
『あっ!わああぁ!また爆発したぁ!』
集会所は何度も爆発を繰り返しながら、メラメラと天高くまで炎を登らせた。
黒煙は青い月を覆ったが、グリオのここは赤、青、黄と色とりどりの虹色の光を放った。
『いつまで続くんだ!この爆発は?!』
『えっ?!ニジェ様、今なんて?』
『こんなにも凄いとは、、』
『なんですって?』
爆音に耳を塞いでいたニジェとガーラには、お互いの言葉が聞き取れず、それきり押し黙った。
(レノー殿の置き土産、、これほどとは、、、)




