静かなる内戦10~ニジェ
ニジェを先頭にパプ、ドンゴと続いた。
辺りは密林の川沿いと違い、物音ひとつしない。
三人は足首まで浸かる水にことさら気を配った。
『カジュの木まであとどのくらいだ?』パプが小声でニジェに聞いた。
背の高いニジェは、ヒョイと靄の上に頭を上げた。
『あと、1000ってとこであります。』
『1000歩?』
『ファルはあの木の辺りで人を見たのですか?』
『らしいな』
『人の気配はしないが慎重に。』パプが言うと
ドンゴは
『おらんおらん、人などおらん。』と答えた。
『あと20。』
ニジェはフキのウチワを扇ぎながら後ろの二人に伝えた。
『もう少しであります。』
彼らの後ろは尾を引くように靄がキレていた。
『(来た)』
バッッシャヤャー‼
ニジェは何につまづいたのか、水しぶきとともに前のめりに倒れ転んでしまった。
すると、どこにいたのか、潜んでいた水鳥がその音とともに一斉に舞い上がった。
数千羽の水鳥は、空を一瞬にしてピンクに染めた。
『フラミンガだ、、』ドンゴがつぶやいた。
『ばかッ!なにをやってるんだ!慎重にと言っただろう!』
パプがニジェを抱え起こそうとかがんだその時だった。
フラミンガの羽ばたきが合図だったように、
シュルㇽー‼
『あッ』
一本の矢がパプの背中を胸元まで射抜いた。
『うぐッ』
そのままパプはニジェに抱きつくように倒れ込んだ。
『誰だ!』
ドンゴが頭上を見上げると、カジュの大木から
二本目の矢が放たれ、今度はドンゴの胸元を射抜いた。
『うぅ』
バシャーァァア!‼
ドンゴは大の字になって水面に浸かった。
ニジェはしばらくうずくまったままでいたが、、
三本目の矢は飛んで来なかった。