『カザマンス・FIRST』【第一幕】静かなる内戦1~少年ファル[挿絵有]
1・1部分800~1000文字と原稿用紙約2枚分程度になっております。(1部分2・3分程度)
2・キャストの名前も一部を除き3文字以内に収めています。
3・擬音など少しアニメや漫画の様になっています。
アフリカの物語という事で難しくならず、わかりやすく読みやすくしている(つもり)です。
今より、50年ほど前の事である。
西アフリカ・カザマンス地方。カンビヤ川沿いの三日月湖。幾つもの密林を抜け、辿り着いたのは砂塵舞う乾燥の廃墟の村。
その探検家は見つけたのだ。なにか巨大な建物を覆っていたであろう崩れた石垣。それらを取り囲む様に天高く伸びたブビンガやバオバブの樹齢長き神木。
彼は石垣の下、半分砂に埋もれた石を手に取った。
角張った石。積み上げられていたはずの乾土のブロックには[G]の文字。
一つだけではなかった。足元の石にはそこかしこにGの文字。
ここに国を築いた部族の頭文字なのか、ここを占領したフランス軍の英雄の頭文字なのか。
しかしこの辺り一帯に先住していた部族は一斉の文字を持たない。交わすのは言の葉と絵。
これを発見した探検家は、ここに駐留していたフランス奴隷狩り部隊のものだと決定づけた。
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【カザマンス】
『この小僧か、、薄汚れた身体だのぅ。カジュの葉を敷け! 床が汚れる!』
あまりの汚さに、王ディオマンシは眉間に深いシワを寄せた。
裸同然の少年の身体はひざ下まで泥にまみれ、身体中にゴミの様な鳥の羽根が貼り付いていた。
『カヌの一族の小せがれであります。名はファル。グリオの連中が言うには年は15。』
側近の一人パプがそう答えると、ドンゴが敷いたカジュの葉の上に少年を座らせた。
『ほぉう、グリオ。グリオにしては粗末なガキじゃ。』
『グリオの家系ではありますが、親はいつの間にかいなくなってしまったとかで。しかしながら、カヌの一族ゆえ、その集落に住んでおるようであります。』
グリオとは文字を持たないカザマンスの部族にあって、その地方の歴史や文化をコラやバラフォンといった楽器を駆使し、歌で継承していく世襲制の一族の事である。
ディオマンシはこの地方に移り住む以前、10にも及ぶグリオの家系に過去の英雄の歴史を全て消し去り、自分の思うがままの詩に変えさせる命令を下したが、グリオの抵抗にあった。
抵抗したグリオの家系は皆、家ごと焼き払われ殺された。
唯一、残されたグリオはこの命に屈したカヌという家系であった。
『さあ、話を聞かせろ。
何を見たのだ。』
ファルは口を開いた。
『はい、このカザマンス川を東へさかのぼること、三日の距離、草木の生い茂る密林を抜けた無数の葦が生える湿地、その先に大きなカジュの木が2本。』
『そこに何がおったのじゃ?』
『少なくとも50人。我らジョラ族とは全く身なりの違う部族。何羽もの水鳥を打ち落としておりました。』
『弓矢でか?』
『まさしく。足で水面をバシャバシャと蹴り上げると、水鳥の群れが葦の間から一斉に舞い上がり、飛び立ったところをこう。』
そう言うとファルは片目をつむりながら、天に弓を弾く格好をして見せた。
『この先にまだ見ぬ部族がおるというのか?』
童晶・画
ジョラ族の王〔ディオマンシ〕
王の側近3人〔パプ・ドンゴ・カマラ〕
グリオの少年〔ファル}