文系女子と貧乏系男子
時は昼休み。
場所は裏庭。
5月中頃というこの季節は晴れればとても暖かく過ごしやすい。
海星高校の裏庭はグラウンドに面しており、既に昼食を終え、部活の準備や委員会の仕事をする生徒がちらほらと見える。
礼二と文香はお互いの友人に昼ご飯は別で食べると伝え、あまり人のいないこの裏庭で二人で昼食を食べながら話をすることにした。
現代文の騒動を見ていた友人達が生暖かい目をしていたのが癪であるが。
「で?一体何なの?勉強教えろってどういう意味?」
「無論、言葉通りだ!」
「ちょ、声でかい・・・。」
「こっちは人生かかってるんだ!なりふり構ってなどいられんわ!」
「それよそれ。人生かかってるってどういうこと?」
礼二の話によるとこういうことだそうだ。
家が裕福、というわけではなく、本来大学進学せずに就職しようかと思っていた。
しかし、大学に行かずに就職できるところなど限られており、たとえ就職できたとしても結局稼げる額は決して多くはない可能性が高い。
そんな時、1年生の時にあった進路相談で先生から理系科目得意なら奨学金使って進学したら良いんじゃないかと言われ、非常に合理的であると思い、快諾した。
理系の大学であれば就職に困ることも少ないだろうという情報もありがたかった。
しかし、蓋を開けてみれば理系の大学に行こうと思っても理系科目だけ勉強すれば良いわけではなく文系科目も点数に入るというではないか。
しかも奨学金を受けようと思えばそれなりに優秀な成績を収めねばならず、いくら理系で満点を取ろうと配点以上の点は取れないのだから良い成績を収めるのは難しい。
結局自称進学校特有の、学校の大学進学率アップのためにまんまとだまされてしまったというわけだ。
「じゃあ、就職希望に戻せば良いじゃない。」
「いや、奨学金を使って大学へ進学し、より大手の企業へ就職できる可能性を高める、というのは非常に合理的な手段である。向上の可能性のある手段を諦めて、より安全かつ妥協した手段を取るより、文系科目を伸ばすことによる、成績向上、またそれに伴う大学進学が将来の可能性を広げるとともにより良い・・・」
「言葉が多い!だいたい、そうだとしてなんで私なのよ!」
「そんなもの、他に頼める友人がいないからに決まっているだろう!」
「あんた友達少ないのね・・・。」
「あえて作らないだけだ!」
ため息をつきたくなるのを我慢して飲み込む。
礼二は礼二なりに全力を尽くしている。
彼だって将来のために全力を出すことを惜しまないつもりなのだ。
(私だって・・・・。)
「せめて1週間のうち30分で良い。もう受験まであまり時間がないんだ。頼む!」
教室の時と同じように椅子の上で土下座をする礼二。
今はあの時に比べれば周りに人がいないため幾分かましだが、気分が良いものではない。
「もう!分かったわよ!放課後30分、あんたにあげるわ!」
「・・・!!ありがとう・・・ありがとう!」
「ちょ、大げさだって。その代わり・・・」
「なんだ、金か!?申し訳ないが金は出せない・・・。しかし、パシリくらいならできる!宿題だってやってきてやろう!椅子になれと言われればやぶさかではないが・・・。」
「いらないわよ!っていうかなんでちょっと赤くなってんのよ・・・。」
椅子になると言いながら頬を赤く染め、クネクネとする礼二。
はっきり言ってドン引きである。
「その代わり、私に理系科目教えてくれない?」
「・・・は?」
こうして、礼二と文香の奇妙な関係が始まった。