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【復活】ゆめいろパレット~16歳JK、変身ヒロインはじめました~  作者: イマジンカイザー
10:職業、変身ヒロイン・兼……
55/109

はじめまして、グリッタちゃん

※ごちゅうい※

製作上の都合により、一部過去に掲載したお話(https://ncode.syosetu.com/n9503gc/28/)と同一のくだりが含まれております。

このせいでいつもの1.5倍の文量となってしまいました。長くってすみません。


※ ※ ※


 あきる野の家を引き払い、多摩市のおばあちゃん家に移住すると決まった時は、不安で心が押し潰されそうになったっけ。住み慣れた我が家を離れ、他に知り合いの居ない土地に旅立つんだもの。

 なんて思っていたのは最初の半年くらい。多摩はとっても良い街だ。丘陵地帯を切り崩して作ったせいか、私が住まう団地付近はアップダウンが激しいけれど、最寄りの京王多摩センターから急行に乗れば30分ちょいで新宿まで行けるし、モノレールを使えば西東京地区のハブスポット・立川駅にも一本。

 バスターミナル上に広がるペデストリアンデッキ(※駅前広場・横断歩道の機能を併せ持つ高架道路)には、駅から東側に行けば大規模遊園地のセリオピューロランド、駅近くのスーパーの向かいには幾つものレストランに囲まれたリオンシネマ多摩センターがある。買い物にも娯楽にも困らないのは、利用客の多さに起因するのかな。


『――本日も、JR五日市線をご利用いただき、誠にありがとうございます。次は武蔵引田、武蔵引田です』

 モノレールを立川で下車して青梅線で拝島へ。最後に五日市線に乗り換えてそこからだいたい20分。なんであきる野の駅前とかにしなかったのホント。まだまだ寒い一月末、あの格好で山ン中で踊らされる私の気持ちにもなってみなさいよ。

 ご当地の魔法少女として関東圏から注目を集めて早九年。"当時"を知らない商工会議所のオジサンにとって、二十五になってなお、私をキラキラ少女(・・)グリッタちゃんだと思っているみたい。いやいや詐欺でしょ無理あるっしょ。少女なんて言葉が通じるのはギリ二十歳だっつーの。

 本当なら、三行半叩き付けて辞めちゃいたいところだけど、此の世はカネの繋がりが総て。おばあちゃんの遺した借家の家賃補助行ってくれるとなれば、そんな我侭は通らない。

 バブル華やかなりし時期に買った築三十年の3DK。独り身の私には持て余すけれど、定職にすら就けないこのご時世、出て行って別の家を探すのは厳しい。


「あぁあ、なんでこうなっちゃったんだろ、私」

 車窓から外を眺めてみようと、このもやもやが晴れることはない。河原沿いに子どもの頃近所にあった東都サマーランドが見えてきた。あの頃は皆で連れ立って大プールに行こうってはしゃいでたっけ。


(止めよう、止め止め。過去の話なんて薄ら寒くなるだけだし)

 引田を超え、武蔵増戸駅に入るというアナウンスが流れた。こうなればもう逃げられない。垂れた瞼に喝を入れ、無理くりに口角を釣り上げる。


「はい、はーい! とうちゃーく! グリッタちゃん、本日も武蔵五日市の駅に出★没!」

 電車が終点に着き、然程多くない客らが出てゆく最中、自分自身を鼓舞するように、バトンを掲げてそう叫ぶ。

 イタいなあ、凄くイタい。けど、この後は歌って踊って笑顔を振り巻かなきゃいけないんだ。このくらいでへこたれているワケにはゆかない。


「グリッタ・フュージョン・ゲート!!」

 でもやっぱり恥ずかしい。こんな仕事はさっさと終わらせてしまおう。赤らめた頬で無理くりにそう叫び、生じた虹色のゲートの中へ跳ぶ。


「すごい! 居た! 逢えた! 本当にホントのグリッタちゃん」

 恥ずかしさで周りを気にする余裕が無かったからだけど。この時は全然気付いていなかった。わざわざ五日市くんだりまで私を追ってきた、奇特極まりないオタクの子がいただなんて。



※ ※ ※



「私ってさ、結局何がやりたかったのかな……」

 立川からモノレールに乗り換え、きょうの出来事を思い返しながら、車窓に広がる夕刻の甲州街道を見下ろす。


『はーいみなさーん! きょうもグリッタちゃんのために、わざわざ山ん中にまで来てくれてありがとぉー! それじゃあ、いっくよー!!』

 歌い慣れたレパートリーを総て出し尽くし、山の中でサイリウムを振り回すオジサンたちに愛想を振りまき、最後は臨時収入を手にして足早にあきる野の街から去ってゆく。

 派遣社員として本業で食っていけないのだから、正しい選択だってのは理解している。故におばあちゃんが亡くなってとなお生き延びられていることも。

 けど、納得と不満は別問題でしょ。二十五に至ってまだ少女を名乗ってカネを巻き上げて。私はこんなことがしたかったの?


「あの、すみません。ハンカチ」

「いえ。大丈夫。間に合ってます」

 いつの間にか大粒の涙を流してて、他のお客さんに心配されていたらしい。助け舟をやんわりと断わり、持参したハンカチで涙を拭う。

 止めよう。悩んでも答えが出ないから堂々巡りなんじゃない。止まった涙と共に答えの出ない苦しみを心の奥底に追いやった。


※ ※ ※


「たーだーいーまー」

 言ったっきりで返ってこない返事を聞き流し、鞄を下して上着を脱ぐ。

 ああ、寒い寒い。暖房、暖房と……。かじかむ手を擦り合わせ、リビングの石油ストーブをスイッチオン。

「あれ……?」押したはいいが温風は無い。何度押そうがエラーメッセージを吐き出すばかり。

 ふざけんな。こっちは仕事帰りで暖を求めているんだよ。キカイのくせに生意気な。この私を暖めてみせんかいコラぁ。

 などと叫び、蹴りを一発入れた時。いつもとは違う音がすることに気付く。これはなんというか……。がらんどう?

「あー。はいはい。おっけー完全に理解した」

 すべての行動の原則は等価交換。温風を送るストーブだって、燃料がなければ動かない。

 そうか。そりゃそうだよね。私だってご飯食べなきゃ動けないもん。ストーブさんにごめんねを言って、玄関の予備タンクに手を伸ばす。

「は……?」そちら側にも重さがない。つまりそれってどういうこと? 考えるまでもない。この家には石油の備蓄がないってこと。

「はあ、あああ?」クルマがないし重いから、ってなあなあにしてたツケが回ってきたか。ポンプで少しずつ入れるうち、まだ大丈夫、まだ行けると鼓舞し続けた結果がこれだよ。

「くそう! 生意気だぞ! キカイのくせしてこんにゃろう!!」

 寒さと怒りに加え、自己の怠惰まで加わって。既に正常な判断など下せない。空のポリタンクをぐいと持ち上げ、入り口目掛けてぶん投げる。


「痛っ」


 投げたタンクが跳ね返り、私の足元に横滑り。いや、痛いって何よ。扉は物を言わないでしょ。グリッタちゃんの魔法じゃないんだから。

「何も言わないで上がりこんだのは謝るけれど、これってちょっと乱暴すぎじゃなぁい?」

 え。何この声。私、独りで帰ってきてたよね? 尾けられた? 悪霊か何かでも連れ込んだ?

「あ、あ。”消えた”まんまになってたね。ごめん・ごめん」

 そんな言葉と呼応して、玄関に観たことのない靴が現れる。私のよりも二回り小さな赤い靴。続いて出ずるは黒タイツで覆われた細く寸胴な二本の脚。子ども……? この声は子ども? いや、なんで子どもが私の部屋に?

「ごめんねグリッタちゃん。用事があって、あきる野からずっと後を尾けていたのです」

 すぅーっと影が玄関に伸び、残りの姿が露わとなる。灰色のワンピースの上から暖かそうなジャケットを羽織り、グリッタちゃんがプリントされた桃色のポシェットを肩かけにした女の子。背丈からして小学生高学年だろうか。中学生でこの丈はないはず。

 プラチナブロンドの長い髪と、頭頂に乗っけた金のティアラ。服装さえ正せば英国のお姫様、って言われても違和感のないような愛らしい顔立ち。私なんかよりもずっとグリッタちゃんの衣装が映えそうで羨ましい。

「足ヨシ、影ヨシ、あたしヨシ。これでもう怖がられなくて済むよね? ね?」

「あの。あなたは……一体?」

 けれど、一番驚いたのはそこじゃない。思わず敬語で尋ねたそれに、その子は何と答えたと思う?

「そう。そこなんだよグリッタちゃん。あたしってばさ、一体誰なのかな? かなあ?」


「いや、そんなこと言われても……」初っ端から質問を質問で返して来られましても。

「そもそも、なんであなたは私のウチに? 後を尾けてきた理由を聞かせて」

「ナンデ、って言われてもなあ」彼女はポシェットからスマホを取り出して解錠すると。「他に、わたしのことが解るモノがないんだもん」

 言って彼女が見せたのは、動画サイトにアップされた私の動画。

 これはなにかの嫌がらせかしら。映っていたのは『ピン』で活動している今じゃなく、まだメインと裏方で"さんにん"で居た頃のやつ。


『ずっと違うと思ってた。そんなの無理だと思ってた』

『わたしはこれが好きなのに。好きだと叫んでいたいのに。普通と違えば叩かれて』

 鏡を映して同じ顔の筈なのに。瞳を絢爛と輝かすその姿を見ると、とても同じ人間とは思えない。これが九年前の私か。あんな恥ずかしい格好で、歌って踊って視られるのにも抵抗がなく――。

「いや、そこは今どうだっていい」というか感傷に浸ってる場合じゃない。「これとソレと、何の関係があるの」

「わたしのスマホね。他に何にも入ってないの。名前も住所もまるっと消えてて」

「は、あ?」そんな馬鹿な。許可を得て画面をスワイプし続けるけど、言った通り彼女の出自を示すデータは皆無。電話帳の記載は緊急のお客様サービスフリーダイヤルのみ。使用に認証が必要なアプリの数々は登録し、作動するのにユーザーネームもそれを設定したであろう親の名前も見当たらない。

 つい先日まで電話会社で窓口業務をしていたのだ。幾ら中卒のあほだって、スマートフォンがこんな状態で動くわけ無いことくらいは理解出来る。


「けど、グリッタちゃんの動画だけはお気に入りに登録されてたの。ヘンだと思うでしょ? だから」

 私にくっついて、ここまで来たってか。開催場所はいつだってあきる野近辺だ。電車の乗り方さえ分かれば都心からだって行けないことはない。

「だからね。どこから来て、どこに帰ればいいのか解らないの。お願いグリッタちゃん、まほうのチカラでわたしのお家を探し出して」

「ムチャクチャ言いなさる……」

 そりゃあまあ、『グリッタちゃん』は困ってる子は見捨てずに助けると思いますよ。でも私はその『真似っこ』だからなあ。餅は餅屋、探しビト訪ねビトは警察の仕事だと思うのですよ。

「悪いけど、これから灯油買いに行かなきゃ行けないの。駅近くまで一緒についてくから、あとはお巡りさんにお任せしよーよ、ね?」

「ぶえー。グリッタちゃんのケチ。キラキラの星から皆を救けるために戦ってくれてるんじゃなかったの?」

 それはね、客寄せというかキャラ付けというか。私だってそういうのに憧れたのは事実だけど、虚構と現実(リアル)を混同しないでいただきたい。

「でも。でもでも。わたしってば色々役に立つよ。お巡りさんにお任せするのは勿体無いよ」

「役に立つ、ってナニが?」

「たとえば、そう……グリッタちゃん、『とうゆ』が欲しいんだよね?」

 そりゃあね。豊が丘の丘陵地帯を徒歩ニ十分、永山側に降りたところのガソリンスタンド。自転車じゃ運べないから帰りはえっちらおっちらデス・ロードですよ。原産国みたいにね、どばーっと溢れ出てきてくれりゃあさ……。

「オッケー。それくらいならなんとかなる」

「はい?」

 いやねアナタ。ナニを聴いてたんですか何を。灯油は水と違って蛇口を捻ったって出ないんですよ。買いに行かなきゃ行けないんだって言ってるじゃあないですか。

「灯油、灯油……。出て来い出て来い」

 両手で握りこぶしを作り、目を瞑ってこめかみをぐりぐりと捻る。仕草そのものは可愛いけれど、それが一体何になるの?

 なんて、幼稚な行為だと笑っていられたのもここまでだ。頭のティアラがきらりと光り、空のタンクに液体が注がれてゆく。

「いよっし出た出た。はいこれ灯油。早く暖房つけよーよ。わたしだって手が寒いもん」

「いや。いやいやいやいや。灯油出ましたってアナタ」

 タンクに水注いだだけっしょ騙されないよ、と匂いを嗅げば灯油特有の刺激臭。ポンプを用いてヒーターに送り、電源を入れればあっという間に暖まってゆく。

「嘘。ウソお……」

「そーいえばもう夜だよね。お夕飯食べたいよね? よぉっし、それじゃあ」

 驚く私を尻目に、彼女はまたも頭をぐりぐり。ティアラがまたも光を発し、うちの玄関からピンポンチャイム。


「どーも! ドレミファピザです。ご注文のチーズクォーター、お届けに上がりましたー」

「や。私頼んでないんですが」

「はーい、わたしたのみましたーっ。ありがとごじゃいまーす」

 そうだろうとは思ったよ。っていうか臆面なく受け取るの? 向こうさんもお代取らずに帰っちゃうの? ねぇ本当にそれでいいの?!


「ささ。アツアツのうちに食べちゃおうよグリッタちゃん。飲み物ある? 無かったら別で頼むけど」

「ある。あるから……。少し、考えさせてくれない?」

 食うや食わずの生活だ。灯油や夕食代がごそっと浮いてラッキー! ってのは多分にあるよ。あるにはあるけど……。

 今この子をおまわりさんに突き出すのはまずい気がする。完全に未成年略取だけど。押し掛けてきたのは向こうなんだけど!



◆ ◆ ◆



 ええと、1203号……1203号……。ここか。悪党のくせに良いとこ住んじゃってさあ。よぉし、今日もお仕事片付けちゃうぞう。


『ぎぃー、がちゃん』

 アタシの前に鍵なんてものが無意味だと。どうしてみんな学習しないのかなあ。あ、そっか。悪党共はみんなしてアタシが退治しちゃってるもんね。解るはずないか。


「なっ、何だキミは! どうやって入った?」

「はいはいこんばんは。初芝之ノ輔さんで良かったよね?」

 あの日仮狩組でもらったリストには、組の構成員や、食い物にされていた人たちだけでなく、ペンや『弁』で彼らを護る大人たちの名前も多く記されていた。

 法の裁きを受けさせようと、彼らがいる限り連中は正当な罰を受けることはない。そんな不公平なはなしがあってたまるか。

「あなた、お巡りさんの身でありながら、仮狩組のしてることに見てみぬフリしてきたでしょ。被害届も握り潰して知らん顔して。いーけないんだ、いけないんだぁ」

「それが、それが何だって言うんだ。リストがそこにあるのなら解るだろ。他にも沢山の大人が……」

 あー。はいはい。危ない橋・みんなで渡れば恐くないって考えね。自分たちさえ良ければそれで良いってわけ。じょーじょーしゃくりょーの余地、まるで無し。

「イマワの際に言い訳なんて見苦しい。サッサとあの世に行っちゃいな。『ぱん』」

 景気のいいクラッカー音と共に、お巡りさんの後頭部から赤黒の花が咲いた。飛び散った朱が壁に点々と跡を残し、事切れた遺体が仰向けに崩れ落ちてゆく。



「あぁ……そんな! なんということを!」

「パパ! 返事をして! パパってば!」

 音を聞き付け、家の中に居たふたりの女性が駆け込んで来た。片方は妙齢、もう片方はアタシと同じくらい。彼の妻子ってことで間違いなさそう。

「あなた……何の権利があってこんな!」

「パパを、パパを返してよ!」

 自分たちのやってること棚に上げて偉そうに。あんたらこそ、旦那様がナニをやったか知ってるの?

「その男はヒトを護る警察官の職にありながら、暴力団の傘下として仕事を流し、奴らのすることに見てみぬフリをしてきた。殺されて当然の存在なの。お、わ、か、り?」

「わか、わかるわけ無いでしょ……そんな、そんな理由で?!」

「パパを返して! 返してよ!」

 アタシ史上最高にわかり易く、理路整然と理由を述べてやったというのに、奴らは何も変わらない。どぉして分かってくれないかなあ。

「もういいでしょ? アタシまだ仕事が残ってるの。お葬式とかそーゆーのはご自由に。そっちには干渉しないなら」

 あほと長々会話している暇はない。踵を返しドアノブに手をかけたアタシの背中に、冷たくて薄い『なにか』が刺し入れられた。


「ふざけんな……。こんなことされて、許されると思うんじゃあ無いわよ!」

 痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い。刺された場所が焼けついて、血がどっと噴き出して。痛い痛い痛い痛い痛い。なんでよ。何でなのよ。アタシは懲罰のエンジェルよ。感謝されこそすれ、怒られるいわれなんて無いはずなのに!


『痛くない。痛くない、痛くない……』

 右手を胸元に当て、円を描いて右回転。アタシを刺した刃物が零れ落ち、裂けた背中が塞がってゆく。

「な、な……?!」

「悪いのは亭主。家族は例外だって思ってたけど」

 腐ったミカンをひとつの籠に入れとけば、全部が全部腐り落ちるってことか。アタシが甘かった。悪党共は全部! せん滅させちゃわなきゃね。

「あの世で旦那と反省しなさい。『ぱん』」

 これは正当防衛だ。一発目はたじろぐ奥方の肚を撃ち、くの字になって浮いたアタマにトドメの次発。茹で上がったエビみたいに丸くなり、直ぐに動かなくなった。

「ママ……! ママぁ!! あぁ、あぁあぁあ!!」

 もうアタシは間違えない。奴の注意が母に向いた瞬間、アレの後頭部に狙いを定め、ぱん・ぱん・ぱんと三連発。鉄臭い血溜まりだ。父・母・娘のサンドイッチ。死臭に鼻が曲がりそうになる。


「どうして分かってくれないのかなあ」

 これは正当防衛だ。悪の子はアク。だから殺されたって仕方がない。正当防衛なのだ。

 だったらこの気持ちはなに? どうしてこうもぞわぞわするの? おかしいじゃない。アタシは絶対正しいんだよ。チカラを持つ者がそれを善いことのために使うのは当たり前じゃない。それを咎めるやつがおかしいんじゃない。


「もう知らない。知らないったら」

 ここにもう用はない。戸を閉めて来た道を戻りゆく。

 ねぇ、ファンタマズル。アタシが正しいんなら、この心のゾワゾワは何なのかな。猫姿の相棒は、来てほしい今に限って現れてはくれなかった。

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