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【復活】ゆめいろパレット~16歳JK、変身ヒロインはじめました~  作者: イマジンカイザー
03:ごしょーらんあれ! キラキラチェンジ!

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ごしょーらんあれ! キラキラチェンジ!

一週間のペースとしてこれは足りるか足りないのか未だにわかりません。

近いうち、一回一日に二話更新くらいするかもしれません。

※ ※ ※


「だぁかぁらぁ、それのどこが箪笥なんだよ!」

「むぅーっ。りりちゃんってば強情すぎぃ。いいじゃん。こーゆーのでいいじゃーん」

 少し時間を戻し、暮れなずむのナナカマド高図書室。花菱瑠梨と西ノ宮ちはるはここに籠り、家具と関わりのある本をテーブルに積み続けている。

 その周囲には描き損じてくしゃくちゃになった紙屑の山。中にあるのは洋服ダンス。どれもアタリを取った骨組みだけ。完成せずに塩漬けにされたアイデアの成れの果て。

 魔法少女衣装を着たきりにしないなら、保存して持ち歩けばいい。りりのアイデアを受け、まほうのペンで線を引く。如何に魔法のチカラを宿していようと、完成しなければ意味がない。


「ボク言ったよね? 箪笥なんでしょ? 服をしまうものなんでしょ? なのになんで余計なモノ足そうとするの?!」

「だって夢ないじゃん! 魔法少女の衣装しまうクローゼットにユメがなくてどーするの!?」

 拮抗の理由は完成品に求めるモノの相違。ちはるは魔法少女らしい外観を、りりはタンスとしての機能性を重視し、互いに決して譲らない。

 そもそも瑠梨に意見を戦わず理由など無いのだが、目の前の馬鹿と同じ地平に立った時点で、そんなことなど頭から抜け落ちていた。

「夢ユメ夢ユメ……。そんなに夢が大事か? 夢の為なら機能性は蔑ろか? キミは何にもわかってない!」

「わかってないのはりりちゃんの方でしょ! あぁ言えばこう、こう言えばあぁ!」

 互いに感情を爆発させ、テーブル下に紙くずがまた一つ。不毛極まりない論戦の中、席を立ったのは瑠梨の方だ。

「この強情っ張り! いいさ、やってやろーじゃんさ」

 少し待ってろよ、と肩をいからせ本の森へと去ってゆく。これは意地だ。折れない馬鹿を捩じ伏せて、自らの正しさを見せつける。ただそれだけの為に声を嗄らし、いらない手間と汗をかく。

 通常、そういう間柄を友だとか仲間と云うのだが――、今の瑠梨には理解できるはずもない。


「ふんっ、だ。りりちゃんの理屈屋ーっ」

 稚気じみて頬を膨らませ、新たな紙に線を引く。向こうの指摘も判るが、『それ』を捨てたらグリッタちゃんである必要がない。

(でも、なんだろ。モヤモヤする)

 譲歩する気は毛頭無いが、胸をちくりと刺すこの痛みは何だろう。瑠梨の怒り顔を見て感じる申し訳無さはどこから来るのだろう。

 ちはるもまた、他と議論を交わすことをしなかったはぐれ者のひとりだ。我を通すばかりで、他の発想を受け容れるという選択肢を理解していない。

「アヤちゃんも、こんな気持ちだったのかな」

 本来人間が集団社会の中で身につける『察し』と『思いやり』。ずっとひとりだったちはるは、この短いやり取りの中で、遅まきながらその意味を理解しつつあった。


(んん……?)

 いつだって、心境の変化は創作に於いて予期せぬ効果をもたらすもの。瑠梨がページを開け、そのままにしておいた本のうちひとつを、ちはるは何の気なしに掴み取る。

「かがみ……」ドレッサーといえば、という事で最初に提示された鏡台。真正面と斜めから両左右をカバーする三面鏡。

 次いで、描きかけのスケッチに目をやった。可愛らしく、きらきらをと走り書き、その後手付かずのコンパクトサイズ。

「鏡! そうか、鏡!!」

 ちはるの創作意欲に火が点いた。走り書きに芯を通し、まほうのペンで色を塗る。

(ドレッサー……。箪笥って言葉に拘りすぎたんだ。これはわたしの、グリッタちゃんの変身アイテム。ちじょーの法則に囚われてどーする!)

「完ッ成!」の、声と共に輪郭が虹色に輝いた。同時に三次元の奥行きを得、立体としてこの世に顕現する。

「やった……。やったよ! 名付けてぇええ」

 感極まってその場でくるりと一回転。名付け親にならんと意気込むが、携帯電話の着信音がそれを遮る。

「グリッタフォン!? すごい、初めて鳴った!」

 先んじて申し上げておくが、グリッタフォンは同番組放送当時流通していた玩具の電話だ。

 音声こそ当時の(ファンメイドのものを着信音に紐づけた)ものだが、見た目は縦長の折り畳み式。尤も、それを彼女に指摘したところで何の意味もないのだが――。

「や、や。そうじゃない。誰から?」

 この端末に登録されている番号はそう多くない。契約会社と父親でなければ、続く答えは一つだけ。

「アヤちゃん」彼女が? なんで? 続く答えは何となく想像がつく。あぁも折り合いが悪かったのに、悪びれず電話をかけてくるということは。

「出番だね? 出番ってことでしょ。そーだよねアヤちゃん!」

 最早一刻の猶予もない。瑠梨に資料を探させていたことすら忘れ、鞄からバトンを取り出して。

「グリッタ☆フュージョーン、げぇえええと!!」

 魔法のチカラを発動し、虹色に輝く靄を展開。迷うことなく中へと飛び込む。

「ちょっ、何だよ今の叫び声」

 声に釣られて戻ってみれば、既にここはもぬけの殻。夜の図書室に残されたのは、花菱瑠梨ただひとり。

「は……ああ?! ナンデ!? ナンデぇえええ?!」


※ ※ ※


「なによ……。アレ何?!」

「ハロウィンの仮装……? や、でもまだ四月でしょ」

 姿勢を低くし、テーブルに隠れるようにして、ガラス越しに駅前ロータリーを見やる。

 綾乃ら三人の目に映るのは、巨大なカボチャを頭から被り、黒いボディータイツを纏い、赤いマントを翻す不気味な魔物。吊り上がったその口で街行く人を貪っている。


「二度あることは三度ある……」

 コンビニ店員ですら職を忘れ逃げ出す最中、綾乃ひとりだけがこの事態を冷静に見ていた。

 あれはヒトを喰らい、養分とする怪物で、早く倒さないと命の灯は露と消える。

 今この場に、あれを何とかできる人間はいない。なら捨て置けと? 逃げ惑う人々の叫びに耳を塞いで隠れていろと? 否。否否否、断じて否!

「ちょっ、あや」

「駄目駄目、隠れてなきゃ」

「構わないで」ようやっと、自分の立ち位置が解ってきた気がする。綾乃は迷うことなく携帯電話に手を出して、最近登録したばかりの番号に短縮発信。



「とぉ、りゃああああああっ、と!」

 程なくして綾乃の背後に靄が生じ、その中から見知った栗色髪が飛び出した。

 纏うブレザーは汗に蒸れ、手首の周りには黒いスス。またどこかで絵でも描いていたのだろう。

「遅いぞ、ばかちは」

「つれなくしといてソレはないんじゃない? わたしじゃなきゃぷんぷんだよ」

「はい、はい」言って、互いに手を出しグータッチ。今すべきは喧嘩じゃない。ちはるもまた、眼前の光景を前に何が求められているかを理解した。

「ねえ、ちはる」

「うん?」

 言って、綾乃は無言で周囲を見やる。あほでどんくさいクラスメイトが何処からともなく降ってくる異常事態。チカとマユは困惑に目を白黒とさせており、まともに会話が成立するとは思えない。

 先のニワトリの時と同じ。ちはるがあれを倒せば、皆すぐに忘れてしまうのだろう。助けてくれたことも。ちはるがすごいやつだってことも。何もかも。

「ごめん。なんでもない」それでも、この子は来てくれた。なら、かけてやる言葉はただひとつ。「あとは、任せた」

「おっけー。任されましたっ」

 最早勝った気でいるかの如く、ステッキを構えて得意げな顔でロータリーへと足を踏み入れる。

(うん……?)だが待てよ。あの姿はナナカマド高の制服。下に纏う派手なあの装束はどこへ行った?

「ちはる。あんた」

「おぉっと、ここから先は言いっこなし」ちはるのニヤケが更に増し。「ごしょーらんあれアヤちゃんさん。これが、わたしの! 『キラキラチェーンジ』!」

 恐らく彼女の造語であろう掛け声と共に、取り出したるは星があしらわれた丸いコンパクト。

「わたし謹製! 名付けてぇ……グリッタ☆トランスパクト!」

 上に開ければただの手鏡。だが下にあるのはファンデーションではない。液晶パネルと思しきそれに描かれているのは――、グリッタちゃんの、衣装?

 西ノ宮ちはるは上の鏡で自らを写し、下のパネルを指でなぞる。玩具っぽいチープな音と共に、下部に映った衣装が画像レイヤーめいて彼女の身体に重なった。

 するとどうなる? コンパクトの上と下で衣装が入れ替わり、現実のちはるが淡い灯の光に包まれる。野暮ったい制服は桃色のオフショルダーに。スカートはもこもことしたパニエに。学校指定のローファーは花柄の編み上げブーツに。

 掛け声から僅か二秒。西ノ宮ちはるは一瞬でグリッタちゃんへとその姿を変えていた。

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