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彼女は菜食主義



 エルフと言えば、そうして上げられる特徴の中に菜食主義というものがある。

 しかし、それは誤解である。

 確かに彼らは森で暮らすため人よりは多少菜食であるが、鹿や猪を弓で狩り食べることも多い。食に関しては人と違いはない。違うのは生活する場所なのだ。


 しかし彼女、シャルロットにとってはそうではない。


「私はエルフだから肉はあまり食べない。食べれないことはない、誰かから頂く機会があれば喜んで食べるけれども、積極的に食べようとはしない」


 これは彼女の言葉である。


 彼女は肉が嫌いであるためこう言っているのだろうか?

 いいや、彼女は肉が好きである。焼肉もステーキもハンバーグも食べれるならば毎日食べたいと思っている。

 しかし、エルフといえば菜食主義のイメージ。そうであった方が人とは違う異質さを感じるだろう。厨二である彼女にとって異質さは友であり追及すべきものである。


 実際に彼女が肉を食べることは稀である。設定のためにとくべつ我慢しているからだけではない。

 単純に彼女の収入が乏しい上に、好奇心のあまりに金遣いも悪いのだ。


 そんな彼女が肉を食べれる機会は二通りある。


 一つは彼女自身に臨時収入が入り、なおかつ一人で食事をできるとき。

 しかし、この機会は少ない。臨時収入が入るということは、特別な大きな仕事をした時である。そんな仕事を彼女一人で受ける訳もなく、即席のパーティで仕事をする。

 そしてその後は一緒に食事となり、周りの目を気にして肉を頼めないのである。

 日程を変えて肉を食べようにも、次の日になれば臨時収入は本なりアクセサリーなりに変わっていた。


 もう一つの肉を食べれる機会

 それはギルド自体に臨時収入が入り、ギルド主催のお祭りが開かれた時だ。

 そしてそれは今日なのである。

 お祭りでは、冒険者たちの食事は全てギルド持ちとなるので是が非でもお肉を食べておきたい。なんせタダである。収入がギリギリの新人冒険者たちはこれでもかと言うほど食べ溜めているのが当たり前なのだ。脱新人ギリギリの彼女とて例外ではない。


「私は……、いやエルフは菜食主義だが奢られたからには食べなくては失礼だ。頂こう」


 これが彼女の言い訳だ。大人たちは黙っていてあげている。


 しかし、冒険者は誰もがなれる一攫千金の職。貧しい子どもが唯一残された生きるすべでもある。冒険者に一番多い年齢層は10代なのだ。

 子どもとは時に残酷な物である。


「シャルロットは肉が苦手なんだろ、他にも料理はたくさんあるんだから、そっちをメインに食べたら十分じゃないか?」


 そう、心優しき少年であるカヌレはそう言った。

 カヌレは、まだ新人ながらに大きな仕事に良くよばれ、シャルロットともたびたび組んで、その後の食事会にてシャルロットが自身満々に語るエルフの菜食主義講義を聞いていたのだ。


「え、いやまあしかしお世話になった先輩方が肉が多いテーブルにいるから仕方なくてな……」


 消え入りそうな声で必死の抵抗をする。


「この間、一緒に仕事したメンツで一緒に食べていてシャルロットも探していたんだ。向こうだと肉料理以外もかなり置いてある。先輩方も、前に組んだパーティでの反省会をしてくると言えば気分を害さないだろう」


「ああ……、そうだな……、私も彼らとの仕事は楽しかったし……、また語り会いたいとは……思っていたところだ……、すぐに向かう……」



 エルフは菜食主義ではないが、彼女、シャルロットに限れば菜食主義である。


名前みてるとおなかすく

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