6話 ただいま
仕事が忙しくて、久しく執筆できませんでした。
ストックも尽きかけていたので、なんとか書ききれました。
ただ、ブランクのせいか上手く言葉が出てきません。
行きはシャドウグリズリーに出くわすアクシデントもあったけど、帰りの道中は魔物を見ることも無くリーザスが見えるところまで戻ってきていた。
「へぇ、あれがリーザスか。あのでかい塔が有名な願いの塔だな?」
「ああ、ここからでも良く見える。あの塔を見ると、リーザスに帰ってきたって感じることができるな」
まだ長い時間をリーザスで過ごしていないけど、帰ってきたときにあの塔を見て、帰って来たって感じる程度にはリーザスに愛着が湧いてたんだな。
「さて、ここからなら1時間も歩けばリーザスに着きそうだな」
「町に入ったら、まずはギルドに行くんだよな?」
「そうだな、戻ったことをノルンさんにも伝えておかないと色々面倒そうだし」
「ノルン?」
「リーザスの町の冒険者ギルドで、よく面倒を見てくれた職員だよ」
ノルンさんにも久しぶりに会うんだ、町を出たときよりもちょっとは成長した姿を見せることができるか?俺が考え込んでいると、カメリアが眉根を寄せて俺を見てくる。
「……なんだよ」
「また女だな?」
「そうだけど、人聞きの悪い言い方をするな!」
「まあ、アタイもこの町に居つくわけだしな。しっかり目を光らせておけば問題ないだろ」
「何の話をしてるんだよ」
「何でもない!」
そう言いながらカメリアは町に向かって歩いて行った。あいつの好意は知ってるけど、多少仲が良いってだけであんなふうに責められるのは勘弁してほしい。まあ、カメリアもノルンさんに会えば勘違いだって分かってくれるだろうし。
そう心の中で決着をつけて、俺はカメリアの後を追った。さて、久しぶりのリーザスは何か変わっているのか。アサギにも早く会いたいな。
町に入る門では、特に止められることも無く久しぶりのリーザスの町に入ることができた。俺が出て行ってから2カ月くらいか、こうやって見ても変わったようには見えないな。
「へぇ、これがリーザスの町か。ウドベラと違って色んな人種の奴がいるんだな」
「ここは大陸中から人が集まるからな、ウドベラみたいな閉鎖的な所は無いよ。それで俺も受け入れてもらえたからな」
「そうか、アタイも気に入ったよ!」
普段はあまり見せない表情をしてカメリアが浮かれている。ウドベラでは鬼族と言う事で、町の人たちにも敬遠されていたから奔放なリーザスの空気が気に入ったんだろう。異世界から来た俺にも分け隔てなく付き合ってくれる、そんなリーザスだからこそ帰ってきたって思えるんだろうな。
「で、ホクト。冒険者ギルドはどっちだ?」
「ああ、あっちだ」
カメリアを先導して、まっすぐメイン通りを歩く。今は昼過ぎだから、昼飯を求めて冒険者や日雇い労働者と言ったガテン系の連中が多くみられる。他にも、小さい子供を連れた母親らしい人や、店の小間使いが忙しなく走り回ったりと相変わらずこの道は賑やかだ。
そんな賑やかな通りを俺とカメリア、ポロンの2人と1匹が歩いていると雑踏の方から声がかかった。
「ホクト!」
俺は足を止めて、声のする方を見やる。カメリアも足を止め、同じように雑踏に視線を向ける。すると、雑踏の中から顔馴染みが姿を現した。
「ソウル!」
「お前どこ行ってたんだよ!しばらく顔を見ないと思ったら……うお、鬼だ。俺初めて見た」
「相変わらずうるさい奴だな、ちょっとダンジョンを攻略しようと思ってウドベラまで行ってたんだよ」
「ウドベラ?……ああ、初心者用のダンジョンがある町か」
「知ってるのか?」
「ああ、行ったことは無いけどな。うちだと、エリスが行ったことあったんじゃないか?」
へぇ、エリスがウドベラに行ったことあるんだ。そんな風にソウルと久々に会った挨拶をしていると、横からカメリアに頭を抑えつけられた。
「アタイを放っておいて、何楽しそうな会話をしてるんだよ!」
「いた、痛いって!放っておいたのは悪かったから、お前の怪力で頭を掴むな……捥げる!」
「反省したか?」
「した!反省したから、離せ!!!」
俺が謝ると、カメリアはすぐに頭を離してくれた。ああ、痛かった……首がムチ打ちにでもなったらどうしてくれるんだ。そう言う思いを込めてカメリアを睨み付けてみたけど、カメリアは一向に気にした様子も無くソウルの方を見ている。
「で、この男は誰なんだ?」
「なんだ、やっぱりホクトの知り合いか。鬼の姉ちゃんなんていつの間に知り合ったんだよ」
「2人でいっぺんに喋るな!今から説明するから」
どっちもテンションが上がってるのか、矢継ぎ早に話してくる。この2人の良いように任せていたら、きっとのここの空間はカオスな事になること間違いなしだ。俺は一旦2人を制止すると、まずはソウルに向かってカメリアを紹介した。
「ウドベラで知り合ったカメリアだ。今は一緒にパーティを組んでいる」
「カメリア・フレームだ。お前はホクトの知り合いなのか?」
「俺か?俺はソウル、ソウル・スタント。ホクトとは親友だぜ、美人のお姉さん」
「……まあ、お互い自己紹介はできたな」
一度ペースができると、勝手に2人で話し始めた。こいつらの性格を考えると、以外に相性は良いのかもしれない。
「ホクトの親友?まさか、ホクトに男の友人がいるとは意外だった」
「おいっ!カメリアは俺をどんな目で見てたんだよ」
「女好き?」
「ブフッ!……あっはっは、女好きだってよ!」
「お前に笑われるのは心外だぞソウル!お前こそ、パーティメンバーでハーレム作るって息巻いてたじゃないかよ!」
「へぇ……ソウルは、そういう人間か」
「俺は嘘偽りない人生を歩んでいるからな。男とパーティを組むなんて御免だ、男ならやっぱりハーレムを目指すべきだろう!」
昼過ぎの往来で、声高にハーレムハーレム連呼する男を見る周りの視線は冷たい。恐らく俺も、その仲間に見られてるんだろう。せっかく久しぶりにリーザスに戻ってきたのに、なんでこんな冷たい視線を浴びせられる羽目になったんだか。
カメリアも周りの女性陣と同じように冷たい視線をソウルに送っていたけど、突然噴出して笑い出した。
「ふふ、ははは!なんか変な奴だけど、お前悪い奴じゃないな」
どうやらソウルの明け透けない性格は、鬼族的には好ましいものだったみたいだ。カメリアが他の人間相手に、こんなに笑う姿はアーネちゃん以外だと初めて見るかもしれない。
「お姉さんも悪いやつじゃ無いみたいだな。ホクトがパーティを組むくらいだから、悪人じゃないだろうし。それに……すっげえ強そうだ」
「ソウルも弱そうには見えないな……」
お互いに強者を求める傾向があるからか、身体から闘気が見え隠れしている。
「おい、こんなところで始めるなよ。カメリア、俺たちは冒険者ギルドに行くんだからな」
「……そうだった。ソウル、今度一戦やってみないか?」
「美人からのお誘いは大歓迎だ。ホクトの帰還祝いに、ギルドの訓練場を使って模擬戦でもやってみるか?」
「今度な、今は旅で疲れた身体を宿屋で癒したい」
「ちぇっ、つまんねえな。じゃあお前が落ち着いたら連絡くれよ、俺も当分はリーザスから離れないから」
「あれ、お前のパーティって遠征が多くなかったか?」
そう、ソウルのパーティはちょくちょく遠出をしては実績を積んできていた。仲間のサラや、エリスもソウルほどじゃないけど十分に強者と言える部類の人種だ。そんな3人だから、実績のために遠征を繰り返していたはずだ。
「ああ、俺たちCランクになったからな」
「…………は?」
「だ・か・ら!俺やサラたちはCランク冒険者になったんだよ」
「……いやいや、早過ぎだろ!お前らどんな敵と戦って来たんだよ」
「Cランク……やっぱりソウルは強いのか」
カメリアも驚いている、でも俺はそれ以上に驚いている。
「カメリア、ソウルは俺と同期なんだよ」
「同期?どういうことだ?」
「俺とソウルは、同じ日に冒険者になったんだ。つまり……」
「ホクトと同じと言う事は……まだ冒険者になって3カ月ってことか!?」
そう、俺とソウルは同じ日に冒険者になった。俺たちが冒険者になってから、まだ3カ月程度しか経っていない。なのにソウルは、すでに一人前と言われるCランクにまで上がっていた。それがどれだけ異常なのか、カメリアにも十分に伝わったようだ。
「あり得ない、3カ月でCランクなんて……。ホクトのDランクでも驚いたのに」
「まあ運も重なったけどな、それに俺だけじゃ無理だったろうぜ。サラやエリスがいたから、力を合わせてCランクになれたんだ」
確かにサラもエリスも強い。でも、やっぱり要はソウルなんだろう。ソウルの剣術は一級品だ、更にはユニークスキル持ち。まったく嫌になるほど主人公補正のチートキャラだな。
「お前も早く上がって来いよ、そうじゃないと俺が願いの塔を踏破しちまうぞ?」
「言ってろ。俺だってさっさとCランクになって、願いの塔に挑んでやるよ」
「待ってるぜ。じゃあ、俺はそろそろ行くぜ」
俺たちに手を振りながら、ソウルは雑踏の中に消えていった。それを見送った俺とカメリア、特にカメリアは何かを言いたそうだ。
「正直、底知れない力を持った男だったな。でも、ホクトとソウルはそれでもライバル同士ってことなのか?」
「ライバルとか、そんなむず痒くなること言うなよ。あいつとはただの悪友だ」
「フッ、そういうことにしといてやるよ」
カメリアは笑った後、ソウルの消えた方を見やった。
「あれが、リーザスの冒険者か。あんなのがゴロゴロいるのか、なんだかワクワクしてきたな!」
戦闘民族の言うことは理解できないです。
「さて、そろそろギルドに行こう。とっとと帰還報告をして、俺は宿で寝たい」
「アタイはワクワクして、寝れそうにない!」
正反対の感想をこぼして、俺とカメリアはギルドへ向かった。




