14話 隠し部屋からの脱出
「これは……銀の籠手?」
「違うんじゃないか?アタイも鉱物にそこまで詳しく無いけど、銀ってもっとこう……ほらあるだろ?銀っぽさって」
カメリアが何を言ってるのか解らない。俺には銀に見えるんだけど、カメリアの目には違うものに見えるのか?
「ポロンはどう思う?銀か、それ以外のものか」
「わぅ?」
首を傾げた後、クンクンと匂いを嗅ぐ。それで分かるのか?
「とにかく、こんなところに隠されていた宝箱から出たんだ。絶対銀じゃないって」
「そういう考え方もあるのか」
確かに、ゲームをやってて超難易度高いミッションをクリアして、出てきた宝箱から町売りしている装備が出てきたら、ガッカリどころの話しじゃない。きっとコントローラを床に叩きつけるだろう。
「とりあえず、良い物っぽいから持って帰ろう。ギルドで鑑定してもらえば何か解るかもしれない」
「なら、それはホクトが貰っていいぞ」
「え、良いのか?こういうのって、普通パーティで等分じゃないのか?」
「レアなアイテムや装備が見つかった場合は、使える奴が優先していいんだよ。アタイだって宝箱からとんでもない槍が出てきたら、譲ってほしいし」
そうか、こういうものはその場その場で考えないで、パーティ全体の利益で考えた方が良いのか。
「でも、籠手ならカメリアだって装備できるだろ?」
「それは、そうなんだけどな。でもなんていうか、上手く言えないんだけど、その籠手はホクトが使うのが一番いい気がする」
第六感?それとも、女の感?なんにしても、譲ってくれるって言うなら願っても無い話だ。こんなあからさまに力を秘めていそうな籠手、メイン武器が籠手の拳闘士としては是が非でもほしい。
「わかった、じゃあ俺がもらうな。今度キラー・ビーパーティーしたときに全部お前の取り分にしていいよ」
「マジか!?いやぁ、良い事はしておくものだな」
途端にニマニマし始めるカメリア、チョロいです。
「宝箱も開けたし、中身も無事手に入れた。後は……」
「どうやって、ここから出るかだな」
「そうね、それが一番の難解だよね~」
この空間でやるべきことは全部やった。後は無事に脱出して外に出れればハッピーエンドなんだけど……。
「俺たちが落ちてきたスロープ以外に、出口らしいものが見当たらないのがな」
「隠し扉か?」
「どうだろ、とてもそうは見えないけど。とにかく、この部屋を徹底的に調べよう。ポロンも悪いけど、手伝ってくれ」
「ワン!」
了解と返事をしたポロンが、早速壁に走って行って匂いを嗅ぎだした。
「フンフン……クンクン……」
ガンバレ、名探偵ポロン!
「俺たちも行くか」
「おう!」
こうして、俺たち2人と1匹は出口を探して調べ始めた。
「……無いなぁ」
「ああ……無い。何にも見つからない……」
「……クゥ~ン」
撃沈した2人と1匹が部屋の中央で大の字になって寝っ転がる。どれくらい探しただろうか、結局何も見つけることができなかった。
「ひょっとして、宝箱を開けたことが閉じ込められるトリガーだったとか?」
「それはないだろ、開ける前から状況は変わってないんだから」
そんな罠を考える奴がいたら、人間じゃねえ。物欲センサーが可愛く見えるよ、目の前の宝を取ったら閉じ込められるとか。
「どうする?」
「ポロンに縄を咥えさせて、スロープの上まで走って行ってもらうとか?」
「いけるかな?ポロン、どうだ?」
「……ワン!」
決死の覚悟を持ってポロンが答える。お、男前だポロン。
「よし、いいかポロン。これを咥えるんだぞ?」
「ワフゥ!」
元気よく返事したけど、途中で縄を咥えちゃったから途中で空気が漏れたみたいな返事になった。やっぱり、ポロンは可愛い。
「頼んだぞ、ポロン。……よし、行け!」
俺の合図とともにスロープに向かってポロンが駆けだす。助走の乗ったいい走りだ。坂に差し掛かり、前脚を坂にかけ一気に自分の身体を引っ張り上げる。そのまま飛ぶような勢いで駆け上っていった。
「お、行けるんじゃないか?なあ、ホクト」
「ああ、これは期待できるかもしれない」
坂の下で人間2人はポロンの活躍に目を輝かす。これが上手く行けば、上まで縄を伝って上がれるだろう。
「……あれ、なあカメリア」
「なんだ?」
「何か大事なことを忘れているような……」
「あん?気のせいじゃないか?」
そうだろうか、何かとてつもなく大事なことを忘れている気がする。俺が1人ウンウン唸っていると、スロープの上から音が聞こえた。
「何の音だ?」
「……さあ?」
しばらく穴の奥に目を凝らしていると、突然ポロンが滑り落ちてきた。それも行儀よくお座りの状態でだ。そのまま坂を下り切り、俺たちの前まで来ると頭を下げた。
「……クゥ~ン」
「なんだ、どうしたんだポロン?何かあったのか?」
必死にポロンを慰めようとしているカメリアを見ながら、俺の頭の中でピースが組み合わさった。
「ああ!?」
「わっ、なんだよホクト。急に大声出すなよ、ビックリするだろうが」
「ポロンが上まで行っても、縄を結わえることができない!」
ズッガーン!
まるで落雷が脳天に落ちたような衝撃、カメリアは呆然としている。そして、ポロンは自分の肉球を恨めしそうに眺めている。
「ば、バカな……そんな事に気付かないなんて」
「……仕方ない、俺たちは所詮知能一桁台のおバカコンビだ」
「クッ……」
そんなこんなで、無駄な時間を使ってしまった。
「はぁ、どっと疲れたぞ」
カメリアは、その場で腰を落として項垂れている。もはや精も痕も尽き果てた感じだ。俺だって同じような状態だ、しかもそれ以上に俺たちが考えないといけない事が他にある。
「やばいぞカメリア、今日の分の食事も無い」
「……そうだった、アタイたち帰りは1日想定だったから」
「……クゥ~ン」
これはダメだ、思考もネガティブな方向へ行ってしまう。何とか脱出する方法を考えないと、遠くない未来に俺たちは動けなくなって死ぬ。
「でも、もう全部調べたぞ?他に調べてない所なんて無いだろ」
カメリアの言う通り、俺たちは2人と1匹で調べられるだけ調べた。それでも見つからないのだ、他に探していない所なんて……あ。
「……なあ」
「なんだ?」
「誰か宝箱って調べたか?」
「へ?空腹で頭がおかしくなったか?宝箱は一番最初にみんなで調べたじゃないか」
「いや、中身じゃなくて……宝箱の下」
「わぅ?」
ポロンが首を傾げる、可愛いけど今は後回しだ。
「宝箱の下?どういうことだよ、ホクト」
「ほら、俺たち中身にばかり意識が向いていて宝箱を動かしてないだろ?」
「……言われてみれば」
「俺たちは、さっき調べられるところは全て調べたと言った。だけど調べていない場所が一か所ある、それが」
「宝箱の下か!」
カメリアも元気が出てきたのか、立ち上がって宝箱に近づいて行く。俺も後を追って宝箱に近づく、ポロンは俺の足元だ。
「……いくぞ?」
「ああ、やってくれ」
カメリアが宝箱をゆっくり持ち上げる。俺でも持てるかもしれないけど、力を要求される可能性があるものはカメリアに任せるのが一番だ。
カメリアがゆっくり、ゆっくりと宝箱を持ち上げていく。すると、宝箱の下にあった地面に何かが見えた。
「何かあるぞ、これは……スイッチ?」
「スイッチ?ホクト、何かあるのか?アタイには見えないぞ」
「ちょっと待ってくれ、そのまま宝箱を持ち上げていてくれよ」
「わ、分かった!」
カメリアにそのまま宝箱を持って待つように言ってから、地面にあるスイッチに手を伸ばす。しかし、途中であることが脳裏をよぎり手を止めてしまった。本当にこれが正解なのか?もし、別の罠が発動してしまったら……。
「……」
「やってくれホクト、アタイは何が起こってもお前を責めたりしない」
「ワン!」
カメリアとポロンから許しが出た。俺は2人に頷いてから、スイッチを押す。
カチッ
どこかで、何かがハマるような音がした。途端に頭上から振動が伝わってきた。
「わ、わ、わ……な、なんだ!?」
「カメリア、もう大丈夫だから宝箱をその辺に置け。今は自分の身体の方が大事だ」
「分かった!」
カメリアは宝箱を遠くへ放り投げると、しゃがみこんで地面に手を付いた。俺はポロンを懐に抱えると、カメリアと同じようにしゃがんで蹲る。
ゴゴゴ……ゴッ、ゴゴ……
ガッコン、ガコンガコン……ガッコン
歯車のような音、そして何かが動き出した音が鳴り響く。俺とカメリアは音を無視して目を閉じていた。
「「……」」
どれくらい経っただろうか、いつの間にか音は止まっていた。
「……止まった?」
「……何の音だったんだ?」
とりあえずカメリアの方を見て無事を確認する。カメリアも俺が心配だったのか、お互いに顔を見合わせて笑い合った。
「無事でよかったな」
「ああ……でも、なんだったんだろう」
俺とカメリアが無事を喜んでいると……
「ワンワン!」
ポロンが突然吠えだした。
「なんだよポロン、何をそんなに興奮して……」
「……あれ?」
ポロンに視線を向けると、信じられない光景が目の前に合った。さっきまであったスロープが無くなり、代わりに石の階段が出現していたのだ。
「さっきの音は、このギミックが動いた時のものか」
「こんなもん、誰が作ったんだ?」
「ははは、誰でもいいじゃないか。とにかくアタイたちは助かったんだ!」
カメリアに言われてジワジワとこみ上げてくるものがあった。
「……いよっしゃぁ!!!」
「ワンワン!」
「ほらホクト、こんな所とっとと出ようぜ」
先導してカメリアが階段を上がっていく。俺もカメリアについて階段をあがる。いつの時代のものか分からないけど、結構頑丈にできてるから途中で崩れるなんてことは無さそうだ。
何段あるのかも分からないくらい沢山あった段差を、確実に一段ずつ上がっていく。そして、ついに階段を登り切った。そこは、俺たちが隠れていた窪地。
「なんとか無事に脱出できたな」
「敵は……いないみたいだな」
念のため気配感知を使ってみたけど、俺たちを追っていた奴らはどこかに行ってしまったらしい。
「今のうちだ、とっとと脱出しちまおう」
「わかった」
カメリアと2人、頷き合いながら小走りで走る。敵がいないのであれば、ここは7階層へ続く階段からそれほど離れていない。俺たちはしばらく小走りで走った後、無事に階段に辿り着いた。
「ここまで来れば大丈夫だな」
「はぁ、なんとも得難い経験をしたもんだ。アタイも結構ダンジョンに潜ってるけど、こんな隠し部屋を見つけたのは初めてだし、閉じ込められたのも初めてだ。しかもあんな形で脱出できるなんて……」
「何はともあれ、パーティ全員が無事で良かった」
俺、カメリア、ポロン。2人と1匹に怪我も無く、こうして7階層への階段へ来れたのはラッキーだったな。
「よし、早く帰ろうぜ」
「そうだな」
「ワン!」
ポロンを先頭に階段をあがる。その後も何事も無く上へとあがっていき、ついに3階層まで来たところでまたしても問題にブチ当たった。俺たち、呪われてんのか?




