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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
4章 ダンジョンを踏破しよう
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1話 工夫達の洞窟攻略中

本日から4章を開始します。

遅々とした成長ですが、ホクトくんを見守ってあげてください。

カメリアとパーティを組むようになってから1か月が経った。その間、工夫達の洞窟の攻略は遅いながらも進んでいた。


「こっちは任せろ!」


「カメリア、あんまり前に出過ぎるなよ!」


「わかってる!」


現在俺たちは7階層の攻略をしている。この階層の初めて入ってから1週間が経過したけど、なかなか前に進むことができないでいた。その理由は明白で、俺もカメリアも前衛職なため、どうしても力圧しになりがちだ。


「はぁ!」


カメリアが槍を一閃、纏めて3匹のキラー・ビーを切り裂いた。キラー・ビーは大きなスズメバチのような見た目のとおり、空から飛来してひと刺ししたらすぐ上空に逃げてしまう。カメリアはまだいいとして、俺の方は1匹ずつしか倒せないのに上空だと射程距離の短い俺はほとんど戦力になれていなかった。


「おりゃ……ああ、クソッ!すぐ逃げやがって。下りて来いよ、お前ら!」


「無駄口を叩くなホクト、まずは1匹ずつ確実に倒す方法を考えろ」


カメリアに正論を吐かれると、まじでやるせない。あいつだって俺と同じくらい頭悪いのに……。


「また来るぞ!今度は焦るなよ」


「わかってる!」


降下してくるキラー・ビーを睨み付け、攻撃する一瞬を待つ。キラー・ビーは攻撃する際にVの字を描くような軌道になる。俺の射程だとVの底の部分でしか攻撃を当てられないから、この一瞬を逃すと打つ手がない。


「……相変わらず軌道が読みずらいな。まっすぐ下りて来いよ」


Vの字と言っても、本当に一直線に下りてきてくれるなら楽なんだけど実際はジグザグに動きながら、ここってタイミングで一気に突き刺してくる。キラー・ビーの軌道を集中と鷹の目で見ながら、胴体が浮き上がる瞬間を見逃さずに右アッパーを叩き込む。


「どうだ!」


手応えはあった。攻撃されたキラー・ビーは、フラフラと上空に飛んでいきながら途中でガクッと揺れたと思うと地面にポトリと落ちた。


「よし、1匹倒した」


「上等、その調子で確実に数を減らせよ」


「おう!」


俺が1匹を倒している間に、カメリアは槍でどんどん突き刺していく。すでにカメリアの周りには突き殺されたキラー・ビーが10匹以上も転がっていた。パーティを組んで改めて思ったけど、こいつの槍捌きは本当に綺麗だ。流れるように振るわれて槍の刃先の軌跡が尾を引く。力自慢の鬼族でありながら、洗練された槍捌きでバッタバッタと殺していく様は見ていて惚れ惚れする。


「残り5匹!」


また1匹に拳を叩き込みながら、カメリアの掛け声を聞いて周りに意識を集中する。不思議なもので、これだけ仲間をやられてもダンジョンの中にいる魔物たちは逃げるようなことをしない。まるで、最初から組み上げられたプログラムに沿っているような、どいつもこいつも同じ行動をする。


また1匹下りてきた。いや、今度は更にもう1匹。2匹での挟撃を狙っているようだ。これで俺に2匹、カメリアに3匹のキラー・ビーが群がることになる。あっちは大丈夫そうだから、俺が何とかすりゃ戦闘は終わりそうだ。


「よし、気合入れていくか!」


ジグザグに動く1匹のキラー・ビーを見ながら、後ろから迫ってくる残りの1匹の気配を感じる。よくよく観察すれば、同時じゃなくて若干のズレがある。上手く連携ができていないみたいだ。これなら何とかなるか?


ジグザグに動いていた軌道の終わりで少し浮き上がる仕草、これは一気に針を突き刺そうとする前兆だ。一直線に降下し始めれば軌道を変えることはできない。その瞬間を待っていたんだよ。


「フッ!」


身体を回転させながら、キラー・ビーを中心に時計回りに回り込む。Vの一番下、これから浮かび上がろうとしていたキラー・ビーの胴体に遠心力の効いた()を叩き込む。


「まず1匹!」


魔力を肘から送り込み、1匹を吹っ飛ばす。だけど、これで終わりじゃない。残った1匹も俺に針を突き立てようと一気に降下してきた。ステップを踏んで軌道から外れるように動く。そして浮かび上がろうとしているところに再び肘を叩き込む。


「2匹目、これで終わりだ!」


1匹目のキラー・ビーはすでに地面に落ちている。2匹目も今目の前で地面に落ちた。これで、俺の仕事は終わりだ。


「カメリアは……大丈夫そうだな」


「ああ、こっちも終わったぞ」


見ると俺よりも先に終わっていたようで、槍の汚れを拭き取っているところだった。この7階層は俺と相性の悪いキラー・ビーが生息しているけど、見返りが悪い訳じゃない。特にカメリアはキラー・ビーが落とすドロップ品を目を輝かせて拾いに行く。


「うほぉ~、今回もいっぱいあるぞ。ホクト、大漁だ!」


「これが無ければ、正直この階層は魔物を避けながら進みたいところだ」


「まったくだね。でも()()()があるなら話は別だ。アタイは絶対に逃げたりしないぞ」


「分かってるよ、これだけ割が良いなら俺だって倒すのに賛成だ」


カメリアがこれだけ目の色を変えるキラー・ビーのドロップ品。それは蜂蜜。1匹からは少量しか取れないけど、これだけ群れで来てくれれば結構な量になる。自分たちで消費するのはもちろん、採集の依頼としてもなかなかお高い金額なので一石二鳥だ。最近じゃ宿屋の店主からも催促があって、ギルドの依頼料よりも割高で買い取ってくれる。


「ちょっと7階層で攻略の速度が落ちたけど、その分稼ぎは良くなってるな」


「でも、なんでみんなここで蜂蜜の最終をやらないんだ?」


「さあね、他の奴らからしたら割に合わないんじゃないか?7階層まで来れるような奴らは、そもそも数が少ない。そんな少数派は、もっと上の階層で狩りをした方が割が良いんだろう。アタイも上の階層の情報はあんまり知らないから、あくまで予想だけどな」


「う~ん、確かにカメリアほど自分たちで消費するなら二重の意味で美味しいんだろうけど、甘党がいなけりゃスルーするかもな」


「アタイは甘党じゃねえ!ちょっと蜂蜜が好きなだけだ」


こいつ、自分がガタイが良いもんだから似合わないって否定してるけど、重度の甘党だ。まさにカメリアまっしぐら。甘いものを見つけたときはポロンよりも早く甘いものに突進していく。犬人族でもないのに振り切れるほどの尻尾が幻視できる。


「さて、そろそろ先に進もうぜ。7階層のマップもそろそろ埋まりそうだ。このまま行けば明日か明後日には7階層も攻略できるだろう」


「そうか。なら、今のうちに蜂蜜をいっぱい取っておこうぜ」


語るに落ちる……まあ、そういうギャップも結構可愛く感じるけどな。


「ワンワン!」


ポロンが残りの蜂蜜を咥えて持ってきてくれた。ほんとお前は頼りになるよ。


「よ~しポロン、ありがとな。偉いぞ~」


お礼とばかりにポロンを撫で回す。やっぱりお前が一番の相棒だよ。ポロンを拾ってから2か月くらい経つけど、一向に大きくならないんだよな。この時期の子犬の2か月ったら、あっという間に大きくなりそうだけど……まあ、いつまでも可愛いままってのは、それはそれで大いに結構。


「ポロンは賢いな、アタイも負けてらんねえな」


「張り合うなよ。さて、ポロンのお蔭で手早く回収できたな。そろそろ行こうぜ」


「おう!」


こうして7階層の残りをマッピングしながら進んだ。その後も何度かキラー・ビーの群れと遭遇して戦闘になった。蜂蜜は増えたけど、7階層のすべてをマッピングし終わるのは明日になりそうだ。俺たちは無理をしないで早々にダンジョンを出ることにした。





ダンジョンを出てウドベラの町に戻る途中、カメリアが雑談ついでに聞いてきた。


「そう言えばさ、ホクト最近おかしなことしてないか?」


「おかしなこと?」


「さっき戦闘中に見てたんだけど、魔物に肘で攻撃した時に魔物がその後フラフラして地面に落ちたろ。あれって、前は両手の拳で殴ったときにだけできる必殺技だったんじゃないのか?しんとう……だっけ?」


お、よくぞ気付いてくれた。そうなんです、皆さん聞いてください。


「おぅ、あれから練習してな。両肘でも打てるようになったんだよ。日々弛まぬ努力を続けたおかげだ」


「へぇ……すげえな。必殺技って言うくらいだから、そんな簡単なもんじゃないんだろ?」


「ああ、俺にこの技を押してくれた師匠は両手でしか打ってなかったな。あの人のことだから、できないって事は無いと思うけど……それ以上は俺の工夫次第って事で教えてくれなかったんだと思う」


肘で浸透を打つって事は、結構前から試してた。色々試行錯誤して、本当につい最近になってできるようなった。これでリーザスに戻ったときにダッジさんに良い手土産ができた。


「肘でも打てるって事は、足でも打てるのか?」


「打てると思う、まだ成功したことはないけど。それに俺の目標は身体のどこからでも浸透が打てるようになることだ。まだまだ先は長いよ」


「身体のどこからでも?……頭からもか?」


「必要ならな、混戦になったときとかに1つでも手札が多い方がいいだろう。俺は極端に射程が短いけど、代わりに防御を無視した攻撃をすることができるのは、俺にとっては最強の武器だ」


これを突き詰めると、どんな大型の魔物でも俺の射程に入れば確実にダメージを与えることができるってことだ。近づかないとダメってデメリットはあるけど、それを補って余りある。俺は浸透を極めて、竜でもゼロ距離で勝って見せるぜ。


「ホクトはすげえな、アタイにはそんな必殺技なんて無いから羨ましいよ」


「何言ってんだ、お前の槍捌きは凄いって。さっきも思わず見蕩れてたからな」


「みっ!?ば、バカ……急に恥ずかしいことを言うなよ。……て、照れるじゃねえか!」


ほんとカメリアは解りやすい奴だ、嬉しいくせに。


「どうせ見蕩れるなら、今晩どうだ?アタイの部屋に来るか?それとも……アタイがホクトのベッドに潜り込もうか?」


「止めろ!来るなよ!」


「振りか?来るなよ、絶対来るなよ……ってか?」


「お前はダチョウか!!!」


「なんだよダチョウって……新手の魔物か?」


「とにかく、そう言うのはいらないから!」


俺は歩調を早めると、さっさと進んで行く。


「なんだよ、怒るなって……まったく、ホクトは初心だなぁ」


違うんです、俺もそういう事に興味全開なんです。俺だって思春期真っ盛りの17歳だ、そういう事への興味は人並み以上にある。特にこの世界は、俺のいた地球よりも性への抵抗が薄い。いつ何時、そういう流れになるかわからない。特にカメリアは、俺への好意を隠そうとしない。燃え上がったら一直線って言うのはカメリアらしいけど、カメリアとそういう関係になってしまうと、いざ帰るって時に俺は素直に帰れるか分からない。だからこそ、今は保留って事にしてカメリアからの追撃を避けまくってる状態だ。


「まったく……自分がどれだけ目に毒な体つきをしてると思ってんだ。我慢するこっちの身にもなってくれ……」


「あん?何か言ったかホクト?」


「なんでもない、ほら行くぞ」


「なあホクト、腕組んで帰らないか?」


「だから、それを止めろって!」


カメリアとパーティを組んで良かったと思う反面、いつか抗えなくなる日が来そうだと戦々恐々としている今日この頃……。



名前:ホクト・ミシマ

性別:男

年齢:17

レベル:18↑

職業:拳闘士(Lv4)

----------------------------------------

体力 :259     +8↑

精神力:162     +6↑

攻撃力:173(+5)  +3↑

防御力:178(+6)  +1↑

敏捷 :335(+3)  +10↑

知能 :2

魔力 :137     +4↑

運  :42      +1↑

----------------------------------------

スキル:

ダーレン大陸共通言語(Lv3)↑

鷹の目(Lv9)、集中(Lv9)

気配感知(Lv2)、魔力制御(Lv4)↑


----------------------------------------

称号 :

初心者冒険者(体力に小補正)

----------------------------------------

装備 :

皮の籠手(攻撃力+5)

ショートソード(攻撃力+5)

皮鎧(防御力+6)

グリーブ(敏捷+3)

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