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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
3章 ダンジョンに行こう
49/240

15話 モンスターハウス(中編)

追記:文末の・・・を……に変更しました。

「身体は無事か、痛いところはないか?」


カメリアとの間にいた最後の1匹を倒して、俺はカメリアと合流した。これでやっと一息つける。


「アタイどうして……そうだ、アタイあいつらに嵌められてモンスターハウスに取り残されたんだ」


目覚めるまでの事を徐々に思い出してきたのか、カメリアの表情が険しいものに変わっていく。


「……ホクト、なんでてめぇがここにいる?」


「隠し通路の先に人の気配がしたんで、開けて中を見たらあんたが倒れてたんだ。それに周りがオークだらけだったんで、慌てて助けに来たんだ」


「そうか……」


身体のどこかが痛いのか、カメリアはまだ起き上がれないでいた。


「どこか痛いのか?ほら、手を貸すよ」


パシン!


引っ張り上げようと手を差し伸べたら払い除けられた。え、なにどういうこと?


「な!?何すんだよ!」


「男の助けは受けない、アタイに近づくな!」


カメリアからの視線は、明らかに殺気が込められている。何があったのか知らないけど、ここまで助けに来た人間にそれは無いんじゃないか?


「アタイが馬鹿だった……結局、男なんてみんな同じだ」


カメリアがこうなった理由はやっぱり……。


「あの3人組に何かされたのか?」


「!?てめぇ、なんでそれを?」


「あんたを入れた4人でダンジョンに入っていったのに、出てきたときには3人だったから何かあったのかと思って……」


練習にかまけて、カメリアのことをすっかり忘れていたことはこの際黙っておく。いいだろ、結果的に間に合ったんだし……。


「まあ、何があったのかは聞かないけど今は喧嘩してる場合じゃないだろ。この数のオーク相手だと、俺1人じゃきついぞ」


「そんな事は解ってる、ただアタイはアタイのやりたいようにするだけだ。てめぇの手助けは必要ない」


あ~あ、結局もとに戻っちゃったな。今日の朝会った時は潮らしくてカメリアらしくなかったけど、それでもここまで嫌悪されるよりは全然マシだった。あの3人組によっぽどのことをされたんだろう。


「まあいいや。で、戦えるのか?」


「舐めるな、これくらいの怪我アタイには問題にならない」


そう言って立ち上がろうとしたけど、右手を地面に着いた瞬間、顔を顰めて横倒しになってしまった。ああ、これは捻ったか折れたかで槍なんて持てないな。


「……ふぅ、ダメじゃん」


「うるさい!……片手が使えないくらい問題ない」


痛みを堪えながら、なんとか立ち上がる。カメリアを確認すると、右手だけじゃなくて他にも青アザや擦り傷が目立つ。これじゃ戦力にならないな……。


「……仕方ない。ホラッ」


自分のカバンからポーションを取り出してカメリアに投げる。


「えっ?……おい、どういうつもりだ?アタイはてめぇからの助けなんて……」


「いいから黙って使え。今のアンタじゃ役立たずだ」


「なんだと!?」


「そんなにイヤなら、後で町に戻ってから返してくれればいいよ。それよりも、とっととこのモンスターハウスを出よう。いつまでもいたいと思わないだろ?」


「……」


俺に渡されたポーションを忌々しそうに見やってから、瓶のふたを開けて口を付けた。そのまま瓶を傾けて一気に煽る。大して高くないポーションだけど、効果はすぐに表れた。右手の痛みは分からないけど、他の軽度な傷はみるみる治っていく。


「……礼は言わないぞ」


「いいよ、そいつは貸しただけだ。後で返してくれれば礼は不要だよ」


「……フンッ」


相変わらず可愛くない奴だ。


「で、右手はどうだ?」


「問題ない、この程度のオークどもなら蹴散らしてやる」


遠巻きにこっちをみているオークたちを見るカメリア。結構倒したけど、まだ20匹以上は残っている。これは俺も覚悟を決めないとダメかもな。


「……よし、行くぞ!」


「アタイに指図するな!」


俺とカメリアはオークたちに向けて駆け出した。





戦況は五分五分ってところかな。俺は4匹、カメリアは2匹のオークを倒していた。けど、こっちも無傷って訳にはいかなかった。俺もカメリアも何度かオークの持つ棍棒を受けて、身体のあちこちが痛い。


「ふぅ……まだ動けるか?」


「てめぇみたいな柔な奴と一緒にするな。アタイはまだまだやれる」


気張っているけど、見ていれば解る。さっきからカメリアは槍を左腕でしか扱っていない。


「……やっぱり、その右手動かないのか?」


「!?……何のことだ?」


「いやいや、ここまできてしらばっくれるなよ。さっきから右手を使ってなかったのは、見てるんだから」


「チッ……折れてはいないけど、槍の重さを支えるのは無理だ」


やっと認めた。答え合わせに正解しても、状況が悪くなったことが解っただけで嬉しくもなんともないけどな。でも、どうしよう……。


「片手だけでオークの相手をどれだけできる?」


「てめぇ、アタイを侮辱すんのか!?アタイは残りを全滅させることだって……」


「いや、無理だろ。さっきから見てるけど大分押されてる。今のままだと、遠からずオークたちに押し潰されるぞ」


自分でも解っていたのか、俺を睨みつけていた視線を外した。どんだけ負けず嫌いなんだよ、まあ嫌いじゃないけどね。


「……おい、ポーションはもう無いのか?」


「さっき渡したので打ち止めだ。感謝しろよ?俺のとっておきだったのに」


「クソッ……」


このままだと、カメリアだけじゃなく俺も一緒にここで死ぬことになりそうだ。カメリアの方が女ってことで、俺より長く生かされるかも知れないけど、それが良い事なのかはわからない。


オークたちの方を見てみる。残りのオークは15匹、やっと半分を倒せたってことだ……まだまだ先は長い。これまでと同じようには行かないよな、俺もカメリアも疲れが見え始めてる。逆にオークたちの方は元気な奴が多い。


「なあ、このままだと擂り潰されるぞ。何かいい案無いか?」


「は?アタイに聞いてんのか?そういうことはオツムの出来のいい奴の仕事だ」


「……俺に期待してるなら、止めといた方がいいぞ。なんせ、知能2だからな」


「……プッ!」


「おい、笑うなよ!」


「プ……ククッ……ワハハハ!知能2!?アタイよりバカな奴に初めて会った」


「うるせえよ!!俺より頭良いなら、お前が何か考えろよ?」


「クククッ……ああ、笑った。残念ながら、アタイのオツムに期待するな。アタイの知能は8だ」


「はぁ!?お前知能一桁なのに、俺の事笑ったの?」


「正直、自分よりバカはこの世にいないと思ってたからな。そんなレアな奴が目の前にいると思うと面白くて……」


こいつ……。でも笑ったからか、さっきまでの重苦しい空気は薄らいでいた。カメリアもさっきまでの刺々しい言い回しじゃなくて、今朝の雰囲気に戻ってる気がする。


「なら、提案だ。バラバラに対処してないで、協力しないか?」


「協力?アタイとてめぇがか?」


「イヤか?俺の予想だと、今のまま戦っても相手の物量に勝てる気がしないんだけど……」


「……まあ、確かに。でも協力ってどうするんだよ」


嫌々感満載だけど、とりあえず話しは聞いてくれる雰囲気だ。


「俺が相手の攻撃を全部受け止めるから、カメリアがその槍で倒していってくれないか?その槍なら頭を狙えば一撃で倒せるだろ?」


「そりゃ、頭を狙えば一撃で倒すことはできるけど……簡単に言うなよ。頭なんて弱点、早々簡単には狙えないぞ?」


「そこは俺が何とかする。どうだ?片手じゃ狙うのが難しいか?」


ちょっと挑発も混ぜて聞き返してみる。


「……上等だ。てめぇがぶっ倒れるまでに全部のオークの頭を突き通してやるよ」


話しは纏まった。俺はタンク、カメリアに攻撃が行かないように全部受け持つことになる。集中と鷹の目を駆使して、全部の攻撃を避けてやる。


「よし、じゃあ作戦開始だ」


「ミスすんなよ、てめぇが失敗したらアタイまで道連れになるんだからな」


「任せとけ!……それと、その『てめぇ』ってやめろよ。目を覚ました時みたいにホクトって呼んでくれ」


気絶から目を覚まして、俺を見つけたときにカメリアは確かに俺のことを『ホクト』と呼んだ。何を今更渋っているのか解らないけど、1回も2回も同じだろう。


「は!?いや、知らないし……てめぇを名前で呼んだことなんて無い!!」


え、あれ?なんかカメリアが髪の毛と同じように真っ赤な顔をしている。こいつ、異性の名前を呼んだことないのか?すっげぇ慌ててる。


「恥ずかしがることないじゃん。ほら、ホクトって呼んでくれよカメリア」


「うわぁあぁぁ、アタイを名前で呼ぶな!?」


自分の名前を異性に呼ばれるのもダメか。こいつ、こんななりしてるけど、どんだけ初心なんだ?


「ほら、とっとと行くぞカメリア」


俺はカメリアの返事を待たずに、オークに向けて駆け出した。


「アタイを名前で呼ぶな!」


後ろの方でカメリアが叫んでいたけど無視だ。今はそれどころではない、ここで全力を出し切らないと俺とカメリアはここで死ぬ。覚悟を決めて、一番オークが集まっている場所に割って入る。


「お前らの相手は俺だ、かかって来いよ!!」


4匹のオークが各々俺に攻撃してくる。その全てを集中と鷹の目を使って回避する。目の前の敵だけじゃだめだ、視界に入るすべてのオークの動作を予想して右へ左へ避けまくる。多少掠るくらいは、この際無視だ。致命的な一撃を受けないよう注意しながら立ち位置を変えていく。


「くぅ!」


右肩に棍棒が当たる、地面に押し付けられる圧迫感を感じる。やばい、やられると思った瞬間、棍棒を持ったオークの口から槍が生えた。


「カメリア!!」


「だから、名前で呼ぶなって!」


良かった、カメリアのフォローで態勢を元に戻せた。カメリアの方も作戦通り、俺にばかり意識を向けているオークたちを一撃で屠っていく。ここまでは順調だ、ここまでで3匹のオークを殺した。俺の体力は、さっきよりも使うことになるけど殲滅力は上がってきた。


「はぁっ!」


オークの腹に蹴りを入れ、方向を変えつつ少しでも削ろうと縦横無尽に駆け回る。1匹、2匹とオークたちが倒れていく。オークの囲いが手薄になってきたら、オークたちの注意を俺に向けるため近づいては攻撃を入れていく。俺の攻撃は無意味なほど弱いと意味がないから、それなりの威力での攻撃になるけどあくまでダメージリソースはカメリアだ。


「やぁ!、せい!、はぁっ!」


カメリアもやる、ほとんどのオークを一撃で倒している。やっぱり、あの槍とそれを使うカメリアのポテンシャルはすごい。オークの死角から迫り、急所への一撃を入れ即離脱。まさに蝶のように舞い、蜂のように刺す。


「おりゃぁ!」


俺も負けじとオークを攻撃していく。オークたちの囲いが広くなってくると、カメリアに意識が向くこともあるので極力囲いが狭くなるように調整する。当然、俺が移動する距離が増えていき、俺の体力をゴリゴリと削っていく。


「ハァ……ハァ……フンッ!」


気合を入れてオークに近づく。足に魔力を流して加速を繰り返し、オークに突っ込む。そうなれば当然魔力も減っていく。でも、今無理をしないとオーク全部を相手にするのは難しい。


「……ハアハア、後何匹いるんだ?」


喘ぐ呼吸を整えつつ周りを見回すと、オークたちの数は6匹まで減っていた。さすがのオークたちも今のままでは、俺たちを倒せないと気付いたのか無理に突っ込んでこなくなった。


「ハァ……どうだ、まだやれるか?」


「アタイの事より、自分の心配をしろ。体力やばいんじゃないか?」


「ちょっと休めば、まだ戦える。そっちは?」


「アタイは問題ない。こっちは楽してオークどもを殺してるんだから当然だ」


「……そうか、なら作戦が上手く行ってるってことだな」


「お前が大丈夫じゃないだろう、膝が笑ってるぞ」


上手く誤魔化していたのにバレてしまった。確かに体力よりも無理な動作が多かった足の方がダメージがデカい。そろそろまともに走ることもできなくなりそうだ。


「大丈夫だ、まだ魔力が残ってるから飛んででも避けてやる」


「……根性あるなお前、ちょっと見誤っていた」


「カメリア、お前じゃなくてホクトな」


「う、うるさい!……ほら、あっちも動き出したぞ」


オークを見ると横に3匹並んでこっちに向かってくる。そのまま壁際まで押し込もうって腹積りなんだろう。


「あれとまともにぶつかるとまずいな……横へ横へ移動しながら、壁に追い込まれないように立ち回ろう」


「わかった……あのさ……ホクト」


カメリアがホクトって呼んだ。たったそれだけなのに、無性に嬉しくなる。意識して平静を装って返事をする。


「なんだ?」


「無理そうなら言えよ、アタイが代わってやるから」


「……おう、その時は頼むよ」


「よし、いくぞホクト!」


一度言ったら慣れたのか、カメリアが自然に俺の名前を呼んだ。


「おう!」


さあ、最終局面だ。俺は気合を入れなおしてオークに向かって動き出した。

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