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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
3章 ダンジョンに行こう
43/240

9話 鬼現る

追記:文末の・・・を……に変更しました。

初めてダンジョンに潜ってから4日が過ぎた。俺たちは今3階層を攻略中だ。


「ワォ~~ン!」


「おらぁ!」


相手の後ろに回り込んで背中から蹴り倒す。倒れた敵は無視して横にいるもう1体に近づいて腹に浸透を当てる。


「ガフゥッ……」


よし1体撃破。さっき倒した敵のもとに戻って頭を踏み抜く、これで2体。


俺たちは今コボルドと戦闘をしている。こいつらは体長が俺よりも大きい180cmくらい。全体を体毛に覆われていて、強靭な牙と爪で攻撃してくる。3階層に入って既に3日目。俺はこいつらを攻めあぐねていた。


「……なんで、こいつらはこんなに数が多いんだよ。クソッ、休む暇もない」


そう、こいつらは1対1体は大した脅威じゃない。なのに3階層を攻略できない理由が、コボルドたちの数の暴力だ。こいつら倒しても倒しても湧いて出てくる。しかも常に5,6体で群れを作ってうろついている。この1グループに当たると、こいつらを倒す前に別のグループが乱入してきて……と、一度戦いが始まるといつまで経っても終わらなくなってしまう。


「あとは、こいつだけだ……頼むから()()()()は来ないでくれよ」


右の爪で切り裂こうと振り上げたコボルドの懐へ入る。振り下ろされる右腕をいなして相手の態勢を崩す。


「はぁっ!」


左拳で脇腹を殴りつけると、コボルドが悲鳴を上げる。


「ガゥゥ!」


諦めずに噛み付いてくるが、さすがにそれは当たらない。顎下を掻い潜って頭上にある突き出たツラに浸透をぶち込む。


「ギャン!」


顔面が破裂して動かなくなった。これで、今回の戦闘も終了だ。


「……ハァ、何とか終わった」


「ワン」


ポロンが落ちているドロップ品を集めに走り出す。最近戦闘が終わっても息が切れている俺の代わりに、ポロンがドロップ品を集めてきてくれる。なにも言わなくてもやってほしいことをやってくれるポロンは得難い仲間だ。


「でも、今日もここまでだな。やっぱり独りじゃ3階層は超えられないのか?」


3階層に入って3日経つが、未だに半分も攻略が進んでいない。これは、出てくる敵に対して独りでは時間がかかって倒しきれないことが原因だ。


「ワンワン!」


「わかってるよ、ポロン。1人と1匹な……」


自分を忘れていると抗議してくるポロンに返事を返しつつ、どうやったら3階層を攻略できるか考える。やっぱり一番の近道はパーティメンバーを探すことだろうな……。


「とはいえ、拠点がリーザスの俺にウドベラの冒険者が仲間になってくれるかな?」


他に方法と言えば、浸透でできるだけ早く1体を倒す事。現状ではこれが良いかな。3階層は先に進めないとはいえ、個人的に浸透の訓練をするにはもってこいの場所だ。時間はかかるだろうが、まずは1体を倒す時間を短縮する方向でいってみよう。それでダメならメンバーを募集すればいいだろう。


「ワンワン!」


ドロップ品を集め終わったポロンが戻ってきた。


「よしよし、ありがとうなポロン」


お礼に身体中を撫で回してやる。ポロンも気持ちいいのか「ハフハフ」言ってる。


「よし、ウドベラに帰るか」


「ワン」


俺たちは、これ以上コボルドに絡まれないよう注意しながら2階層への階段に向かった。





あと少しで階段と言うところで、前から誰かやってきた。


コボルドじゃないな……あれは、女か?身長は俺よりも高いな。背中が隠れるほどの、燃えるような赤い髪。が、それよりも何よりも一番目につく特徴は、その女が背負っている獲物だ。あれ使えるのか?ってくらい、とにかくデカい槍。2mはあるんじゃないかと言うほど巨大な朱色の槍だった。


恐らく冒険者だろう。特にもめる理由もないからそのまま歩いていく。女の方も、俺のことを気付いてはいるんだろうけど気にしていない様子だ。


「……」


「……」


お互い何事もなくすれ違う。なんかピリピリした空気を醸してたから、因縁でも付けられるかとヒヤヒヤした。


「……ホッ」


女とすれ違って少し行くと2階層への階段だ。ここまで来れば無事に帰れるだろう……なんて、フラグみたいなことを考えたのが悪かったのか。


キンッ、ガキンッ!


俺たちが来た方から鉄同士がぶつかる音が聞こえてきた。恐らくさっきの女が戦闘に入ったんだろう。本来なら、ここは素直に帰るべきところだ……なのに、なんかあの女のことが気にかかる。


「……俺、何考えてんだろうな」


「ワゥ?」


俺の独り言にポロンが首を傾げる。そうだよな、俺だって首を傾げたい。


「ポロン、さっきの女を追うぞ」


「……ワン」


少し遅れてから返事を返したポロンに苦笑しながら、来た道を戻る。俺は何がしたいんだろうな……あの女が戦うところが見たいのか?それとも、あの女に何かがあると思っているのか?自分で自分の思考が理解できないまま、音が大きくなってきた場所へ向かう。


「ハァ!!」


それは、鬼だった。2mはある朱色の槍を縦横無尽に振り回し、襲い掛かってくるコボルドたちの群れを薙ぎ倒していく。身体には防具らしい防具も付けず、倒したコボルドの返り血が朱色に染める。


「……」


俺は、あまりの非現実的な光景に言葉も忘れて目を奪われた。ただただ力任せに振られる槍、決して流麗でもないのに何故か綺麗だと思ってしまった。


「強いな、あの女……」


洞窟の奥から止めど無く現れるコボルドに、恐怖を感じる暇もなく蹴散らしていく。


「……まるで台風みたいだ」


どれくらいその光景を見ていたのだろうか。奥から出てくるコボルドの数も減ってきた頃、異変が起きる。女の動きが目に見えて遅くなってきた。まあ、そりゃそうだろう。倒されたコボルドの数は分からないけど、結構な時間槍を振り続けている。生物である以上疲れてきてもおかしくない。


「さて、どうするか……」


選択肢は多くない。助太刀に入るか、見捨てるか。何もしなくても、あいつなら何事もなく戦闘を終わらせられる気がする。かと言って、このまま放置して死なれても寝覚めが悪い。


「どうしたもんかなぁ……」


そんな俺の感情とは無関係に、突然予期せぬ事態が起こった。倒れて死んでいると思われたコボルドが立ち上がったんだ。


「やばい……あいつ、気付いてないぞ」


女の、完全に死角から襲い掛かろうと距離を測っているコボルド。このままじゃ、致命傷にはならないかもしれないけど、窮地に陥りそうだ。


「あんまりやりたくないけど、ここまで来たんだ……助太刀するか」


俺も覚悟を決める。女の死角から飛びかかったコボルドに対処が遅れた女はバランスを崩してしまう。そこを数体のコボルドが一斉に襲い掛かった。


「これ、完全に作戦に嵌ってんじゃねぇかよ!」


足に魔力を流しブースト加速する。女の身体に触れる瞬間の爪を右拳で弾くと、そのままコボルドを蹴り飛ばす。突然現れた俺をポカンとした表情で見つめてくる女を無視して、他のコボルドに浸透を当てる。


「話は後だ!今はこいつらを倒すぞ」


返事を期待せずコボルドに向かっていく。視界の隅では女も立て直したのか槍を振り回し始めた。


やっぱり2人いると殲滅力が倍になるから楽だな。あっという間に動くコボルドはいなくなった。あとは女の方だと振り向いた瞬間殴り飛ばされた。


バキィ!


「うがぁ!?」


壁際まで吹っ飛ばされた。いってぇ、口の中切ったのか鉄の味がする。


「ってぇな、なにすんだよ!」


「黙れ!何すんだはこっちの台詞だ、てめぇは何のつもりで戦闘に参加した?アタイの戦利品を掠め取ろうとしたのか!」


説明もなく殴られれば、こっちだって頭に血が上る。


「ふざけんな!お前がやられそうだったから、手を貸してやったんだろうが!」


「大きなお世話だ!誰もてめぇになんか頼んでない!」


「それにしても、いきなり殴る事は無いだろう。確認も取らずに戦闘に割り込んだのは悪かったけど、助けたことは事実なんだから一言あってもいいんじゃねぇか!?」


「……そんなもん知るか!アタイには、てめぇが突然現れてアタイの獲物を横取りしたようにしか見えない!」


えぇ、あのときのコボルドの攻撃。俺が弾かなければ確実に身体を切り裂いていたぞ。目が合ってたんだから、こいつだって解ってるだろ絶対。


「恩を押し付ける気は無いけど、あのときの攻撃はあんたに致命傷を与えるくらいの攻撃だったんじゃないのか?」


俺も段々冷静になってきた。こいつ、解ってて意地張ってやがる。俺の言葉を聞いて考え込むような仕草の後、プイッと顔を背けた。子供か!?


「とにかく、断りもなく戦闘に割って入ったことは悪かったよ」


そう言った俺の顔を睨み付けて、女は最後にこう言った。


「フンッ!てめぇが入ってこなくったって、アタイ独りで全部倒せたんだ!!」


そのまま奥の道へ歩いて行ってしまった。


「あ、おい!お前疲れて動けないんじゃ……行っちゃたよ」


見た目も攻撃も性格も、すべてが台風みたいな女だった。


「……なんなんだ、あの女は」


余りの事に呆然としてしまった。あそこまで負けず嫌いな奴には会ったことがない。そうやって俺が女の消えた方を呆然と見ているとポロンが近づいてきた。


「ワンワン!」


見ると、地面に落ちていたドロップ品を集めて来てくれたようだ。


「あれ、あの女ドロップ品を回収していかなかったのか?何のためにダンジョンに潜ってんだ?」


全くもって理解に苦しむ女である。仕方ない、俺が代わりに拾っておいてやるか。


「俺のと一緒にすると、後で分からなくなるな。あいつの分はこっちの袋に入れるか……」


ポロンが持ってきたドロップ品を、別の皮袋にまとめて入れる。これで次に会った時にでも袋ごと渡せばいいだろう。


「さてポロン、何かよく分からない事で時間を食ったけど、そろそろ帰るか」


「ワン!」


さすがにこの後は何事もなくダンジョンの外に出れた。しかし、あの女はなんだったんだろう?突然現れて、突然暴れて、突然殴られて、突然怒られた。できれば二度と会いたくないと思いつつも、そう言う訳にもいかないだろうと溜息をつきつつウドベラへ帰還した。



名前:ホクト・ミシマ

性別:男

年齢:17

レベル:13↑

職業:拳闘士(Lv3)

----------------------------------------

体力 :232     +6↑

精神力:146     +2↑

攻撃力:164(+5)  +3↑

防御力:170(+6)  +1↑

敏捷 :310(+3)  +8↑

知能 :2

魔力 :120     +2↑

運  :41

----------------------------------------

スキル:

ダーレン大陸共通言語(Lv2)

鷹の目(Lv8)、集中(Lv8)

気配感知(Lv1)、魔力制御(Lv3)


----------------------------------------

称号 :

初心者冒険者(体力に小補正)

----------------------------------------

装備 :

皮の籠手(攻撃力+5)

ショートソード(攻撃力+5)

皮鎧(防御力+6)

グリーブ(敏捷+3)

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