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ゼロから始めるダンジョン攻略  作者: 世界一生
3章 ダンジョンに行こう
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7話 魔性の女

追記:文末の・・・を……に変更しました。

翌日、俺は素材清算と情報集めの為に冒険者ギルドを訪れていた。シャドウグリズリーの素材って幾らくらいになるんだろうな?まずは掲示板で依頼が出てないか確認してみよう。


「……シャドウグリズリー、シャドウグリズリー……ないな。やっぱり、この辺りにはいない魔物だから、需要もないのか」


期待していたシャドウグリズリーの討伐依頼は無かった。う~ん、ちょっとは期待していたのに残念だ。まあ、無いものは仕方ない。カウンターで買い取りだけしてもらおう。この時間は、他の冒険者も活発に動き出す時間だから少し待たされたけど、俺の番が回ってきたのでカウンターへ向かう。


「いらっしゃいませ、ウドベラ冒険者ギルドへようこそ。新規の登録ですか?」


俺の担当の子は犬人族かな?垂れたイヌミミが可愛い。でも、俺を見て冒険者登録をしに来たと勘違いしているけど、そんなに冒険者に見えないかな?


「あ、素材の買取をお願いしたいんだけど……」


ギルドカードをカウンターの上に置く。


「も、申し訳ありません~……」


途端に顔を真っ赤にして、アワアワし始めちゃった……なんか可愛い子だな。


「初めて見る方だったので、てっきり登録に来たのかと……」


「ああ、ウドベラには昨日着いたんだ、リーザスで冒険者をやっているホクト・ミシマです」


「申し遅れました、私はウドベラ冒険者ギルド職員のアーネ・シュルツと申します。先ほどは、大変失礼をいたしました」


一生懸命頭を下げるアーネちゃん。頭を下げる度にイヌミミが揺れるのが良い、すごく良い!なんかモフモフしたくなってくる……よし、後でポロンをモフモフしよう。


「あのさ、あんまり気にしないでよ。俺も気にしないから」


「はぅ……ありがとうございます」


大丈夫か、この子。顔が真っ赤だし、酸欠で倒れそうに見える。


「とりあえず、深呼吸深呼吸。ほら、吸って~……」


「は、はい!」


俺の掛け声に合わせてアーネちゃんが息を吸い込む。息を大きく吸ったことで胸が強調される……が、残念ながら違いを確認できなかった。


「はい、吐いて~……」


「はぁぁぁ~~~……」


「よし、どう?落ち着いた?」


「あ、ありがとうございます。私いっつも失敗ばかりで……」


リーザスだと、ノルンさんとかギルドの受付嬢って頼れるお姉さんって感じの人ばっかりだったけど、アーネちゃんみたいなギルド職員も……アリだな。なんか、この子の為に頑張って素材集めて来ようって気持ちが湧いてくる。


「とりあえず買い取ってほしい素材があるんだけど、ここに出せばいい?」


「えと、あの……大きさはどれくらいですか?」


「ああ……結構大きいかも」


「それでしたら、あちらの方にお持ちいただいてもよろしいですか?」


アーネちゃんに指されたのは、カウンターの一番左端だった。


「あちらが買い取り専門の受付ですので、あちらで処理します。

 お手数ですが、あちらまでご足労いただいてもよろしいですか?」


「わかった」


アーネちゃんは自分の席を立って、俺を誘導してくれる。一生懸命仕事を頑張ろうとしている姿は健気で、いつまでも見守っていたくなってしまう。


「……おい、兄ちゃん」


俺がアーネちゃんを見守っていると、後ろから肩を掴まれた。ああ、忘れてた。町が違えば、そこでもまたテンプレが待ってるもんか……。


「……なんだ?」


後ろを振り返ると、厳つい顔をしたおっさんが俺の肩を掴んでいた。これは……確実にこいつに絡まれるな。はぁ、面倒くさい。


「お前、アーネちゃんが失敗しても怒らなかったな……」


何言ってんだこいつ……。


「……それが、どうした」


「しかも落ち着くまで待っていた……」


「だから、それがどうしたってんだ!」


おっさんが何を言ってるのか、全く解らない。喧嘩を売ってるなら売ってるで、それなりの行動を取ってもらわないと、こっちとしてもどう対応したらいいのか迷ううぞ。


しばらく俺を睨んでいたおっさんだったが、右腕を上げる。殴りかかってくる?その動作を見て、俺も迎撃態勢を取ろうとする。……すると


「お前話が分かる奴じゃねえか!」


おもむろにサムズ・アップした。


「……へ?」


「いやぁ、よそから来た奴でたまにいるんだよ。アーネちゃんが慌てたときに怒鳴り散らす奴が。お前もよそから来たから、てっきり怒鳴るもんだと俺たちも想って見てたってわけだ」


俺たち?そう思って、おっさんの肩越しを見るとみんなでサムズ・アップしている。……なんだ、ここのギルド。


「疑って悪かったな」


「いや、特に何かされた訳じゃないからいいよ。それより、この状況はみんなアーネちゃんを見守ってたってことか?」


「良い子だろ?健気で一生懸命で、あの子は俺たちのオアシスだ……」


ええ~、そうなの?ここの冒険者ってみんな……そうなの?やべぇ、ウドベラの冒険者ギルドはロリコンの巣窟だ。


「ホクトさ~ん、どうしましたか?こっちですよ~」


間延びした声が俺を呼んだ。アーネちゃんがいつまでも来ない俺を心配しているようだ。


「悪い、アーネちゃんに呼ばれてるから行くわ」


「おう、俺はロドスってんだ。ウドベラを拠点にしてる冒険者だ。何かあったら俺を頼りな」


「ありがとう、俺はホクトだ。じゃあなロドス」


俺はロリコンの親玉に別れを告げて、アーネちゃんのもとへ向かった。





「なにか問題でもありましたか?ロドスさんと話していたようですが」


「ああ、ロドスと挨拶してたんだ。俺はよそ者だからな、ロドスが色々と便宜を図ってくれるらしい」


「そうですか、ロドスさんは優しくて頼れる冒険者の方なので、ギルドとしても頼もしいです」


この子は自分がロリコンどもに、どんな風に見られているか知らないんだろうな……まあ、あのロドスを見てれば大丈夫そうな気もするか。統率の取れた紳士みたいだし、犯罪にはならないんだろう。


「さて、ではホクトさんが買い取りを希望する素材をこちらにお出しください」


そうだ、ここに来た目的をすっかり忘れてた。俺はアーネちゃんに言われるまま、カウンターの上にシャドウグリズリーの素材を置いていく。結構な物量があるから、カバンが重くて仕方ない。


まったく、こういう異世界物ってインベントリとか魔法のカバンとか定番じゃないのか?なんで、俺にはそういう便利機能が搭載されていないんだよ。


「はわぁ……すごいですね。これ、シャドウグリズリーの素材じゃないですか?」


「へぇ、アーネちゃんって見てわかるんだ」


「ギルド職員なので、一通りは……」


顔を赤くして俯いてしまった……ああ、なんだろう。この子は危険な気がする。この子の為なら……とか思ってしまうと、泥沼から這い出せなくなる。そうなると、あそこの紳士どもの仲間入りか。


「で、どうかな?」


「あ!……失礼しました。鑑定にしばらくかかりますが、問題ありませんか?」


時間がかかるのか……なら、その間に情報を集めよう。


「なら、この近くのダンジョンの情報を貰えないかな?俺はそこに潜るためにウドベラに来たんだ」


「分かりました、では鑑定に出している間に私がご説明いたします」


え、アーネちゃんが教えてくれるの?だいじょうぶ?


「あ、ホクトさん……今私で大丈夫か心配しましたね?」


頬をプクッと膨らませて、私怒ってるんですってアピールするアーネちゃん。この子はなんでこんなに動作1つ1つが可愛いらしいんだろう?


「思ってない思ってない……」


「むぅ……私もちゃんとできるんですから。私の方がホクトさんよりお姉さんだし……」


「え?」


なんか、聞き捨てならないことを言ってなかったか?


「アーネちゃん……俺より年上なの?」


「ホクトさん!ちゃん付けはこの際許しますけど、それ以外の子供扱いは禁止ですからね?」


まじか……アーネちゃんが、俺より年上。ってことは、合法ロリか!?

さすが異世界、ここまで違和感のない合法ロリが存在するなんて……。


「……なんか、酷い事考えてませんか?」


「……滅相もないです」


「……はぁ。では、会議室でダンジョンの説明をします」


そう言って先に歩き出したアーネちゃん。しかし、階段を上り2階に向かおうとしたとき事件が起きる。


アーネちゃんが階段を踏み外して俺に向かって落ちてきた。


「はわぁ!?きゃぁぁぁ~~!」


とはいえ、元が小柄なアーネちゃんだ。落ちてきたとしても問題なく受け止める。俺も、こっちにきて大分経つからこれくらいの事は朝飯前にできる。


「っと。大丈夫、アーネちゃん?」


アーネちゃんを見ると、目をギュッと瞑って身体が強張っている。よっぽど怖かったんだろう。


「アーネちゃん?もう大丈夫だよ」


頭を優しく撫でてみる。最近ハンナちゃんを妹のように可愛がっていたからか、こういう状況の時に兄のような行動が自然とできるようになった。


「……あぅ。ほ、ホクトさん?」


「気を付けないと危ないよ?ほら、立てる?」


周りをキョロキョロ見回して、自分が今俺に抱きかかえられていることに気付いたのか途端に顔を赤くして俯くアーネちゃん。しばらく様子を見ていると、腕の中でモゾモゾし始めたので、足を地面の方に誘導してやる。


「……」


自分で階段の上に立つアーネちゃん。これなら、大丈夫かな。


「あの、ホクトさん。助けていただいてありがとうございます」


やっと絞り出したかのような、か細い声でお礼を言ってくれるアーネちゃんを見て俺は悟った。……年齢に関係なく、目が離せない子ってのはいるもんだと。

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